トレーニング種目を変化させると、筋肥大と筋力向上は促進されるか?
漸進的過負荷とバリエーションは、レジスタンストレーニング(=筋力トレーニング)において継続的な筋適応を促進するための2つの主要な原則です。
漸進的過負荷は、身体にかかるストレスが徐々に増加することを特徴とし、一方、バリエーションは、筋トレプログラムを通じて1つ以上の変数(例:強度、量、運動)を系統的に変化させることを意味します。
異なるエクササイズを行うこと(すなわち、エクササイズのバリエーション)は、筋群内の複数の部位(すなわち、異なる筋頭部)、あるいは単一の筋内を標的とする戦略として提案されており、したがって、筋成長を最適化できる可能性があります。さらに、運動バリエーションは、活動筋への神経駆動を最適化する能力を提供し、それによって筋力増加を最大化することができるかもしれません。
- エクササイズのバリエーションは
- 異なる関節数(単関節-多関節)
- 四肢(片側-両側)を伴うエクササイズ
- 異なる運動連鎖(オープン-クローズ)
- 同じ動作を異なる器具で行う(マシン対フリーウェイト、バーベル対ダンベルなど)
- などいくつかの戦略によって実現できます。
しかし、トレーニングの反応を高める戦略として運動のバリエーションがよく用いられるにもかかわらず、それが筋肥大や筋力増加に貢献するのかはほとんど研究されておらず、トレーニングによって引き起こされる筋適応に対する真の効果について結論を出すことは困難になっています。
そこで今回は、運動バリエーションが筋肥大と筋力に及ぼす影響を系統的に検討し、処方のための実用的な結論を導き出すとともに、今後の研究への示唆を与えることを目的とした研究を確認してみたいと思います。
目的
エクササイズのバリエーションが筋肥大と筋力に及ぼす影響について検討すること。
方法
PubMed/MEDLINE、Scopus、Web of Scienceの各データベースを用いて文献の検索を行った。
結果
- 8件の研究が組み入れ基準に合致することが確認された。研究の合計標本数はN = 241で、すべて若い男性で構成されていた。
- 含まれる研究の方法論の質は、Physiotherapy Evidence Database Scaleに基づき、「良い」「優れている」とされた。
- 利用可能な研究は、様々な運動選択が筋肥大と筋力向上に影響を与えることを示す。
結論
- ある程度の系統的なバリエーションは、局所的な肥大適応を高め、動的な筋力を最大化する。
- 一方、過度のランダムなバリエーションは筋力向上を損なう可能性がある。
- 逆に、複数の運動を組み合わせて過剰な刺激を与えること(すなわち、変化の頻度が高いこと)は、筋肉の適応を阻害する可能性がある。
このテーマに関する研究は今日まで比較的少なく、実施された研究は、比較的小さなサンプルと異種デザインを採用しています。したがって、より多くの研究を実施し、メタ分析手法によって効果を定量化するのに十分なデータが存在するようにする必要があります。また、このテーマに関する研究は、もっぱら若い男性を対象として実施されていることから、女性や他の年齢層における運動バリエーションの効果を調査する必要があります。
他にもいくつか挙げられますが、こうしたことから証拠に基づく結論を導き出そうとする場合、いくつかの限界があることを認識する必要があります。
ただ、今回得られた知見により、運動のバリエーションはコロコロ変えない方が良いのではないか?ということ考えられます。
まとめ
トレーニング種目をコロコロ変えて提供するパーソナルトレーナーは過去によく見かけました。トレーナー側としてこうするメリットは、“自分の引き出しが多いように見せることで腕のあるトレーナーだと思わせること”が挙げらます。また、お客様は何も分からないからトレーナーの言っていることが正義になるので、「この人はいろいろ提案してくれて良いトレーナーだ」と感じるようになります。
しかし、今回の研究でも示唆されたように、トレーニング科学の観点からそれは効果的では無い可能性があります。
トレーニングに対するクライアントの筋肉の適応もそうですが、種目をコロコロ変えられると運動技能(フォームの的確さなど)が十分に身につかない可能性があります。これは怪我のリスク回避の観点からも良くないと思われます。
ある一定の期間(例えば8セッション等)は同じトレーニング種目をこなしてフォームの熟練度を上げていきながら、取扱い重量も段階的に上げていき、慣れてきたら新しい種目を全て入れ替えるではなく、1〜2種目追加するといったように、クライアントのトレーニング技能が少しずつ前進するようなプログラムで、十分な恩恵が得られると考えられます。
これからトレーニングに取り組む人も、今トレーニングに取り組んでいる人も、色んな種目を日替わりでやるよりは、一定期間やり込んで、その種目の熟練度を上げていきましょう。日に日に挑戦する重量やセット数・回数を増加させればそれだけで十分新鮮さは感じられますよ。
参考文献
関連
- 身体活動および座りがちな行動に関するWHO2020年ガイドライン
- 10秒間の片脚立ちが出来ないと将来危ない
- 効率的な有酸素運動および筋力トレーニングと死亡率
- 筋トレには病気の死亡率を下げる効果がある
- 筋トレと有酸素運動の併用は健康上さらなる利益を得る事が出来る
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パーソナルトレーナー 井上大輔
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