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  • 2022.08.07

性差による筋トレ効果の違い

男性と女性の身体つきを比べると、筋肉量は男性の方が多いことは誰がみても分かります。

これは、ホルモンの違いによるところが大きいとされています。女性は、男性ホルモン等、筋肉をつけたりするのに有利なホルモンがあまり分泌されないからです。または、生活習慣の違いもあると言われています。(スポーツへの参加や力仕事など)

一方で、条件を色々揃えて研究を(トレーニングをさせる)すると、筋肥大の効果は両者で同じともされています。

これらのことから、トレーニングによる効果は男女で違いがあるのか?についてはまだハッキリと結論が出ていません。この問題について、2020年の段階で一度まとめられたものがあるので、今回はそれを紹介したいと思います。

研究の大半は、トレーニングを受けていない人を対象に行われた。主な発見は、筋肥大と下半身筋力の効果の大きさが男女間で同様であったことである。しかし、上半身の筋力については、女性に有利な有意な効果があった。

筋力について

トレーニングによる筋力の向上は、神経学的適応と筋力的適応の組み合わせで起こります。筋力の初期の急速な向上は、主に神経学的適応から生じるようで、その後の向上は主に筋力的適応の結果とされています。

  • 10週間の集中的なRT後、体重で標準化すると、筋力が同程度であることを発見した。興味深いことに、上半身の筋力は、男性では17%であったのに対し、女性では29%増加したが、下半身の筋力の相対的な増加は同程度であった。
  • より最近のデータでは、男女とも上半身の筋力に同様の反応を示すことが示されている。
  • しかし、女性342名と男性243名を対象としたこれまでで最大の研究において、上肢筋力の相対的な変化には、女性に有利な有意差が認められた。

上半身の筋力は女性の方が向上の幅が大きいという結果がいくつかあります。

筋肉量について

骨格筋の量と分布に性差があることはよく知られています。女性は、しばしば、体重および除脂肪体重が少なく、体脂肪率が高く、筋繊維断面積が小さいです。

女性は、外側広筋と上腕二頭筋において、I型繊維(遅筋)の割合がより高いです。現在のところ、筋繊維の数を男女間で比較した研究はありませんが、古典的な研究では、男性では加齢とともに筋繊維数が減少することが示されています。

単繊維レベルでは、I型繊維とII型繊維(速筋)の筋断面積あたりの力と収縮速度は、男女を比較すると同程度です。

このように、骨格筋には男女間の差が比較的少ないため、筋肥大が同様であるという知見を説明するのに役立っている。

考察

女性は、男性に比べ、運動後のテストステロンの上昇を経験しません。このテストステロンの変化の差から、女性はレジスタンス運動による肥大の可能性が減弱しているのではないかと推測されていますが、今回の解析ではそのようなことは見られませんでした。

もう一つの違いは、男性には上半身の筋肉が多く、アンドロゲン(=男性ホルモンとそれに似たホルモン)受容体が多いです。このことが経時的な筋力向上に影響を与える可能性があることを示唆されています。

もう一つの潜在的な交絡因子は、月経周期です。卵胞期にトレーニングを完了した女性は、筋力向上が大きく、筋肉がより成長することを示唆する証拠もあります。

この研究での限界

第一に、分析に含まれる被験者のほとんどが未トレーニング者であるということ。より長いトレーニング期間や他の要因によって結果が変わる可能性があります。

さらに、運動科学の研究では基礎活動レベルが十分に記述されていないことが多いため、訓練を受けていない被験者は研究によって基礎活動レベルが異なる可能性があります。また、対象とした研究は、利用した運動の様式、期間、強度に関しても様々です。

しかし、上半身の筋力に関する我々の分析では、出版バイアスの証拠はなく、大きな影響を及ぼす単一の研究も見つかリませんでした。

もう一つの潜在的な限界は、検索用語やデータベースが使用されていないことによる研究の欠落があります。

また、男性被験者は上半身の動き(例:ベンチプレス)に慣れている可能性があり、その結果、女性の方が神経筋の適応が大きくなる可能性があります。(男性は慣れている分、伸び代が小さい可能性)

上半身の筋力向上については女性に有利な平均的効果があり、下半身の筋力向上については男女間の有意差はなかったが、この異質性の原因を理解するためにさらなる研究が必要です。

まとめ

このように沢山の研究をまとめた研究(システマティックレビュー&メタアナリシス)を見たわけですが、男性と女性は トレーニングに適応し、肥大と下半身の筋力については同程度の効果量を示しました。一方で、相対的な上半身の筋力については女性の方がより大きな効果量を示しました。

この差がなぜ上半身にのみ生じるのか、また、その差が神経、筋、運動学習によるものなのか、あるいは、対象とした研究の期間が短いことによる影響なのかを明らかにするために、さらなる研究が必要です。

現在の研究では、骨格筋レベルでは男女の差はほとんどないことが示されています。しかし、ホルモンの変動、日常的な身体活動、運動の回復が、今回の結果に関与している可能性があります。実際には、男性も女性もRTによって筋力とサイズをかなり増大させることができることを知っておくことが重要です。

今のところ、運動処方を男女間で変えるべきかどうかは、判断できない(大きく変える必要は無い)といえます。


参考文献

Sex Differences in Resistance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis

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女性の身体(生理学的特性)と運動の効果

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