2022.09.02

コンプレッションウェアの着用は血行動態を促進するのか？

『コンプレッションウェア』は様々なメーカーから販売されています。身につけた事がある方も多いのではないでしょうか？

“コンプレッション”には、圧縮・圧迫・加圧といった意味があります。したがって、コンプレッションウェアは適度に筋肉を圧迫する事により、筋肉をサポートし、様々な効果が得られるという謳い文句で販売されています。具体的には

運動機能の向上
筋肉・関節への負担軽減
血行促進による浮腫の改善
疲労軽減・回復促進

主な機能として、こういったものが挙げられています。他には、速乾性があったり、保温性があったりで、「着ているのが快適ですよ」といった感じです。

今回は、コンプレッションウェアが、血行動態反応を改善することにより、運動パフォーマンスと回復を高めるのかを、研究を通じて確認してみました。

研究の内容

コンプレッションウェアの着用は全身血行動態を改善するか？

我々は、安静時または身体的負荷の後のコンプレッションウェア着用が、健常者の心拍出量、一回拍出量（SV）、心拍数（HR）、収縮期血圧、拡張期血圧（DBP）、全身血管抵抗などの中枢血行動態反応に及ぼす影響を明らかにするために、系統的レビューとメタ解析を実施した。

方法：(a）原著論文、（b）無作為化対照試験、（c）中枢血行動態反応のモニタリング（安静時または身体的負荷：最大運動または立ち上がりチャレンジ後）、（d）健常者。これらを対象とした研究を検索した。
同定された786件の研究のうち、12件がシステマティックレビューとメタ解析に含まれた。

結果：コンプレッションウェア装着による中枢性血行動態の改善に関する効果量は，全体として大きく，SV，HRにおいて大きいことが示された。

サブグループ解析の結果、「身体的負荷の後」の効果量は、全体、SV、HR、DBPで大きくなっていることが確認された。

安静時の効果量は、SVで観察された有意な中程度の効果量を除けば、すべての中枢血行動態反応に有意な差はなかった。

結論：コンプレッションウェアを装着した健常者は、特に身体的負荷の後に、中枢の血行動態の反応が著しく改善される。コンプレッションウェアの顕著な効果は、SVの増加およびHRの減少に認められる。

「一回拍出量(SV)」とは、心臓が１回拍動するときに送り出す血液の量のことです。

この研究をみると、運動の後にコンプレッションウェアを着用すると、一回拍出量が増加して、心拍数が下がるということです。つまり、血液を多く送り出すことができるとのことで、回復が早くなる可能性があります。

安静時においては一回拍出量が多少増加する以外の効果はなかったようです。

現時点では、あくまでも可能性があるというだけで、ハッキリ効果がありまっせ！とは言えないです。現時点で効果があります！と言っている人がいたらちょっと怪しいです。（おそらく商品を買わせるための主張でしょう）

実際に、パフォーマンス向上や回復速度の向上に効果があるのかについての研究は十分ではないので、それが待たれるところです。

まとめ

コンプレッションウェアは、運動の後に着ると一回拍出量が増加して、心拍数が下がるので、もしかしたら回復が早くなるかもしれません。運動後、どのくらいの時間着用していればいいのかは分かりませんが、運動を終えたらすぐに着ておくと良いでしょう。運動直後から２時間くらいまでで良いと思います。（心拍数は大体1時間くらいで元に戻ります）

安静時には大した効果はないので、心拍数が正常に戻ったら楽な服に着替えて良いでしょう。ずっと圧着されていても鬱陶しいので。

例えば、一晩中着ているなどの長時間はやめておいた方が良いでしょう。メリットもないし、デメリットがわからないから（研究されていないから）です。

運動時にコンプレッションウェアを着て、運動後に汗をかいたから普通の服に着替える、というのはコンプレッションウェアの恩恵が十分ではない可能性があります。したがって運動後はしばらく着ておくと良いと思います。汗が冷えて風邪をひかないように気をつけましょう。

とりあえず、コンプレッションウェアを着ることのデメリットはそんなに無さそうなので、余裕があるなら着ておいても損はないのではないでしょうか。

今回見た研究は2022年8月にジャーナルに掲載されたもので、現時点では新しい情報・見解です。また新しく情報が更新されたらアップデートしたいと思います。

参考文献

Wearing Compression Garment Enhances Central Hemodynamics? A Systematic Review and Meta-Analysis