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  • 2019.09.06

睡眠と代謝の密接な関係


結論からいうと太りたくない場合、食事から睡眠までは時間を空けるか、夕食の糖質摂取量を減らすか、またはその両方を実施すると良いです。

減量するため、弊社にいらっしゃるお客様も日々忙しく働かれている方が多いです。

朝5時起きだったり、寝るのが夜中0時を超えてから1時2時というお客様も多いです。このブログの読者の中にも就寝時間が遅いという方は多いと思います。

睡眠の量も減量の結果に関わってくると何となく聞いたことがあるという方もいるのではないでしょうか。

実際の研究を参考に簡単に解説したいと思います。

 

最近の研究で、睡眠中に起こっている代謝(エネルギー消費)の経過が調査されました。

まずブログを読まれている方へ分かりやすく要約すると、

睡眠中のエネルギー消費量

  • 途中覚醒・レム睡眠で多い
  • 睡眠に入った段階はエネルギー消費が少ない

という事です。

そして、ヒトの身体は脂肪と糖質をエネルギーとして消費しますが、

  • 睡眠前半では脂質が消費されやすい
  • 明け方の方で糖質が消費されやすい

だそうです。

私の解釈

夜に糖質を多めに食べてしまったり、寝る直前の糖質の摂取があった場合、睡眠前半の脂肪の消費は減退するのではないか、と考えました。

体内に糖質が沢山ある状態では、脂質の効率的な消費(糖新生)のプロセスが阻害される為です。

ということは、太りたくない場合、食事から睡眠までは時間を空けるか、夕食の糖質摂取量を減らすか、またはその両方を実施すると良いのではないでしょうか。

これは昔から言われていますが、よりその理由が支持される研究の一つかなと思われます。

逆に糖質を制限した場合、明け方(覚醒段階)にかけてエネルギー消費と糖質消費が増す事から、糖新生による脂肪の消費を加速させることが出来ると思われます。

グリコーゲン(糖質)を筋肉や肝臓にある程度貯蔵している場合はそれを使って覚醒段階のエネルギー消費を賄うのでしょう。しかし、糖質制限により糖が枯渇していれば、脂肪を変換して供給すると考えられます。

寝ている間にいかに脂肪を消費できるかも、肥満の予防やダイエットには重要なプロセスです。

こういった研究を参考にして、健康的な身体づくりを行っていきましょう。

 

以下、プレスリリースより引用です。


  • 研究の背景

睡眠不足は、糖尿病や脂質異常症などの代謝疾患や、肥満の発症と関連していることが、これま での数々の疫学研究から指摘されてきました。グレリンやレプチン、インスリン、オレキシンなどの調節因子は睡眠と食事両方に共通していることから、睡眠とエネルギー代謝は密接な関係にあるといえます。睡眠時にどのようにエネルギー代謝が行なわれているかについては複数の先行研究があるものの、代謝の測定方法の違いやサンプル数の少なさにより、一致した結果が得られていませんでした。これまでの研究では、エネルギー消費量は中途覚醒やレム睡眠時に多く、徐波睡眠時に少なくなることが報告されていました。しかし、ヒトの睡眠では、前半に徐波睡眠が多く、後半ではレム睡眠が多くなるという特徴があるため、エネルギー代謝が睡眠段階の影響を受けているのか、 時間の影響を受けているのか不明でした。

 

  • 研究内容と成果

本研究では29名の被験者について、脳波による睡眠測定およびヒューマンカロリメーターを用いた代謝(エネルギー消費量・炭水化物酸化量・脂質酸化量・呼吸商(RQ))測定を行ないました(参考図1)。ヒトの睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に大別されますが、さらに細かな睡眠ステージに分けることができ、また正常な睡眠でも一晩に何度か、短時間の脳波上の覚醒(中途覚醒)が 観察されます(図2)。代謝に影響を与える要因を明らかにするため、得られたデータについて統計学的手法(セミパラメトリック回帰分析)を用いて時間や睡眠ステージなど各要因の影響を調整して解析を行ない、①入眠してからの時間を調整したときの睡眠段階ごとのエネルギー代謝および、②睡眠段階のそれぞれの影響を調整したときの睡眠時エネルギー代謝の経時変化について検証しました。

その結果、エネルギー消費量・炭水化物酸化量・RQは入眠直後に急速に減少し、目覚めの直前に増加することが明らかとなりました。最後の食事(夕食)から長い時間が経過した、いわば一日のうちで最も飢餓状態にある明け方に代謝が活発になるという現象は、非常に興味深い知見です。脂 質酸化量は睡眠の前半で増加し、後半になるにつれて減少していました。さらに、エネルギー消費量および炭水化物酸化量には、以下のように睡眠ステージ間で有意な差が認められました。

◯エネルギー消費量

中途覚醒>レム睡眠>睡眠段階N1>睡眠段階N2>徐波睡眠

◯炭水化物酸化量

覚醒>中途覚醒>睡眠段階N1>レム睡眠>徐波睡眠>睡眠段階N2

以上の結果から、代謝量は入眠以降の時間経過および、各睡眠ステージの影響を受けて変化していることが明らかとなりました。

 

  • 今後の展開

睡眠と代謝との関連には、解明されていない部分が多く残されています。本研究では、時間分解能に優れた高性能なヒューマンカロリメーターを使用することで、エネルギー消費量のみならず、基質酸化量の睡眠中の経過について重要な知見を得ることができました。また、統計学的手法を用いることで、時間および睡眠段階の影響をそれぞれ調整し、睡眠時エネルギー代謝の実態を明らかにすることができました。今後さらに睡眠と代謝をつなぐメカニズムが解明されれば、睡眠へのアプローチにより、肥満や糖尿病などの内分泌疾患の予防や改善が見込まれる可能性があります。

  • 参考図

図1 ヒューマンカロリーメーターによるエネルギー代謝および脳波測定の様子

図2 睡眠の各ステージ

 

  • 用語解説

【用語解説】

(1)ヒューマンカロリメーター

ヒューマンカロリメーターは、部屋全体を丸ごと呼気採取用のフードにした測定装置で、被験者が中に滞在した状態で排気・給気側のガス濃度と流量を24時間測定する。呼気採取用のマスクやマウスピースを装着しないため、食事中や睡眠中のエネルギー代謝を測定することができる。本研究で用いたヒューマンカロリメーターは、時間分解能が高く、精度の高い測定が可能となっている。三大栄養素のうち、炭水化物と脂肪は最終的に二酸化炭素と水にまで、タンパク質は尿中窒素にまでそれぞれ分解されるので、呼吸分析からの酸素摂取量と二酸化炭素産生量、尿中窒素量から、多くの場合1%程度かそれ以下の誤差でエネルギー消費量が推定できる。

(2)睡眠の各ステージ

睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠がある。ノンレム睡眠には、入眠初期にみられる非常に浅い睡眠である睡眠段階N1、やや浅い睡眠である睡眠段階N2、さらに眠りが深くなると脳波上大きくゆっくりとした波(徐波)が出現する。このもっとも深い眠りを徐波睡眠という。徐波睡眠は睡眠前半に多くみられ、加齢によって減少する。レム睡眠は高速眼球運動と筋活動の抑制を特徴的とする睡眠段階で、周期的に出現する。レム睡眠は睡眠後半に多くみられ、レム睡眠期に夢を見ることが知られている。

(3)代謝の各パラメータ(エネルギー消費量・炭水化物酸化量・脂質酸化量・RQ)

ヒトの主なエネルギー源は炭水化物と脂質である。体の状態によって、エネルギー産生の基質として多く利用される栄養素は異なる。概念的には、優先順位の高い基質は炭水化物であるが、体内に炭水化物が不足すると脂質が基質として利用される。エネルギー消費量は炭水化物酸化量と脂質酸化量、尿中窒素から得られたタンパク質酸化量の合計で求められ、呼吸商(RQ)は二酸化炭素産生量(L/min)/酸素消費量(L/min)で算出できる。


掲載論文

【論文名】Energy metabolism differs between sleep stages and begins to increase prior to awakening.

【著者名】Kayaba M, Park I, Iwayama K, Seya Y, Ogata H, Yajima K, Satoh M, Tokuyama K.

【掲載誌】Metabolism 69: 14-23. doi: 10.1016/j.metabol.2016.12.016