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  • 2022.08.25

成人男性の筋力トレーニングが最大筋力と筋肥大に及ぼす影響

レジスタンストレーニング(筋トレ)は、最大筋力と筋肥大を促進するために使用される運動介入です。

一般的に、この種の運動は、健常者及び臨床集団において、運動能力及び日常生活動作中の機能的能力を向上させるために使用されます。

筋トレを構成する変数、例えば、筋活動、外部負荷、実施反復回数、セット数、休息間隔、動作テンポ、エクササイズの種類と順序、トレーニング頻度、努力レベルなどを適切に操作することは、神経と形態の適応を最大限に高めるための基本要素と考えられています。

与えられたエクササイズの1セット以上における外部負荷の量と呼ばれる負荷の大きさは、筋トレプログラムの最も重要な側面の1つとして特徴づけられています。アメリカスポーツ医学会のガイドラインでは、最大筋力を高めるには最大筋力の80%以上の負荷が必要であり、筋肥大を高めるには1RMの70~85%の負荷が必要であるとしています。

一方で、トレーニングを受けていない男性において、低負荷と高負荷(30%および80%1RM)で10週間の筋トレを行ったところ、筋繊維断面積が同様に増加したと報告した研究があります。

また、低回数(3~5RM)、中回数(9~11RM)、高回数(20~28RM)を比較すると、筋線維は低・中回数群で増加し、最大筋力の開発は低回数群でより高かったと結論付けています。

今回は、トレーニングを受けていない健康な成人男性において、低負荷で行うレジスタンストレーニングと中・高負荷で行うレジスタンストレーニングの最大筋力および筋肥大の発達への影響を見てみたいと思います。

研究の内容

方法

  • システマティックレビューのために選択された23の研究で563人が含まれています。
  • 454人が未トレーニング(80.6%) 、109人がレクリエーショントレーニング(19.4%)でした。
  • 最大筋力発達の評価については、13の研究が1RMを用いて動的筋力を評価し、4研究が等尺性筋力で評価していました。
  • さらに、5つの研究では、1RMを用いた動的筋力と最大等尺性収縮を用いた等尺性筋力を同時に評価し、1つの研究では、最大等尺性随意トルクを用いて等尺性筋力を評価しています。
  • 8件の研究では、超音波を用いて筋肥大を評価し、4件の研究では生検を用いて検証し、6件の研究では磁気共鳴画像を用いて評価しました。1件の研究では、生検と磁気共鳴画像法を用いて筋肥大を評価していました。また、4つの研究では、筋肥大の評価を行っていませんでした。

結果

  • 1RMテストによって測定される最大筋力開発については、18の研究が、低負荷、中負荷、高負荷のトレーニングプロトコルを用いて、介入前と介入後の間に有意な改善を示しました。
  • ほとんどの研究で、中負荷群と高負荷群は低負荷群と比較して1RMを有意に向上させることがわかりました。
  • MVICテストによる等尺性筋力の増加も、低負荷群に比べ、中負荷群および高負荷群でより大きく観察されました。
  • 筋肥大については、16の研究で、低負荷群、中負荷群、高負荷群が介入前後で断面積と筋厚を改善したことが示されました。
  • さらに、各セットの反復を動作不全(オールアウト)まで行った場合の群間(低負荷、中負荷、高負荷)の比較では、断面積や筋厚に有意差は見られなかったませんでした。しかし、低負荷は筋肥大に効果がないようでした。

主な知見として、筋トレで使用する負荷の大きさが、最大筋力の発達に影響することが示されました。一般に、群間(低負荷、中負荷、高負荷)の比較では、中負荷と高負荷を使用した場合に、1RMと最大等尺性収縮の向上がより高いことが示されました。

一方、筋肥大に関しては、ほとんどの研究で、トレーニングをオールアウトまで実施した場合、使用した負荷は筋肥大にあまり影響を与えないようであることが示されました。

筋力について

1RM筋力の向上を最大化するためには、高い負荷でトレーニングを実施する必要があることが示唆されていますが 、低い負荷も1RM筋力を高めるのに有効であることが示されています。

メタ分析を含む最近の系統的レビューでは、高負荷と低負荷で実施した筋力トレーニングは、1RMでそれぞれ35.4%と28.0%のパーセントの向上につながったことが示されています。一方、低負荷の筋トレを6週間行うと、最大筋力の発達がプラトーになることが観察されています。

その結果、個人がトレーニングの経験を積むにつれて、最大筋力の向上を達成するために、より重い負荷のトレーニングがますます重要になる可能性は否定できません。

しかし、トレーニングをしていない男性において、筋力開発を最大化するためには、オールアウトは必要ないというコンセンサスがあり、一般生活を送る上で、重量物を持ち上げる機会というのは少なく、階段を登ったり、重くても5kg程度の買い物袋を運ぶのがよくある筋力発揮の機会です。

子育て中の親御さんなら、(エレベーターが使えない時に限り)ベビーカーを持ち上げて階段を登る、子供(20kg前後)を抱えて移動する、などが考えられます。

したがって、高負荷でのトレーニングの優先度は低いと言えるでしょう。もちろん筋力が高い方が良いというのは言うまでもありません。

筋肥大について

このレビューに含まれる研究のほとんどは、低、中、高負荷を比較した場合、筋肥大と筋厚に有意差はないことを示しました。

一方で、これら研究の結果は、低負荷による筋力トレーニングでは、高負荷と同様の肥大効果が得られるものの、その反復はオールアウトまで行わなければならないことを示しています。

筋肥大を目的とした筋力トレーニングでは、幅広い負荷を使用することができますが、高負荷でのトレーニングと同様の肥大反応を得るための最小負荷閾値が存在するようです。

この点について、Laseviciusらは、低負荷と高負荷のトレーニングを同じボリューム(最終の総重量が同じになるよう)で実施した場合、40、60、80%1RMでの負荷スキームが、両者に差異なく筋肥大に有効であることを発見しました。

しかし、20%1RMは、他の負荷と比較して、筋肥大を誘発するのに最適な負荷ではないことが証明されました。

まとめ

健康な成人男性は、最大筋力を高めたければ、低負荷よりも高負荷の筋トレを実施する方が良いことが分かりました。

一般の人々にとっては、筋力よりも筋肥大が重要だと考えられます。筋肉量は結果的に筋力の向上にもつながるし、代謝の面でも大きな役割を担うからです。つまり、筋肉量の多寡は、内臓脂肪や血糖の調整など健康面に直結します。

訓練を受けていない成人男性では、筋肥大には幅広い負荷範囲(30~90%1RM)を使用できることが研究により示されています。

さまざまな研究を見てきた限り、筋肥大を達成するための重要な要素はトレーニングの“総量”だと思われます。オールアウトはトレーニング総量を最大化するための重要な要素の一つです。

とはいえ、低負荷でオールアウトまで行うトレーニングは、関節や腱に大きな負担をかけ、オーバートレーニングのリスクを高める可能性があるという事実をコーチは知っておく必要があります。

一方、高負荷でのトレーニングは、トレーニングの総量が減少し、肥大化を妨げる可能性があります。

したがって、適応プロセスの継続性を確保するためには、中程度の負荷に加えて、低負荷と高負荷の期間を交互に繰り返すことが良い戦略であると考えられます。


参考文献

Effects of Resistance Training Performed with Different Loads in Untrained and Trained Male Adult Individuals on Maximal Strength and Muscle Hypertrophy: A Systematic Review

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