胃の働き② -胃切除の影響-
私は胃や食道を切除した患者さんに運動指導をしています。
胃や食道の切除を行うと、前回のブログで書いた胃の機能が失われてしまいます。
それにより、サルコペニアを誘発し、体力が急激に落ちていきます。これを食い止め、改善させるのに運動と栄養が必要になるのです。
今回は胃を切除すると起こる影響について簡単に書いていきます。
まず、食道と胃の境界部に「括約筋」があります。
この括約筋は食べたものが逆流するのを防ぐ役割があります。
胃切除後にはこの働きが非常に弱くなり、逆流性食道炎の原因となります。
胃の出口にも括約筋があります。
出口側(幽門側)の胃切除を行った場合、こちらの括約筋の働きがなくなり、十二指腸内の胆汁や膵液が胃へ逆流します。
これは、逆流性食道炎や胃炎・胸やけ、お腹の不快感などを引き起こします。
胃は消化も担っている臓器なので、消化のスピードも落ち、結果的に栄養吸収も低下します。
胃から急激に小腸へ食物が送られますので、ダンピングという症状が出やすくなります。
ダンピング症状を簡単に説明すると、
食後すぐ:冷や汗、動悸、めまい、しびれ、腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満など
食後2~3時間:頭痛、倦怠感、発汗、めまいなど
食後すぐの症状の原因は、小腸に未消化の食物が急に大量に入ってくることで、それを消化するための反応が起こります。
体内を巡る血液が、お腹(小腸)を中心に全身の毛細血管に偏って集まるので、全身を巡る血液量が減ります。これにより脳の血流量が減ったり、血圧が下がったりして、めまいなどが起きます。
また、胃が無く(または小さく)なる為、食べる量が極端に減ります。
食事量が減る上に、栄養の吸収効率が低下するので、大きな体重減少が起きます。
もともと太っている人は痩せるのであまり問題にならない事もありますが、普通かそれ以下の体重の人の場合は、痩せすぎてサルコペニアになるリスクが高まります。
以上、胃切除の影響をまとめました。
逆流性食道炎や消化不良を予防する為に
- 少量ずつ食事を摂ることが必要になります。
- 少量では痩せに繋がってしまうので、1日4~6回などに分けて食事を摂る必要が出てきます。
- 筋肉が減らないよう栄養を筋肉に供給しやすくするため運動が必要になります。
工夫をすれば低体力に悩まず生活出来るようになるので、少しずつ適応させていきましょう。
参考文献
胃を切った人の後遺症