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  • 2026.09.30

減量すると筋肉は本当に減るのか?

減量をすると、体重だけでなく「筋肉まで落ちてしまうのではないか」と不安になる方は多いと思います。

実際、減量中には除脂肪体重や筋肉の厚みが低下することがあります。ただし、それをそのまま「筋肉そのものが失われた」と考えるのは少し早いです。

2026年に『Journal of Strength and Conditioning Research』に掲載された研究では、Mr. Olympiaに3度出場した世界トップレベルのプロボディビルダー1名を対象に、増量期と減量期で身体がどう変化するのかを詳しく調べています。 対象者は38歳、身長176cm、増量期の体重128.7kg、トレーニング歴25年という非常に高度な選手でした。

体重は6.4kg減少。しかし脂肪はほとんど減っていない

この選手は、増量期には1日約5,620kcalを摂取していましたが、減量期には約3,140kcalまでエネルギー摂取量を落としています。

特に大きく減ったのが炭水化物で、1日850gから320gへ約62%減少。一方、タンパク質は約330gを維持しており、体重1kgあたりでは約2.5〜2.7gという非常に高い摂取量でした。

その結果、体重は128.7kgから122.3kgへ6.4kg減少しました。 ところが、3部位の皮脂厚の合計は13.9mmから13.2mmへ、わずか0.7mmしか低下していません。推定体脂肪率も6.1%から5.9%への変化にとどまっています。

一方、除脂肪体重は120.8kgから115.1kgへ約5.7kg低下しました。

筋肉の厚みも減ったが、それがすべて筋肉の喪失とは限らない

研究では超音波を使い、胸、大腿部、腕、ふくらはぎなど9か所の筋厚を測定しています。 減量期にはすべての部位で筋厚が低下し、平均では約8.6%減少しました。

特に僧帽筋上部では約28%、内側腓腹筋では約13%、外側広筋では約12%の低下が確認されています。

では、本当にそれだけ大量の筋肉が分解されたのでしょうか。 必ずしもそうとは言えません。

研究者が注目したのが、筋肉の「エコー強度」という指標です。減量期には筋厚が低下する一方で、補正エコー強度は平均約9%上昇しました。 著者らは、その要因の一つとして筋グリコーゲンの減少を挙げています。 今回の選手は炭水化物を1日850gから320gまで大幅に減らしていました。

筋肉に蓄えられるグリコーゲンが減れば、それに伴って筋肉内の水分量も変化します。

つまり、減量によって筋肉が「小さく測定された」としても、そのすべてが筋タンパク質の消失を意味するわけではありません。 著者らも、減量期にみられたエコー強度の変化について、筋グリコーゲン低下を反映している可能性を指摘しています。

「体重が減った=筋肉が減った」ではない

この研究から重要なのは、減量中の身体組成を単純な数字だけで判断しないことです。

体重や除脂肪体重、筋厚が落ちたとしても、それには筋タンパク質だけでなく、グリコーゲン、水分、その他の除脂肪組織の変化も含まれます。

特に炭水化物摂取量を大きく減らした状態では、見た目の張りや筋厚が落ちやすくなります。

そのため、減量中に数kgの除脂肪体重が落ちたからといって、その重量すべてを「筋肉」と解釈するのは適切ではありません。

一方で、今回の選手でも筋厚の低下は確認されていますので、極端なエネルギー制限では実際に筋組織の減少が起きている可能性もあります。

この研究を一般人にそのまま当てはめない

今回の研究は非常に興味深い一方、対象者は1名だけです。

しかもMr. Olympiaに出場するOpenクラスのプロボディビルダーであり、一般的なトレーニーとは筋量も減量方法も大きく異なります。

さらに、IFBB Proではアンチドーピング検査が行われておらず、この研究でも薬物の使用については調査されていません。

したがって、同じ変化がナチュラル選手や一般人に起こるとは限りません。 それでも、減量中に身体が小さくなったからといって、それをすべて「筋肉が減った」と考える必要はない、ということです。

減量を評価するときは、体重だけでなく、筋力、トレーニングパフォーマンス、見た目、周径など複数の指標を合わせて見る方が良いでしょう。


参考文献

https://www.ovid.com/jnls/nsca-jscr/fulltext/10.1519/jsc.0000000000005519~beyond-the-limits-of-human-muscle-hypertrophy-a-case-study