水中運動の効果 水泳、水中歩行、アクアビクスなど
近年はコンパクトジムやマイクロジムがトレンドとなっており、プールの利用者数は年々減少傾向にあります。(レジャー白書2017)
とはいえ、まだまだフィットネスクラブでの水中運動は根強い人気です。
水中運動を検討されている方も多いと思いますので、今回は水中運動の効果について簡単にまとめてみたいと思います。
※今は新型コロナウイルスの影響もあり控える方が多いでしょうが。。。
水が身体に与える生理的反応
◆浮力
水に浸かると身体が軽くなったような感じがします。これは浮力が働くためです。
みぞおちのあたりまで浸かると、身体への鉛直方向への負荷は30%になります。(地上に比べて7割も負荷が減るので、かなり軽く感じますね。)
これにより、水中では関節や筋肉に問題を抱える人にとって、患部への荷重負荷を軽減して運動を行えるようになります。
◆粘性抵抗
水中では身体を動かす際に抵抗が生じます。
この粘性抵抗は、抵抗面が大きかったり、動く速度が速いほど抵抗が大きくなります。
ジャンプして着地する際にも粘性抵抗が働き、浮力と相まって陸上で生じるような着地の衝撃を大きく軽減します。
◆水圧
水中では身体に水圧(水が身体を押しつぶそうとする力)がかかります。
水深が深くなるほど水圧が高くなるので、立位時では下半身に大きく水圧がかかる事になります。
これによって、下半身の血液が水圧の小さい上半身に集まりやすくなり、疲労物質を多く含む血液がより早く心臓に戻され、疲労回復効果が期待できます。
どういう人が水中運動を行うと良いか
身体に対して前述のような反応がある為、ある程度対象が絞られます。
◆関節痛のある方
関節痛は特に膝・股関節・腰に多いと思います。
関節痛の要因の一つとして、立位時に重力を受け続け徐々に患部が消耗し炎症を起こす事が挙げられます。
特に変形性関節症の方は痛みが出やすくなります。
関節痛のある方の運動として、水中運動はおススメです。浮力や粘性抵抗が働き、関節への負荷・衝撃を軽減してくれるためです。
◆疲労回復を図りたい方
水圧により、疲労物質(特に下肢)を多く含む血液の流れが良くなります。
水中ウオーキングで軽く心拍数も上げると、より早い疲労回復効果が期待できます。
また、歩かなくてもお風呂に浸かる事により血管が拡張するので、血液も通りやすくなり疲労回復効果が期待できます。
浮腫みやすい方にもおススメめ出来ます。
こんな目的の人は水中運動じゃない方が良い
良い事ばかり挙げていますが、私がフィットネスクラブで働いていた時に、目的に対する手段として水中運動ではなく別の方法が良いと考えられる方も沢山いたので簡単に紹介します。
◆筋肉を鍛えたい人(強くしたい、太くしたい)
浮力がかかるので、筋肉に対する負荷は非常に弱くなります。
筋肉の効率的な成長には、コンセントリック収縮とエキセントリック収縮の両方を、強い力発揮で行う事が必要になってきます。(コンセントリック=重りを持ち上げる時/エキセントリック=重りを下げる時)
粘性抵抗がありますが、これはコンセントリック収縮のみに負荷がかかり、エキセントリック収縮はかなり軽減されるか殆どありません。
簡単にまとめると、筋肉に対する負荷が弱すぎるので、筋力を高めたい人、筋肉を付けたい人には向いていない。となります。
◆骨密度を高めたい
筋肉と同じで、骨も強い負荷をかけると強くなります。
水中では身体が軽くなるので、骨密度上昇の期待は薄いと考えられます。
◆心肺機能を高めたい人はケースによりけり
これはケースバイケースです。
泳ぐことに関しての心肺機能を高めたい人には推奨されますが、ランニングや自転車等での持久力になると話は別です。
ランニングや自転車では下半身の筋力なども使うので、間欠的・持続的な筋出力が要求されます。この点は浮力のかかる水中では鍛えにくい体力要素なので、屋外のランニング等が推奨されます。
まとめ
水中での反応と、利用の参考になるようにまとめました。
水中運動が適さない人も気分転換に取り入れる程度なら問題なく実施して良いので、スケジュールと相談して取り入れていきましょう。夏場など汗をかきたくないという時にも使えます。
個人的には身体機能に対するプールの効果は意外と少なく、安全面や衛生面、経済面など諸々考慮すると、筋トレや有酸素運動を実施した方が良いな~、と考えています。
参考
NSCA JAPAN Volume 24, Number 9, pages 2-7