【推奨】胃癌 術後のトレーニング -体重増加の為に-
「パーソナルトレーニングジムIGF」では、胃を切った方の体力低下・体重減少を適切なトレーニングと食事戦略の提案を通じた改善の為のサポートを行っております。
代表の井上トレーナーは「アルファクラブ」の会報誌に毎号トレーニングに関する記事を連載しております。
また、NPO法人PDNの主催する「PDN那須セミナー」にて症例報告や医療従事者向けにトレーニング戦略のセミナー発表も行ってきました。
今回は、胃がん、食道がんなどで胃を切った方がどのようにすれば筋肉を肥大させ、体力を付ける事が出来るか、これまでの記事を簡単にまとめてみたいと思います。
※最下部の関連記事リンクも参考にしてみてください。
【胃癌術後のためのトレーニング戦略】
身体(筋肉)を大きくするのは、ダイエットよりも時間がかかります。
まずトレーニングから解説します。
行うエクササイズは多関節運動というカテゴリーの運動になります。
具体例を挙げると、スクワットや腕立て伏せ、ラットプルダウン等です。
これらは身体の中でも大きな筋肉を使うので、当然大きな筋肉が更に大きくなれば身体は大きくしやすくなります。
また、成長ホルモンや男性ホルモンの分泌も多くなり、体内の環境が筋肥大しやすい方向に傾きます。
多関節運動はその名の通り、沢山の関節が同時に協調して動きます。日常生活にも転用しやすい能力が開発されます。
日常生活の動作では複数の関節が同時に動いて動作をします。
モノを床から持ち上げる・椅子から立つのはスクワットの動きそのものだし、扉を押すのは腕立て伏せの動きだし、引き戸を引くのはロウイングの動きです。
そういった日常生活の動作に近い動きに負荷をかける事が出来る、それが多関節運動の筋力トレーニングです。
毎日行う必要はなく、週に2-3回で良い
筋力トレーニング後は筋肉が一部壊れた状態です。この修復に24~72時間かかるといわれています。
筋肉がしっかり回復してから次のトレーニングを最大限頑張る事で、前回のトレーニングよりも高いパフォーマンスを発揮できるようになります。その繰り返しで成長のスパイラルに入る事が出来るのです。
前回の自分の体力レベルを超える瞬間を感じる事が出来るはずです。つまり今まで体力が低下の一途だった(体力無い→疲れる→動かない→より体力落ちる)のに、その負スパイラルを断ち切って、上昇スパイラルに入る事が出来るのです。このイメージを頭の中で作りましょう。
体力無い→あえてトレーニングで体力消費→身体が今のままではいけないと察知し体力を向上させる→疲れにくくなる→また動ける(トレーニング)→・・・
これはたった週2-3回、1回1時間程度のトレーニング時間を確保して頑張れば獲得できます。1週間168時間のうち2-3時間頑張れば良いのです。しかも年齢は何歳から始めてもトレーニングの恩恵は受ける事ができます。
【胃癌術後のための栄養戦略】
次は栄養なのですが、これは関連記事の「筋肉を増量させるには-栄養編-」と「サルコペニアの改善ー栄養ー」も参考にしてください。
皆さんはご存知でしょうが、体重増加=摂取カロリー>消費カロリー、となります。
よく食べてくださいという事です。しかし、そもそも術後はそんなに量を食べれないので、どうにもこうにもいかないというのが本音かと思います。
少量で回数多めの食事を、と指導されるのではないでしょうか。この方法は是非とも続けてください。なぜならアスリートの場合も身体を大きく強くするときは、少量ではないですが1日4-5食(ボディビルダー等は6食の場合も)摂るようにしているからです。
食べる回数が多ければ必然的に一日の総カロリー摂取量も増加しやすくなります。
中でも特にタンパク質を摂らなければなりません。しかし、タンパク質を摂るには肉、魚を沢山食べる必要があります。脂肪の摂取量が増えるのでダンピングや逆流性食道炎などにも注意が必要となります。
また、胃が無いのでタンパク質を消化しにくい身体になっています。でも必須栄養素かつ筋肉の材料であるタンパク質は確保しなければならない。そんな時どうするか?以下の方法をまず検討して頂きたいなと思います。
①プロテインを飲む
②必須アミノ酸(EAA)を飲む
①は肉や魚を食べるよりは居に溜まる感覚が減らせるかと思います。それによってその他の食事量が落ちて結果的にカロリーが摂れなかった、というようなことが起こりにくくなります。また、脂もありませんので逆流もしにくくなる可能性があります。
②はタンパク質が分解された成れの果てです。タンパク質は身体に吸収する事ができず、アミノ酸まで分解する事でようやく身体に吸収されていきます。
このタンパク質の分解を胃や小腸で行うのですが、胃が無いので消化作業が進みづらく、食べたもの全部は吸収出来ず排泄されてしまいます。
必須アミノ酸なら既に吸収されるだけの状態なので、飲めば筋肉を付けやすい環境が整います。
アスリートも人間ですから、身体を大きくするために1日4000~5000kcal摂るのは流石に辛いです。しかしサプリメントを使う事でそれを可能にしています。
胃を切った人もアスリートも食事に対しての辛さは相対的には近しいものがあると考えています。なので、胃を切った方もアスリートの食事方法を参考に食事方法を再考するのは良い事ではないでしょうか?
胃を切った方への指導で、実際に筋力トレーニングと栄養戦略を実施して体重・筋肉量・筋力どれも改善しているお客様が居ます。「この方法がもっと広まれば良いのにね」と仰っています。
体調に気を付けながら取り組んで頂く必要もありますが、怖がっていたら何も始まらないし、現状は低下の一途なので、まずはダンベルに触ってみるところから気楽に始めてみると良いですよ。
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