HMBは効果なし!お金の無駄
HMB(β-hydroxy-β-methylbutyrate)は、ここ数年で認知度が高まって各社メーカーがHMBサプリメントを揃えています。
サプリメントに興味を持ち始めたお客様からも「HMBって効果ありますか?」と聞かれることが多いので、一般の方にもかなり認知されてきたように感じます。ネット上で筋肉をつけるサプリメントとして紹介される記事が多いからでしょう。
HMBを導入しようか検討している方の参考になればと思います。
結論からいうと『HMBは効果が無いので飲まなくていい』です。
それではみていきましょう。
HMBの効果
国際スポーツ栄養学会の声明によると
- 運動によって誘発される骨格筋の損傷を減衰させる
- アスリートは運動後に摂取するのが効果的である
- 運動の2週間前から摂取するのが最も効果的であるようだ
- 骨格筋肥大、筋力、パワーを強化することが実証されている
- 高齢で座りっぱなしの集団において、除脂肪体重と機能性を増加させることが実証されている
- 脂肪量の減少がより大きくなる可能性がある
- 作用機序には、タンパク質分解およびタンパク質合成の抑制と増加がそれぞれ含まれる
- 若年高齢層ともに摂取は安全である
参考:International Society of Sports Nutrition Position Stand: beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB)
これだけみると、HMBはかなり効果が高そうなサプリメントですが、よく見ると「〜ようだ/〜可能性がある」といった曖昧な表現が多いです。
しかし、摂取することで安全性が脅かされることは無いので、『スポーツ栄養学』の立場からいえば”安全だし効果がある可能性があるなら摂っておくに越したことはないだろう”という考えがあるのは理解できます。
スポーツは肉体レベルの少しの差が勝ち負けに大きく関わってくるので、デメリット無いならとりあえず摂っとけの考えは納得です。
しかし、スポーツによる進学や就職とは縁のない一般の人たちにとって、お金を払ってまでHMBを飲むべきかは考えなければなりません。他のことにリソースを割いた方が良い場合もあります。
上記の声明は2013年の情報であるため、新しい情報にアップデートする必要があります。
HMBの研究
—ここは飛ばしてまとめに行っても良いです—
◆研究方法
メタ分析の対象となる研究は11件残った
非アスリートで実施された研究
18歳から45歳の成人
体重と体組成の解析:302名
筋力の解析:248名
試験期間は7.6±4.0週間で、トレーニング頻度は2~5日/週とさまざま
プラセボは、ほとんどの研究で炭水化物系(米粉、コーンスターチ、ポリデキストロースなど)を主成分としたものが選ばれていた
◆結果:体組成
HMBを補給した被験者の
体重増加量はHMB群1.12 kg ± 1.89 kg、プラセボ群0.78 kg ± 1.31 kg。
プラセボと実験の平均差は0.34 kg(95% CI 0.03, 0.66, p < 0.05)であった。
※後ほどバイアスリスクが高いとして1つの研究を除外すると、治療間の平均差は有意ではないことが判明した(0.20 kg(95% CI -0.13, 0.54, p = 0.20))
除脂肪体重はサプリメント群とプラセボ群の平均差は0.29kg(95%CI -0.01, 0.60, p = 0.06)であった。
HMBを補給したグループは平均1.57kg±1.75kg、プラセボグループは1.17kg±1.45kgのFFMを増加させた。
平均脂肪減少量は同等であった。HMB添加群は0.73kg±1.68kg、プラセボ群は0.47kg±1.43kgの減量となった。群間の平均差は0.10kg(95%CI -0.42, 0.23, p = 0.57)であった。
◆結果:筋力
筋トレとプラセボを摂取した被験者は、総1RM筋力を30.6kg±29.9kg増加させた。
HMBを摂取した被験者は、総1RM筋力を32.0kg±31.4kg増加させた。
総1RM筋力の群間平均差は1.11kg(95%CI -1.90, 4.12)であり、統計的に有意ではなかった(p=0.47)。
総1RM筋力は、ベンチプレスと下半身の1RMデータに基づくものであった。
ベンチプレス1RM筋力の増加
HMB群、平均9.5kg±4.6kgに相当するものであった。
プラセボ群:平均9.6kg±4.9kgの筋力増加を示しました。
ベンチプレス1RM筋力のグループ間の平均差は、統計的に有意ではなかった(0.52 kg(95% CI -1.72, 1.75, p = 0.41))。
最後に、下半身1RM筋力も、HMB補給による有意な影響はなかった。実験群とプラセボ群の下半身1RMの平均差は2.82 kg(95% CI: -2.37, 8.00 p = 0.29)であった。
HMBの摂取は身体組成または筋力の変化を増大させないことが示された
☆HMBは、レジスタンス運動による除脂肪体重および筋力の向上を目指すアスリートまたは非アスリートが摂取する価値のある栄養補助食品ではないことを示す、と結論づけるのが妥当であると思われる。
◆結論
この系統的レビューおよびメタ分析により、筋力トレーニング中のHMB補給は、総体重のわずかな増加をもたらすかもしれないが、除脂肪体重の増加または脂肪の減少の有意な増強にはつながらないことが示された。したがって、18〜45歳の筋力トレーニングによる身体組成を改善するためのサプリメントとして、HMBを処方する根拠はない。さらに、筋力に対する効果も有意ではなかった。
さらに、バイアスリスクと感度分析により、筋力トレーニング適応を最適化するための有意なHMB効果を報告するいくつかの研究は、一般的に再現性がないか、かなりのバイアスリスクを有することが示唆された。
我々の結果は、特に同様の結論に達した他のメタアナリシスに照らして見ると、HMBは効果的な筋量増加サプリメントではないことを示している。
まとめ
以上、2020年のメタアナリシスによる文献を確認したわけですが、HMBの摂取は筋肉量および筋力の増加に対する効果はないということで、乱暴にいえば”お金の無駄”であるといえます。
また、効果があるとしているいくつかの研究はHMBではなく他の要因によって筋肉量が増加した可能性があるということです。
HMBは1日に2.5〜3g摂取を推奨している記事が多いです。
販売されているものの値段をみてみると1ヶ月分で3,000円程度のものがほとんどです。
効果が無いものに対して毎月3,000円を支払うくらいなら、プロテインかEAAかBCAAを買った方が良いですね。
もしくは1ヶ月フィットネスクラブに通う資金に充てた方が効果は確実です。
ほとんどの人にとってはHMBは不要です。
ただ、100分の1秒を争うアスリートが一通りのサプリメントを揃えた上で、更に何かを取り入れる余裕がある場合においてはHMBも選択肢に入るでしょう。一般の方でいえば、全てのサプリメントを揃えてもなお、まだ何か取り入れたいというお金持ちも導入を検討するのはアリかもしれません。
世の中にあるサプリメントで、ここ数年で名前を聞くようになったものは研究が不十分なものがほとんどです。
それでも各社、これでもかと新しいものを投入してきます。サプリメントは儲かるのでね(小声
一般ユーザーがその良し悪しを判断するのは難しいので、聞いたことがないもの、調べてもよくわからないものに関しては購入を控えましょう。
参考文献
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パーソナルトレーナー 井上大輔
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