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  • 2022.04.23

糖尿病サルコペニア-糖尿病の方は筋肉を付けよう-

糖尿病患者はそうでない人に比べ、筋肉量の減少が早く、身体機能の低下が顕著になり、サルコペニアの罹患率が高くなる事が研究で示されています。Sarcopenia, Frailty, and Diabetes in Older Adults

この傾向は1型、2型ともに当てはまります。

サルコペニアが患者の予後を反映するのは糖尿病患者も同様です。

サルコペニアとは筋肉量が少ない状態と思っていただければよいでしょう。

糖尿病患者はインスリン抵抗性(インスリンは筋肉への栄養供給を促進しますがそれが阻害される)や蛋白尿(タンパク質は筋肉の材料だがそれが尿で排泄されてしまう)がある為、サルコペニアになりやすいのではないかと考えています。

インスリンは筋肥大を促進するホルモンの1つなので、この効きが悪いと筋肉が大きくなりにくいし、

蛋白尿により吸収されるはずのタンパク質が排泄されるという事は、それだけ筋肉を作る材料が無くなる、

なので、筋肉量が健常者よりも減るスピードが速くなる事が考えられます。

運動でインスリン抵抗性の改善を図る

運動でインスリン抵抗性の改善が出来ます。

また、運動により血糖コントロールもしやすくなります。

筋トレは糖尿病に効果的

加えて、BMIや血中脂質プロフィールが改善する可能性も高まります。

これらの改善は糖尿病の合併症も予防する事に繋がります。

様々な運動の方法がありますが、上記リンクに書いている「筋力トレーニング」が最も最適だと考えています。

食事制限とサルコペニア

筋力トレーニングがインスリン抵抗性の改善、糖尿病に効果的だという事は分かりましたが、今回は糖尿病とサルコペニアです。

サルコペニアは栄養を十分摂る必要がありますが、逆に糖尿病においては栄養の制限が必要であることが多いです。

この矛盾する課題を解決しなければ、糖尿病のサルコペニアの解決になりません。

効果的な方法は「糖質量を低血糖が出ない範囲で少なくし、腎機能の悪化を招かない範囲でタンパク質摂取量を増加させる」のが良いのではないかと考えています。

※これは医学的に示されている事ではないので、実際に導入される際は主治医と相談してください。

現在の糖質摂取量を適量に近づけようという事です。

例えば、白米を玄米に変えるだけでも、同じ重量の炭水化物でも玄米の方が食物繊維量が多い分、糖質量が少なくなります。

特に食物繊維を摂れるような食事を意識すれば血糖の上昇も緩やかになるので、長期的にみてポジティブな変化を得る事が出来ると考えられます。

「糖質を低血糖が出ない範囲で少なくし」という部分について。

血糖コントロールの面からいくと、血糖値を直接上げるのは糖質です。

タンパク質や脂質は血糖値を上昇させません。

なので糖質を摂らなければ血糖コントロールは容易になります。

しかし、血糖降下薬などを使用して血糖コントロールをしている患者は、糖質の摂取量を下げると低血糖が出る恐れがあります。

1日の糖質量を何gにするという絶対量ではなく、総摂取エネルギーの40%や50%などのように相対的に量を減らして、適宜糖質を摂りつつ、しかし総量は減らしつつ取り組んで行くのが良いと考えています。

これなら例えば、基礎代謝が1200kcalだと仮定して、一日の消費量はその1.5倍の1800kcalとなります。

1日2000kcal程度摂れば筋肉は少しずつ増えていく計算になります(サルコペニアの改善)。

食事摂取基準2015では、糖質の摂取量は50~65%となっています。

例)2000kcal×60%=1200kcal

大体このくらいを糖質で賄いなさいということです。糖質は1g4kcalですから、

1200kcal÷4kcal=300g

1日300gの糖質を食べなさい、と言っています。1食では100gです。

この量だとかなりの糖質量で、健常者の筋肥大の為の栄養なら良いですが、糖尿病患者にとっては悪化する可能性があります。

日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイドでも、バランスの良い食事を推奨しているので上記のような糖質比率になります。

これが例えば40%の場合だと、1日200gという事になります(2000×40%=800kcal=200g)。食後高血糖の上昇を30%ほど抑えることが出来ると考えられます。

一方で、400kcal分のマイナスが出る訳で、これをそのままにしておくと体重(筋肉・脂肪)は減ります。

その分、肉や魚などのタンパク質で補う必要があります。

400kcal分の肉だと

  • 牛ロース 150g
  • 牛もも 200g
  • 豚ロース 1500g
  • 豚もも 200g
  • 鶏ささみ 400g
  • 鶏もも 350g
  • 鶏胸 250g

などで、大体200g程度の肉を追加することになります。

上記の量でタンパク量は、40~50g程度になります。

タンパク質の摂取量は食事摂取基準から引用すると15%程度が目標なので、

2000kcal×15%=300kcal

300kcal÷4kcal=75gが1日に必要となります。

上記の糖質を抑えた分の肉の増加量を足すと、

75g+40~50g=115~125g

糖質を抑えて、肉をその分増やしたら、115~125gのタンパク質を一日に摂ることになります。

サルコペニアの改善、つまり筋肉の肥大に効果的なタンパク質の摂取量は体重1㎏あたり1.5g以上です。

これはスポーツ栄養学では筋肥大を促進させるタンパク質量とされており、多くの研究で示されています。

基礎代謝が1200kcalの人は、体重はおよそ50㎏くらいになるので、1.5gだとして75gくらいです。

115g摂ると、体重1㎏あたり2.3gになります。(上記の例では2.3~2.5g/㎏)

筋肥大をするには十分な量です。

従って、糖質を抑え、その分タンパク質量を増やした場合、サルコペニアの改善になる可能性が高いです。

腎機能は大丈夫なのか?

健康な人の腎機能に対しては3.0g/㎏でも悪影響はないとされています。

しかし、糖尿病患者は腎機能が悪い人もいます。

腎機能が低下している場合は程度によりますが、高タンパクがNGとなる事があります。

こういった人のサルコペニアの改善はなかなか難しいのが現状です。

しかし、米国糖尿病学会は「糖尿病腎症に関し、低タンパク食を推奨しない」としてるので、過度に制限する必要もありません。

この辺りは腎機能を定期的に監視しつつ、主治医と相談してタンパク質摂取量を決めていく必要があるでしょう。

糖尿病のサルコペニア改善の為に、基本的には

  1. 摂取カロリーを消費と同じか少し多めにする。(0~+300kcal)
  2. タンパク質摂取量を増加させる。
  3. その分糖質の摂取量を抑える。
  4. 腎機能の程度に応じて、②③を調整する。
  5. 運動(出来れば筋力トレーニング)を定期的に行う。

食事内容の改善が出来ない場合でも、⑤の筋力トレーニングを実施すれば、筋力および筋持久力の改善は確実に得られる事が出来ます。これだけでも脱サルコペニアに大きく貢献します。

薬に頼りきりにならず、生活習慣で健康を目指していきましょう。


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参考文献

Modern Physician 5月号