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  • 2022.01.06

うつ病と運動


今回はうつ病と運動の関連についてみていきたいと思います。前半は文献の内容について、後半はそれについての考えを書いてみました。

前半部分を飛ばしてもOKです。


【タイトル】

“A novel 5HT3 receptor-IGF1 mechanism distinct from SSRI-induced antidepressant effects”

【著者名】

Makoto Kondo, Yoshihisa Koyama, Yukiko Nakamura, and Shoichi Shimada.

概要

大阪大学大学院医学系研究科の近藤誠准教授、島田昌一教授(神経細胞生物学)らの研究グループは、セロトニン3型受容体※1が、脳の海馬のIGF-1(インスリン様成長因子-1)※2の分泌を促進することにより、海馬の新生ニューロン※3を増やし、抗うつ効果をもたらすという、うつ病※4の新たな治療メカニズムを発見しました。

現在、うつ病治療には、第一選択薬として、SSRI※5に属する抗うつ薬が最も広く使用されていますが、その寛解率※6は半数にも及ばず、SSRIが効かない難治性うつ病に対して新たな方法や治療薬が待たれています。

今回、島田教授らのグループは、セロトニン3型受容体に注目してマウスの脳を解析し、セロトニン3型受容体を刺激すると、SSRIによる抗うつ作用とは異なる、まったく新しいメカニズムで抗うつ効果が得られることを明らかにしました。

今後、セロトニン3型受容体を標的として、SSRIが効かない難治性うつ病に対する新たな治療薬の開発が期待されます。

用語説明

※1 セロトニン3型受容体

セロトニンは、動物の情動に関わる脳内の神経伝達物質の1つで、うつ病などの精神疾患の病態に関わっていると考えられている。セロトニンが結合し、セロトニンの刺激を受け取る部位をセロトニン受容体と呼び、現在、セロトニン受容体は、1型~7型受容体までの7種類に分類されている。セロトニン3型受容体は、その1つであるが、これまでの研究実績が少なく、特に脳における機能に不明な部分が多く、詳しい働きは分かっていなかった。

※2 IGF-1(Insulin-like growth factor-1;インスリン様成長因子-1)

脳や肝臓などで産生される成長因子で、神経、筋肉、骨など多くの細胞に作用し、細胞の分裂・増殖、成長や発達に関わっている。IGF-1は、脳の海馬においても産生されており、神経幹細胞に作用し、神経新生を促進することが知られている。さらにIGF-1には、抗うつ効果があることが報告されており、近年注目されている成長因子の1つである。

※3 海馬の新生ニューロン

成体の脳では神経細胞は増えないと考えられていたが、脳の海馬には、神経幹細胞が存在しており、分裂することにより、新しい神経細胞(ニューロン)が生み出されている。この現象は神経新生と呼ばれており、海馬の新生ニューロンは、うつ病や認知症などの精神神経疾患の病態や治療メカニズムと密接な関係があることが知られている。

※4 うつ病

うつ病は、抑うつ気分(気分の落ち込み)、意欲低下(興味や喜びの喪失)、思考力や集中力の低下、食欲や睡眠の障害に加えて、罪責感、自殺念慮(死にたい気持ち)など様々な症状を呈する精神疾患である。私たちにとって大変身近な疾患であり、一生のうちにおよそ10人に1人がうつ病を経験するとされる。

※5 SSRI(Serotonin selective reuptake inhibitor;選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

現在、うつ病治療に、第一選択薬として全世界で最も広く使用されている種類の抗うつ薬である。しかし、その寛解率※6は半数にも満たないとされており、SSRIが効かない難治性うつ病患者が少なくないことが大きな問題となっている。

※6 寛解

病気の症状が一時的あるいは継続的に軽減し、安定した状態のこと。

※7 セロトニン3型受容体アゴニスト

アゴニストとは、生体内の受容体に結合し、神経伝達物質やホルモンなどと同様の作用をもたらす薬物のこと。セロトニン3型受容体アゴニストは、セロトニン3型受容体※1に選択的に結合し、作用する薬物である。


上記はうつ病に関する最新の研究です。

前半飛ばした方はここから読んでください。

本文に書いていますが、うつ病治療に最も使われている薬(SSRI)の効果は半数にも満たないとあります。この研究はそれを打開する研究になるかもしれません。

上記の研究をさらに要約すると、セロトニン3型受容体が抗うつ効果をもたらすというメカニズムを発見した。という事です。

うつ病は大変身近な精神病だと思います。程度の大小はあれど、周りにもうつ病の方や過去になった方も多くいらっしゃいます。

セロトニンが分泌されるとうつに対して効果的に働くという事ですから、セロトニンをしっかり分泌できるような生活習慣を作る事が重要です。

例えば、日光に当たるとか運動を行うといったことです。

あくまでも想像ですが、うつ病の方はずっと部屋の中にこもっているようなイメージがあります。

不活動や室内にこもる(特に暗い所)事はセロトニンの分泌を抑制し、逆に日光に当たる、解放的な所で身体を動かす人はセロトニンがよく分泌されます。

また、姿勢の悪さもセロトニンの分泌を低下させます。これは姿勢が悪いと姿勢の保持に関わる筋肉が働かなくなっているからです。パソコンやスマホなどを見ている姿勢は悪い姿勢なので、閉鎖的な空間と併せてうつ病に繋がりやすくなります。

逆に姿勢を正すと、それだけでも筋肉を使いますから、セロトニンが分泌されやすくなります。

したがって、外に出て身体を少しでも動かすという習慣を作る事が「根本の」解決になると思われます。

※もちろん、遺伝など何らかの影響で極めてセロトニンが分泌しにくい人もいると思います。そういった方には上記のような研究から作られた薬を用いる事が必要になってくるでしょう。

※また、職場環境などで過度なストレスを受ける機会が多いケースもあるでしょう。環境の変更も必要になるかもしれません。

実際運動には抗うつ・抗不安効果があるという事が研究されているので、ネガティブになりそうな時こそ身体を動かすと良いでしょう。

また、筋トレをすると少し自分が大きく・強くなった気もするのでこれも効果的かなと思います。

因みに私も6~7年ほど前に気持ちがかなり落ちている時期があり、精神科を受診したこともあります。

「うつ病の診断書出そうか?」と言われたことを今でも鮮明に覚えています。

そんな簡単に出すようなモノなの?と思いました。

みんながみんなこのケースには当てはまらないと思いますが、そういったことがキッカケでずるずる精神的な負のスパイラルに嵌る場合もあるのではないかな?と感じました。

いずれにせよ、定期的な運動と日光に当たる事、睡眠は必要です。

時にはストレスを感じている現場から逃げ出す事も必要です。


参考

うつ病治療の新たなメカニズムを発見! 難治性うつ病の新たな治療薬開発に期待

うつ・不安にかかわる脳内神経活動と運動による抗うつ・抗不安効果