脳卒中に対する運動の効果
脳卒中は心臓血管系疾患の一つです。
脳卒中は心臓血管系、筋骨格系、神経系の障害をもたらし、非活動的な生活習慣、疲労の増大、体力や身体機能の大幅な低下と制限など、生活の質の低下を生みます。
これらを改善する為に、筋力トレーニングと有酸素性トレーニングが推奨されます。
また、トレーニングに取り組むことは、脳卒中の再発リスクや他の心臓血管系疾患の発症リスクを低減させる事に役立ちます。
運動が脳卒中既往者にもたらすメリット
有酸素性トレーニング
まず有酸素性トレーニングは、有酸素性能力、6分間歩行テストの距離、可動性機能を向上させ、最大下運動における血圧とエネルギー消費量を低下させて、心臓血管系疾患の総合的リスクを低減させることが示されている。
分かりやすく言うと「有酸素性運動(ウォーキングやジョギング、自転車等)を行うと、歩く早さが早くなったり、体力が長持ちしたり、強めの運動を行った時の血圧の上昇幅を抑えて、心臓血管系の疾患リスクを抑える事ができますよ。」という事です。
筋力トレーニング
レジスタンストレーニングもまた脳卒中既往者にとって安全であり、下肢の筋力、パワー、持久力、バランスと、上肢の筋力および機能を向上させるとともに、骨格筋の肥大を誘発する事が示されている。
これは「筋力トレーニングは脳卒中患者にとって安全であり、上半身も下半身も筋力や持久力、バランス能力が向上し、筋肉も大きくなりますよ。」という事です。
エクササイズプログラムの目標
医学的に安定した状態にある脳卒中既往者に対しては、有酸素トレーニングとレジスタンストレーニングを実施して、活動的な生活様式を発達・維持させ、脳卒中の再発や他の心臓血管系疾患の発症リスクを低下させる事を目指します。
一般的な目標
- 身体面で活動的な生活様式を育み、維持する
- 身体活動に関する現行のガイドラインを満たす
- 筋力と心肺機能を向上させる
- 脳卒中後に身体活動レベルを回復・向上させる手助けをする
- 歩行と歩行能力を向上させる
- 上肢の機能を向上させる
- 運動スキルや身の回りのことを行う能力を向上させる
- 脳卒中の再発と他の心臓血管系疾患の発症リスクを低下させる
エクササイズ方策
脳卒中既往者に対してエクササイズプログラムを実施する際は、各クライアントに応じた目標を設定します。
目標設定の際は、クライアントごとに好み、障害、運動プログラムへの参加制限、安全上の必要性を考慮する必要があります。
多くのクライアントはバランス感覚を失って、転倒リスクが増大しています。セッション中は目を離さず、安定性の高い運動姿勢(立位よりも座位や仰臥位)を選択する事により転倒を防いでいきます。
トレーナーが直接監視できない場合は、トレッドミルは実施させるべきではありません。
まとめ
脳卒中患者は多くの後遺症を有し、身体活動に関する多くの能力が制限されています。また、脳卒中の再発等のリスクも高いです。
しかし、有酸素性トレーニングもレジスタンストレーニングも、トレーナーの監視下で実施すれば脳卒中患者にとって安全であり、体力と身体機能を向上させるとともに、脳卒中の再発や他の心臓血管系疾患の発症リスクを低下させることが示されています。
医学的に安定した状態にあると医師が判断して運動を許可した患者さんは、医師・患者・トレーナーと協力することで、トレーニングプログラムを安全に実施し、その効果を得ることが出来るでしょう。