BLOG

  • 2022.04.10

サルコペニアの改善 ー栄養ー

今回はサルコペニアを改善させるための栄養について書いていきたいと思います。

「サルコペニア」筋肉が無いのは問題です。で、サルコペニアに関して原因などを書きましたが、改めて簡単に基礎知識をまとめます。

概念

「筋力・身体パフォーマンスの低下を伴った骨格筋量の減少」

基準(AWGS:2014)

【筋量】四肢骨格筋量/身長2乗

DXA:男性7.0㎏/㎡,女性5.4㎏/㎡

BIA:男性7.0㎏/㎡,女性5.7㎏/㎡

【筋力】握力 男性26㎏,女性18㎏

【身体能力】6m通常歩行速度:0.8m/s

原因

原発性:加齢,二次性:低活動・低栄養・疾患

罹患率

  • 60歳以上で8~40%、年齢が上昇すると罹患率が上昇する。
  • 日本の65歳以上の健常高齢者は男女共に20%程度。
  • 疾患・身体機能障害を持つ人、入院患者などで罹患率は更に高い可能性。

以上、簡単にサルコペニアの説明です。研究途上の分野なので厳格な基準はまだ存在していません。しかしここ数年で非常に活発に研究が進んでいます。

サルコペニアの予防・改善に必要なのは運動と栄養です。基本的なアプローチは「筋肥大」の運動処方と栄養戦略です。

筋肥大の運動処方は基本的にレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)ですが、サルコペニアの人は骨密度の低下も著しい傾向にあるので、慎重に負荷やエクササイズフォームを指導していく必要があります。

以下、原因別の対応をまとめてみたいと思います。

加齢が原因

レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む栄養摂取の併用。

低活動が原因

安静臥床、不活動を避けて外出などで活動的に過ごす。

歩行動作、日常生活動作(掃除、洗濯など)を積極的に行う。

低栄養が原因

エネルギー蓄積を出来るような食事・サプリメント戦略で体重を増加させる。

カロリー、タンパク質量が重要と考える。

「攻めのリハ栄養管理」といったフレーズが使われたりする。

疾患が原因

侵襲と悪液質で対応が異なる。

侵襲異化期の場合、栄養状態の悪化防止を目標として、1日エネルギー量は15~30kcal/㎏程度とする。併せて廃用性筋委縮の予防のため、日常生活は基本的に実施する。

侵襲同化期の場合、攻めのリハ栄養管理を行う。終末期ではない悪液質の場合、栄養・運動療法、薬物療法を含めた包括的な対応を行う。タンパク質(1日1.5g/㎏)、EPA(1日2~3g)が有用な可能性がある。

運動(持久力トレーニング、レジスタンストレーニング)には抗炎症作用作用があるため積極的に実施する。

栄養についてはコチラもあわせてご覧ください↓

筋肉を増量させるには-栄養編-

筋肉を増量させるには -サプリメント-

サルコペニア患者に対するタンパク質補給

1.0~1.5g/㎏/日

食事量が著しく低下している場合は、プロテインなどの補助食品の導入も検討する。

必要エネルギーの推定とエネルギー蓄積量

①基礎代謝を測定や計算式で求める。

基礎代謝×1.5~2.0(活動量の低い人は1.5)で一日の消費量を算出する。

②一日の蓄積分として250~500kcal程度を加える。

①+②を一日の摂取目標量にする。

体重を1㎏増加させる場合は、7000kcalのエネルギー蓄積が必要なので、7000kcal÷30日とすると、1日230kcalの蓄積量が出来れば理論上1㎏の体重増加を見込めます。

BCAA

9種類の必須アミノ酸の中で、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)は筋肉の肥大に極めて有効。(とくにロイシンが効くのではといわれています)

筋力トレーニングの直後に飲むと、筋肉の分解を抑え、合成に速やかに傾ける事が出来る。

高齢者の場合はタンパク質合成刺激の時間が短い為、運動直後に速やかに飲むのが効果的。

1回2g以上飲めば血中アミノ酸濃度はピークに達する。

HMB

HMBは必須アミノ酸のロイシンの代謝産物である。

BCAAの中でも特にロイシンがサルコペニアに対して有効であるとされている。

これはロイシンにより体内でHMBが代謝生成されるためである。

HMBは2g/日を継続的に摂取すると筋量増加に効果的である。

食事からの摂取では1g/日以下になるので、効果を発揮する為の量を摂るにはサプリメントが必要になる。

※しかし優先度は低いように思います。BCAAやEAAを摂ればロイシンを摂取出来るので代謝物としてHMBを摂るのと変わらないからです。改めてコストをかける必要があるのか微妙なところ。

ビタミンD

ビタミンD欠乏の人にビタミンDを補充する事で、筋力回復、転倒リスク軽減、死亡率の低下につながる。

ビタミンDが不足していない対象者や筋力が低下していない対象者はサプリメントの効果はあまり期待できない。

サルコペニアの人は欠乏している可能性もあるので、食事から摂るように心がけると良いと思われる。

キノコ類や魚に多く含まれる。

ビタミンDは紫外線を浴びる事で皮膚でも産生される。具体的には15~30分を屋外で過ごす事が勧められる。

その他参考リンク

筋肉を増量させるには-運動編-

高齢者でも筋肉はつくのか?

サルコペニアは様々な要因から発症し、生活の質(QOL)を著しく低下させます。

特に入院を要する疾患や傷害にかかった際に急速に進みますが、一般成人でも運動不足と栄養不足が続けば将来的に発症するリスクは非常に高くなります。

日頃からの運動としっかりタンパク質を摂ることを意識して過ごしましょう。


参考文献

Modern Physician 5月号