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  • 2022.04.14

妊娠から産後母体が回復するまでの栄養について

パーソナルトレーニングとはあまり関係はありませんが、広義の身体作り・健康づくりという観点では必要な情報ですので、妊娠から産後までの栄養について書いてみたいと思います。

妊娠から産褥期(さんじょくき:出産後、母体が回復するまでの期間)の十分な栄養は妊婦の健康と胎児の発育を守る為に必要です。

「母体が回復するまで」と書きましたが、詳しくは「子宮が妊娠していないときの状態に戻るまで」です。

妊娠時に必要な栄養について

基本的に厚生労働省の策定した日本人の食事摂取基準に基づいて設定します。

18~29歳の女性の場合、必要なエネルギー量は

  • 1,650kcal/日
  • 1,950kcal/日
  • 2,200kcal/日

とされています。(上から身体活動レベルが低い・ふつう・高い)

これに妊娠中の場合、以下の分エネルギーを付加する必要があります。

  • 初期(~13週6日):+50
  • 中期(14週0日~27週6日):+250
  • 後期(28週0日~):+450

推奨される妊娠全期間の体重の推奨増加量

  • BMI18.5未満:9~12kg
  • BMI18.5以上25.0未満:7~12㎏
  • BMI25.0以上:およそ5㎏目安だが医師と相談

体重が低い人ほど妊娠中は体重が増える分が大きく、過体重の人ほど増加分は小さくなります。

上記だと長い妊娠期間での増加量なので、イメージが湧きづらいと思います。

1週間あたりの推奨体重増加量は↓

  • BMI18.5未満:0.3~0.5kg
  • BMI18.5以上25.0未満:0.3~0.5kg
  • BMI25.0以上:個別対応

となります。この増加量を目安にされると良いでしょう。

大きく超えるようならカロリー摂りすぎ、増加が小さければカロリーが足りていない可能性があります。

痩せや肥満の妊娠・出産への影響

痩せによる妊娠・出産への影響は低出生体重児(出生体重2,500g未満)分娩、子宮内胎児発育遅延、切迫流産、貧血のリスクが高まり、肥満による妊娠・出産への影響糖尿病、巨大児分娩、帝王切開分娩、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。

日本の20代女性の栄養問題

20代女性の痩せ(BMI18.5未満)の割合は21.7%と多いようです。

栄養素の摂取量平均値が少ないのは、ビタミンB1、B6 、C、D、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、食物繊維のようです。

若い女性の痩せ願望が大きな原因なのではないかと思われます。

他にも、欠食、偏食、加工食品や外食依存などの食生活の乱れ、健康管理の意識の低さが原因にあると考えられます。

妊娠時に注意が必要な栄養素と食品

葉酸

妊娠1か月以上前から妊娠3か月までの間、食事に加えて栄養補助食品から400㎍/日のプテロイルモノグルタミン酸の摂取が望まれます。これは食事での葉酸に換算すると800㎍/日に相当します。

受胎前後のプテロイルモノグルタミン酸投与が、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低下に有効であることが多くの研究から明らかになっています。

 

ビタミンA

細胞の増殖・分化に関与すため、胎児の発達にとって必須です。

必要量が増加するのは妊娠末期の3か月で、初期・中期には付加は必要ないとされています。(摂らなくて良いという事ではない)

逆に過剰摂取の場合、各種奇形を増加させる可能性もあるため、2,700㎍RAE/日を超えないよう、サプリメントや栄養剤に気を付けましょう。

 

妊娠期は鉄需要が増加するため、推奨量は、初期2.5㎎/日、中期・後期15.0㎎/日とされています。

主に動物性食品に多く含まれるヘム鉄の吸収率は20~30%であり、植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄の吸収率より高い為、赤身の肉や魚を取り入れるようにします。

タンパク質やビタミンCの摂取量が増加すると、非ヘム鉄の吸収率は高まるので、組み合わせて食べると良いです。

 

※栄養については個々の状態によって差があるので、その他気を付ける栄養や食品については主治医と相談しましょう。

 

妊婦の病態や代謝異常と栄養管理

妊娠悪阻

つわり(悪心・嘔吐・食欲不振など)は妊娠5~6週より出現し、12~16週頃にはほとんど消失します。

つわりの程度が異常に重症化した状態を妊娠悪阻といいます。

妊娠悪阻では持続する悪心・嘔吐の繰り返しで食事摂取が困難となり栄養・代謝障害を引き起こします。

少量頻回の食事や、十分な飲水、脂肪の多いものや刺激物を避ける必要がありますが、加えて心理的サポートも必要となるので、産婦人科で相談を仰ぐようにしましょう。

 

妊婦の糖代謝異常

糖尿病ガイドラインで2016では、妊娠糖尿病の定義は、「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない耐糖能異常であり、妊娠中の明らかな糖尿病、糖尿病合併妊娠は含めない」とされています。

食後の良好な血糖値維持のために、1日の総エネルギー量の配分と食べる時間に配慮します。

場合によっては1回の食事量を減らし、回数を増やして総エネルギーを確保する方法が勧められます。

 

出産後の栄養管理

出産後は基本的にバランスのとれた食生活を推奨します。

産後の体重は、早く戻したいという気持ちもあるかもしれませんが、6ヶ月程度を目安に標準体重に戻していくと良いでしょう。

※こまかい食事の構成などは主治医や管理栄養士とご相談ください。


参考

日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.1 2019

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