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  • 2022.10.31

肉体労働による身体活動は健康上のリスクがある


身体活動は、健康結果を決定する最も重要な要因のひとつです。多くの筋骨格系の問題に対して、身体活動と運動がより良い健康への道であることは、よく知られ ています。身体活動は、強度、頻度、活動の種類によって異なりますが、幅広い身体的・心理的利益をもたらします。

ほとんどの国際的なガイドラインでは、成人は少なくとも150分/週の中強度の身体活動に参加することを推奨しています。

余暇身体活動(LTPA)とは、人が自由な時間に行う活動を表す言葉です。ジムでのトレーニングやボルダリング、登山やサイクリングなど屋内外でのアクテビティがそれにあたります。

職業性身体活動(OPA)とは、仕事に関連した活動で、通常、8時間の勤務シフトのように、人が働く時間枠の中で行われるものです。成人人口のかなりの割合で、仕事が 身体活動 の主な場となります。建設、清掃、ごみ収集、高齢者介護、農業、製造業など多くの職種の労働者は、1年の大半の間、勤務時間の大部分を身体的に活動しています。1日8時間活動する仕事なら、その人の健康状態は良好なはずだと思うかもしれません。しかし、エビデンスはどうなっているのでしょうか?

健康リスクと職業性身体活動

多くのシステマティックレビューや無作為化比較試験で、職業性身体活動は全死亡、心血管疾患(CVD)、過労傷害、一部の癌のリスクを高めると報告されています。

  • Holtermannらは、男性労働者において、高い職業性身体活動が全死亡のリスクを高めることを示しました。
  • McWilliamsらは、職業性身体活動が最も高い人において変形性膝関節症のリスクが大幅に上昇することを示しました。
  • いくつかの研究では、職業性身体活動後の疲労や筋骨格系の症状も報告されています。
  • Sobtiらは、男性における股関節の痛みやこわばりの1ヶ月有病率は19.9%、女性の50%が膝の痛みやこわばりを主張したと報告しています。

したがって、一般的に、職業性身体活動はいくつかのリスクを伴うことが研究により示唆されています。

職業性身体活動のリスクに影響を与える潜在的な要因にはどのようなものがあるのか?

職業的活動には、人の動作を介助をしたり、重いものを持ち上げたり、建設作業などが含まれます。骨格筋の激しい収縮は血圧を上昇させ、血圧の上昇は心血管疾患のリスクとなります。また、職業性身体活動の強度が高く、使いすぎによる傷害につながる可能性があることも影響する要因です。

機械的な負荷は、使いすぎによる職業傷害を引き起こす重要な要素として提案されています。重い負荷、道具の取り扱い、繰り返しの動作はすべて腱に影響を与え、腱鞘炎を引き起こす可能性があります。

したがって、図1で提案されているように、作業の合間に短い休憩を取ることは、オーバーユース損傷を減らすために不可欠です。

図1.職業的身体活動中の健康を守るための戦略。

職業性身体活動と余暇身体活動の強度の違いは、仕事の目標を達成するために一定レベルの生産性とペースを必要とする仕事上の要求によって説明することもできます。職業性身体活動には、重いものをあまり持ち上げず、家事や育児などの強度の低い仕事も含まれることがあります。

多くの人が何らかの身体活動・スポーツに参加することに消極的なのは、仕事の要求が高いことが原因と考えられます。仕事による疲労が残るために十分な身体活動をしたと考えている、あるいは疲れを感じる事によってフィットネス参加への気力の低下が生じるのかもしれません。しかし、高い労働要求は、有酸素運動能力、体力、柔軟性のポジティブな変化を得るための適切な強度、頻度、量に関する国際的なガイドラインの勧告と一致しません。

したがって、1日を通して作業強度を下げることは、図1で提案されているように、人が作業シフト中に経験する高い作業要求のバランスを作る上でプラスの影響を与える可能性があります。

さらに、職業性身体活動中は心拍数が上昇します。長期間の心拍数の上昇は心血管疾患の危険因子となり得ます。職業性身体活動では炎症レベルの上昇も確認されており、長期間にわたる持続的な炎症は心血管疾患や動脈硬化の強い危険因子となります。

運動トレーニングは、脂肪組織、骨格筋、内皮細胞、血液単核細胞によるサイトカイン産生の減少、内皮機能およびインスリン感受性の改善、そしておそらく抗酸化作用などの複数のメカニズムを通じて、安静時のCRPレベル(≒炎症)を低下させ、この炎症反応を鈍らせる可能性があります。

OPAのリスクを克服するためにはどうしたらよいのか

多くの職場では、その日のノルマを終わらせるために、多くの身体活動を必要とします。これは、多くの人が「自分は仕事で十分に活動している」ので、追加の余暇身体活動をする必要がないと思い込んでいる理由でもあります。図1は、職業性身体活動中に健康を守るための戦略です。

職業性身体活動のリスクにさらされる多くの人々に対する明確な解決策には、さらなる試験と研究によって、職業性身体活動のリスクに対する理解を深めることが必要である。

StakerらのBJSM誌に掲載された最近の論文は、適切な量と種類の身体活動を備えた職場を設計することで、これらの問題を是正することができると提唱しています。この論文に続き、GarciaらがBJSMに発表した議論では、社会経済的背景が低い人々は通常、自分でコントロールできない仕事に就いており、彼らが仕事の条件や仕事を完全に変える選択肢は限られている、と論じています。したがって、現在の職場では、仕事や仕事の条件を変えることは不可能に近く、また、仕事で体を酷使した後に有意義な余暇身体活動を実現するには、個人の体力に限界があるため、解決策が必要でしょう。

重要なことは、職業性身体活動によって引き起こされるリスクは、人々の社会経済的条件とも関連しているということです。社会経済的地位の低さ、精神衛生上の問題、家族の問題、地理的要因、社会的要因など、いくつかの要因が相互に作用して、職業性身体活動に見られる健康リスクに寄与していると思われます。

より健康的な職業性身体活動への移行

健康面でポジティブな影響をもたらすためには、職場の改善や職業性身体活動を補完する実践的な運動トレーニングプログラムの設計が必要です。

しかし、職業的身体活動のどの側面が健康に有益であり、健康に有害であるかについての理解は、まだ十分に進んでいません。例えば、回復のために安静するべきか、心血管系フィットネスを高めるために高強度インターバルトレーニングを行うべきか、余暇に筋力を高め骨粗鬆症を軽減するためにレジスタンス運動を行うべきか、などです。

肉体労働に携わる人達にとっても健康が重要であること、そして彼(彼女)らの仕事の恩恵を得ることで多くの人が快適な生活が可能になることを考えると、仕事により彼(彼女)らの健康が脅かされることが無いよう、仕事の設計において中心的に考慮されるべきであると考えます。

仕事による身体活動の量と性質が「ちょうどいい」仕事量をデザインすることで、健康状態の社会経済的な偏りを是正し、健康における社会経済的不公平を軽減することができるため、現場でのオペレーション、もしくは法整備などでの解決が望まれます。

現時点で作業者の方々に提案できる事としては、週3〜5回くらいで、ラジオ体操と早歩き(時速5kmくらい)30分行うのが、仕事による疲労の考慮と心肺機能の維持向上を考えると良いのではないかと思います。


参考文献

‘I’m active enough in my job.’ Why is occupational physical activity not enough?

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