糖質制限パート6 -栄養学の新常識
こんにちは。トレーナーの佐藤です。
今回は糖質制限食の栄養学について紹介していきます。
ダイエットをする為や健康管理をする為の食事パターンは大きく分けて2通り存在します。
ひとつは【カロリー制限】、もう一つは【糖質制限】です。
カロリー制限
これは1日に消費できるカロリーを算出してその消費カロリーよりも少ない食事量であれば体重は減少し、同じくらいであればキープ、多ければ増加するという考え方です。
基本的にこの食事パターンだと脂肪を抑える事が多くあります。
それはタンパク質や糖質、脂質といった3大栄養素の中で1gあたりのカロリーが脂質が最も高いからです。
タンパク質と糖質は1gあたり4kcal。脂質は1gあたり9kcalとなっています。
つまりは、少しの量でも脂質を摂るとハイカロリーになってしまう恐れがあるのです。
このパターンで言うと調理の際に炒め物をしない(油を使わない)や、お肉は鶏むね肉やささみ、赤身の牛肉だけにしましょう、というような食事になります。
勿論、糖質はたべれますがカロリーを制限するので無限に炭水化物を食べたり、お肉を好きなだけ食べる訳にはいきません。
そして、カロリーを計算しないといけませんので手間もかかります。
(慣れてくればあまり苦ではないですが)
著書の中では今まで信じられてきたが、近年になり誤りだと分かった健康常識だと紹介されていますが、私としては方法の一つとしてあっても良いのかなと思っています。
現にお米が好きな人もいる訳ですし。
糖質制限
これまでの記事をご覧になられていたら理解度が深まっているかなと思います。
糖質を制限して、その分タンパク質や脂質を摂り、カロリーを調整する方法です。
力が出ない、極端に筋肉が減ってきた等の現象が起きる場合は摂取カロリーが少なすぎるかタンパク質が少ない事が予測出来ます。
またカロリー制限と比べてカロリーに依存しないことが分かっています。
つまりは消費カロリーと摂取カロリーの関係をあまり気にしなくても体脂肪や体重は減りやすいのです。
※極端なハイカロリーは当たり前ですが、体重や体脂肪が悪い方向に増えていきます
カロリーを計算する必要がない事はとても良いメリットですね。
後は、脂質も重要なエネルギー源ですのでお肉なら豚や牛、鶏もも肉などの脂肪がある部位もOKなのが嬉しいところです。
そして炭水化物を日頃から摂っている場合は、調味料を気にせずとも炭水化物を抜いてお肉お魚や脂を摂るだけで十分に効果はあるのでストレスフリーですよね。
トレーニングや身体のケア、怪我においても年々研究が行われていてそれまで分かっていなかった数々の事実が科学的に証明されてきています。
- 倒れた人には水を掛けるor放っておく
- アイシングはよくない
- とにかく走り込め
- 体を大きくするにはタッパ飯 ・・・etc
今思うとなんでこんな事していたんだろう、とかどうしてこんな時代があったのかな等と思ってしまうような事象が業界の中でも数多くあります。
栄養学についてもそれはあり、脂肪は身体にとって悪だとされていましたがそうではなく、生命活動にとって大事な働きがあることや脳出血の予防にも繋がる事が分かってきています。
イメージだと脂肪を摂取すると肥満になるんじゃないか、とか、血液がドロドロになる、などと思ってしまいそうですよね。
実際に生活習慣病が増えた際に真っ先に疑われたのは脂肪の取り過ぎでした。
しかし脂肪を抑えるように食事を促すと糖質量が飛躍的に上がってしまい食後高血糖や慢性的な血糖値の上昇、それに伴う様々な諸症状に悩まされるケースが増えてきました。
肥満患者の量が逆に増えてしまったのです。
そこで、実は糖質が悪かったのではないか、という見解に変わり研究は進んでおります。
何度も紹介しましたが、しっかりと科学的に糖質過剰が悪影響を及ぼしてしまうことは証明されていますね。
動物性の飽和脂肪酸といわれる脂肪も2010年の時点で摂取量と脳・心血管疾患の起こった率とは関係ないという研究が出ております。
合わせて、2006年に発表された論文では冠動脈疾患の発生リスクは脂肪ではなく糖質によって変化する事が記載されております。
(糖質が高い方が発生リスクが高い)
この事により、心筋梗塞のリスクも食事の糖質量が高いと比例して高くなるということが言えます。
他に、近年変わりつつある常識は動脈硬化の原因です。
動脈硬化の原因は脂肪ではなく糖質の過剰摂取であるということも世界の医学界で考えられつつあります。
糖質を摂るとインスリンが分泌されます。
そしてインスリンの働きによって血糖値を下げるのですが、インスリンには様々な効果があります。
血糖を体脂肪に変えたり、中性脂肪の分解を妨げてしまうという負の効果があるのです。
それがインスリンが肥満ホルモンとも言われる所以なのですが、インスリンは糖質を摂れば摂るほど分泌されてしまうので糖質過剰食ともなればより大量に分泌されてしまいます。
ヒトは上がった血糖値を下げなければいけないので自然な反応なのですが、それにより体内の脂質状況が悪化してしまい、動脈硬化を引き起こしてしまうということが証明されています。
動脈硬化は万病の原因と、私の専門学生時代の先生に教えていただきました。
勉強すればするほどそれは腑に落ちますし、理解度が深まっていきました。
その動脈硬化を防ぐには脂質ではなく、糖質に気をつけるべきということは江部先生の本を読み、知ることが出来ました。
自分自身も気をつけていきたいと思います。
特にピックアップすべきトピックとして他に挙げるならば、タンパク質の取り過ぎが腎臓に悪いという根拠は無い、ということも著書の中で紹介されております。
タンパク質が腎臓に悪いのか、悪くないのかはトレーナー業界的にみても度々取り上げられます。
そしてその度に論争が起きます。
ある論文では「タンパク質の取り過ぎは腎臓に悪い」
ある論文では「タンパク質の取り過ぎは腎臓に影響は無い」
などとそれぞれの意見を支持する研究結果があるからです。
後は、ボディビルダーや日頃からタンパク質を多く摂取するトレーニング愛好家の方々が実際に高タンパク質を実施して健康診断の結果に異常がない、という実体験からくるものもあります。
著書の中では、タンパク質の摂り過ぎが腎機能の悪化に繋がるという確かな医学研究が無いと記載されています。
確かに、医学研究や科学的な根拠(エビデンス)はグレードがあり、一定のグレードを超えないと証明されたとは言えないのです。
タンパク質が腎臓に悪影響を及ぼさないとされることを裏付けさせる要因の一つに、日本人の「食事摂取基準」という厚生労働省が発表している食事の指標において、タンパク質の過剰摂取による健康障害には十分な根拠がないとされています。
また、厚生労働省は腎機能が正常な人に対してはタンパク質の摂取上限を設けることをやめております。
※日本人の食事摂取基準は5年毎の更新ですので2020年に新しいものがまた出ます。
もう少し根拠を出すと、
- 日本腎臓学会が低タンパク質を推奨しているが科学的な根拠があまりないことを学会が認めている
- 2013年10月に米国糖尿病学会が糖尿病腎症に関して低タンパク質食を推奨しないと明確に発表している
これらの点から見ても現時点においては私も高タンパク質は問題ないと思います。
ただし、タンパク質は一度に吸収できる量に上限があり、それを超えてしまうと脂肪として蓄えられてしまう側面もあることやそもそもでタンパク質の分解が弱くなってしまう病気などもあります。
高タンパク質食が良いからといって際限なく食べてしまうことはしないようにしましょう。
そしてタンパク質の代謝が悪いような体質の場合は必ず医療機関へ行き医師などへの相談は必須かと思います。
何事も一長一短あり、全て自分に当てはまる訳ではないことを知るのも重要です。
沢山の情報の中からしっかりと自分にあった情報を選択していきましょう。
今回はこれで終わりです。
次回は糖質制限食の定義等に触れていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※参考文献
栄養とアスレティックパフォーマンス(New Diet Therapy)