糖質制限パート3-糖質制限食がもたらす3大合併症、他への効果-
こんにちは。トレーナーの佐藤です。
今回はパート3。前回の続きです。
今回は先ず、糖質制限がもたらす糖尿病の合併症や予備軍についての効果を紹介していきます。
注意していただきたいのですが、糖尿病には高血糖の記憶という現象があり、糖質制限食を行う以前の高血糖時期に出来てしまった終末糖化産物による悪影響は取り除くことが出来ないと言われています。
つまりは限りなく予防することは出来ても完全に合併症を予防することは出来ない、ということになります。
合併症には主に以下のようなものがあります。
これらは糖尿病の3大合併症と呼ばれています。
- 網膜症
- 腎症
- 神経障害
パート2でも最後の方に少しだけ書きましたが、食後高血糖がないことや血糖値が正常値になるということは血管へのダメージが少ない(もしくは無い)ことになります。
そのような効果のある糖質制限食を続けると網膜症(糖尿病網膜症というのが正式名称)の症状が軽減したケースがあると著書の中で紹介されています。
網膜症による失明は日本における後天的に失明してしまうケースの第二位と言われているので、決して少なくはないですよね。
これは糖代謝の異常によって目の網膜などに変化を及ぼし視力が低下してしまうことによって引き起こされてしまう病気です。
腎症も第二期から第一期へと改善したケースが複数あると著書の中で記載されておりました。
腎症とは具体的に、糖尿尿によって腎臓の糸球体(血液をろ過する働きを持つ)が硬化して数が減少してしまう病気のことです。
第二期とは早期腎症と呼ばれていて、5~15年糖尿病を患っていると発症すると言われています。
第一期とは自覚症状も医学的な所見もない状態で、糖尿病と診断された場合にはその時点で第一期の腎症とされています。
腎症は最終的には透析が必要になってしまう恐れもありますので要注意です。
神経障害とは糖尿病患者に見られる末梢神経障害の総称のことです。
慢性的な高血糖状態が続くと引き起こされるとされています。
これによって最悪の場合、血流も悪くなり組織が壊死し、足を切断することになってしまうケースもあります。
そのケースも決して少ないわけではなく、年間に3千人程度に及ぶと著書の中で紹介されておりました。
これら3つの合併症に対して糖質制限食は効果があります。
病気になったらもう手遅れ・・・ではなくしっかりと症状が改善しているケースが複数あるのがとても心強いですよね。
そして完全に予防できないまでも、限りなく予防ができるので取り組まない手はありません。
続いて糖尿病予備軍に対する糖質制限食の効果をまとめてみました。
糖尿病予備軍に対する効果
糖質制限をしていると高インスリン血症や高血圧などが改善します。
理由は糖質制限食をすると血糖のコントロールが良くなり、インスリンの追加分泌を少なくする効果があります。
ましてや、パート2で紹介した通り、コレステロール値の改善や肥満も改善してくれることがわかっていますので効果は絶大です。
そして肥満や高インスリン血症という糖尿病を発生させる誘因を抑えることが出来ますので糖尿病の予防効果もあります。
糖尿病だけでなく予備軍にまで良い効果があるのは凄いですよね。
そして薬剤と違い、副作用やデメリットがないこともとても魅力的ですね。
糖尿病のすべてのレベルにおいて糖質制限食の効果はこのようになっております。
- 糖尿病につながる病気を改善し、糖尿病の発症を予防する
- 糖尿病患者の血統コントロールを改善する
- 糖尿病による合併症を予防する
- 合併症の症状を改善する
また合併症や予備軍の他にも
- 認知症(特にアルツハイマー)
- 偏頭痛
- 逆流性食道炎
といった病気の改善効果もあると言われています。
運動が認知症に対して効果があることも近年では言われていますが食事でも改善ができるのは驚きです。
代表的な認知症であるアルツハイマー病は高血糖と高インスリン血症が誘因となって起こりやすいことはいくつもの研究で示されております。
研究例を著書の中から抜粋して紹介します。
九州大学が行なっている久山町研究
→認知症のない65歳以上の826人を15年にわたって追跡調査した研究。これにより、糖尿病とその予備軍である人はアルツハイマー病を発症するリスクが2.1倍高いと報告されました。
ロッテルダム研究
→世界的に有名な研究。高齢の糖尿病患者が脳血管性認知症を発症するリスクは2.0倍、アルツハイマー型認知症は1.9倍、インスリン治療を受けている糖尿病患者ではアルツハイマー型認知症は4.3倍高いと報告されました。
この研究報告から分かる通り、糖尿病や予備軍以外にも糖質過剰食もアルツハイマー型認知症を発症してしまうリスクが高いとされています。
しかし、事実として、高血糖と高インスリン血症は改善するが認知症に関するエビデンス(科学的な根拠)は未だ不十分ということになっています。
私の意見ですが、デメリットの報告はされていないので、積極的に取り組んでも良いと感じています。
偏頭痛や逆流性食道炎に関しては著書の中で、先生ご自身の経験や現在までにわかっている事を中心に記載されておりました。
そのエピソードでは糖尿病の患者に糖質制限食を指導したところ、別の病気まで改善したという人は次々に現れるようになったとされています。
また偏頭痛も改善されたというエピソードもありました。
それぞれ明確なメカニズムはわかっていないのですが、逆流性食道炎では糖質が胃酸を過剰に分泌していると思われていて、その糖質量が減ったことがきっかけで胸やけなどの症状が改善されたと予想されています。
また、偏頭痛に関しては、食後高血糖やインスリンの過剰分泌がきっかけで何らかのメカニズムで脳の血管に影響を与えていることは原因とされているのでそれらを防いでくれる糖質制限食が功を奏しているのではないかという見解です。
科学的なことは未だはっきりとわかっていないのですが実際にそのような改善したケースが複数あるので支持出来るものだと私は感じます。
これまで糖質制限食によるメリットを挙げてきましたが、デメリットは健康的な身体づくりに関しては皆無と言っても良いかと思います。
春に多くの方が悩まされる花粉症や、アトピー性皮膚炎などにも血流が改善されることで良い効果があるとされています。
その他、アレルギー性鼻炎や、喘息、アレルギー疾患など多くの方を苦しめる病気の改善報告も上がっています。
これは著者の考察ですが、糖質の少ない食生活はヒト本来の食事に近いため、体内の代謝が安定して自然治癒力が高まるせいではないかと考えておられます。
また、糖質食だと食後に血糖値が急激に上がってしまう「グルコース・スパイク」と呼ばれる症状が起きてしまい、これが動脈硬化の大きなリスクになると書かれています。
動脈硬化は進行すると様々な生活習慣病や死につながる病気を引き起こしてしまうので要注意です。
グルコース・スパイクによって血流が悪くなり全身の血管がボロボロになって、眼や腎臓、手足などに合併症が出たり、心臓や脳がやられて死亡してしまう可能性が高くなります。
これは糖尿病の方はもちろんですがそうでない一般の方も危険性があります。
決して一般の方は長い時間血糖値が高いままではないのですが食事で糖質を60g(白米茶碗1杯 もしくは トースト2枚相当)を食べると危ないラインまで血糖値が一時的に上昇します。
その為、血糖値の上昇を防ぐ、糖質制限食は糖尿病以外の方へも推奨されております。
知れば知るほど糖質制限食の偉大さを痛感しますね。
今回は糖質制限食がもたらす合併症や予備軍への効果、そして認知症や食道炎、アレルギーなどへの効果を紹介しました。
次回は、ガンや心疾患などへの予防効果を紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【関連】
※参考文献
江部康二の糖質制限革命-江部康二(東洋経済新報社)