【筋トレ】ダンベルとバーベルの違い。使い分けの考え方。
筋トレをする人からの質問でよくあるのが、ダンベルとバーベルの違いについてです。
非常に良い疑問だと思います。
このテーマについては機になる人も多いと思いますので、今回はこちらに簡潔に答えてきたいと思います。
ダンベルとバーベルの比較研究
トレーニング経験者、27人の男性(23.5±3.8歳)を、スミスマシンベンチプレス、バーベルベンチプレス、(c)ダンベルベンチプレスの3つのグループにランダムに割り当てました。
(10回の繰り返しを8セット行い、セットの間に2分間の休憩を行い、
筋肉の厚さ(≒筋肉量)、ピークトルク(≒筋力)、痛みを測定。)
その結果、グループ間で、大胸筋または上腕三頭筋のピークトルク・筋肉の厚さに違いはありませんでした。
大胸筋の痛みもグループ間で違いはありませんでした。
しかし、スミスマシンとバーベルグループは、運動後72時間で上腕三頭筋の痛みから回復しました。
ダンベルグループは運動後に上腕三頭筋の痛みを示しませんでした。
ダンベルグループによって持ち上げられた負荷は、バーベルグループ(74.5 ± 12.5 kg、p = 0.042)より18.6%低く、スミスマシングループ(72.4 ± 9.7 kg、p = 0.05)より15.2%低かったです。
結論として、トレーニング経験者男性は、スミスマシン、バーベル、ダンベルの胸トレの後、同様の大胸筋の回復をしました。
しかし、上腕三頭筋の筋肉痛は、スミスマシン/バーベルでのプレスをした後は、ダンベルに比べて回復するのに時間がかかります。
筋肉の厚さとピークトルクに違いはありませんが、ダンベルは、重いものを持ち上げにくいようです。
サーターバッケン et al. (20)は、水平バーベルチェストプレスの筋力(1RM)がスミスマシンよりも3%高く、ダンベルチェストプレスよりも17%高いことを観察しました。
さらに、ダンベルチェストプレスの筋力はスミスマシンよりも14%低かったです。
さらに、他の研究でも、チェストプレスの1RMは、最も高いのがバーベル(106.4 ± 15.5 kg)、続いてスミスマシン(103.6 ± 14.8 kg)、そしてダンベル(89.5 ± 13.7 kg)となっています。
これらのことから、重いものを持ち上げるにはダンベルよりもバーベルやマシンの方が適しているため、筋力を高めるにはダンベルよりバーベルやマシンを使用した方が良いと考えられます。
筋肉の損傷は、ダンベルの方が重量が小さいぶん少ないようですが、筋肉の厚みなどに違いが観察されていないので、これが筋肥大に関連してくるのかはなんとも言えません。
ここについてはさらなる研究が必要と考えられます。
マシンとフリーウエイトの差
ダンベルとバーベルを比較した研究が少ないので、ここではマシンとフリーウエイトの差について確認し、研究の少なさを埋める材料を加えていきます。
2023年8月の研究で、最大筋力、キン肥大、およびジャンプパフォーマンスに対するフリーウェイトとマシンの筋力トレーニングの効果がメタ分析されました。
(ここでのフリーウエイトは主にバーベル、13件、1016人の参加者)
対象研究は、18から60歳、男性77%、フリーウェイトとマシンを用いた筋力トレーニングを最低6週間直接比較した研究が対象でした。
その結果、
フリーウェイトテストにおける筋力は、マシントレーニングよりもフリーウェイトトレーニングの方が有意に増加しました。
マシンベースのテストにおける筋力は、フリーウェイトよりもマシントレーニングの方が増加する傾向がありました。
筋力については、動作特異的であると言えます。
わかりやすく言えば、フリーならフリーが強くなるし、マシンならマシンが強くなるということです。
しかし、動的筋力、等尺性筋力、垂直跳び、筋肥大については、直接比較では方法に差は認められませんでした。
これらのことから、ダンベルにおいても同様の現象が起こると考えられます。
すなわちダンベルトレーニングに注力すれば、ダンベルでの筋力が向上するということです。
ただ、ダンベルとバーベルの比較研究で見たように、マシンとフリーウエイトは扱う負荷にそこまで差がないので、動的筋力に差はありませんが、
バーベルとダンベルでは扱う負荷に大きな差があるので、動的筋力に差が開くことは十分に考えられます。
筋肥大については、ダンベルでもトレーニング総量がバーベルやマシンと同じであれば同等と考えられます。
種目選択の考え方
以上の結果を踏まえて、どのようにトレーニング種目を選択するかを考えます。
例えば、ボディメイクをしている人や健康のための筋トレをしている人は、個人的な好みに基づいてフリーかマシンかを選択すれば良いことを示唆しています。
ただ、筋肥大においては総重量がカギになるので、
ダンベルを選択する場合は、総重量をバーベルと等しくするためにセット数や回数を増やす必要があります。
特別な事情でダンベルにならざるを得ない時は、セット数など増やす工夫をすれば肥大は問題ないかと思います。
パワーリフティングやウェイトリフティングなど、特定の運動技能を必要とするスポーツのアスリートは、トレーニングにおいてそれらの運動を優先するべきです。
日常生活やスポーツにおいては、片側で出力するケースも両側で出力するケースも両方あるので、バーベル・ダンベル共に十分にトレーニングするのが良いです。
可動域の広さや片手エクササイズの実施もダンベルの特徴なので、大きな可動域の獲得、大きな可動域での出力、左右非対称の動きが求められるスポーツ(殆どのスポーツが該当)にも
ダンベルは適していると考えられます。
ベンチ、デッド、スクワットの最大挙上重量を伸ばしたい、という人は、ダンベルトレーニングよりも、バーベルでのこれらの種目の比率を高める方がよいでしょう。
様々な動きでの最大筋力は、強い動きをするための土台でもあるので、そう考えると、バーベル7割、ダンベル3割くらいの配分をベースに、目的に応じてアレンジすると良いと思います。
まとめ
総合すると、バーベルをプログラムの軸に据え、大きな筋力向上と筋肥大の獲得を狙い、
補完する形でダンベルを組み込むと良いでしょう。
細かい種目や強度・量の選択は、目的やその人の体力レベルによって変動するので、ここでは語れませんが、
ダンベル・バーベルの比率は、目的やトレーニングに確保できる時間に応じて柔軟に変えるとよいでしょう。
この研究の結果、筋力を高めるにはダンベルよりバーベルやマシンを使用した方が良いと考えられます。
しかし、バーベルは左右対称の動きになるので、左右非対称の動きが多い日常やスポーツにおいては、ダンベルでのトレーニングも重視するべきと言えるでしょう。
傷害発生の観点から考えると、初心者はマシンから入るのが良いでしょう。
ジャンプ力を上げるなど特定の能力を伸ばす場合は、フリーウエイトが望ましい場合があります。
特定の部位を肥大させることが目的なら、マシンとフリーを組み合わせ、最後の追い込みでピンポイントに刺激するのにダンベルが使えます。
そのほか、様々な動きを補完する形でダンベルは役に立ちます。
この記事が、ダンベル、バーベルを選ぶ際の参考になれば幸いです。
関連
参考文献
フリーウェイト対マシンベースの筋力トレーニングが最大強度、肥大、ジャンプパフォーマンスに及ぼす影響 – 体系的なレビューとメタアナリシス
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10426227/
フリーウェイトとマシンによるトレーニングが筋肉量、筋力、遊離テストステロン、遊離コルチゾールレベルに及ぼす影響
さまざまな安定性要件を持つレジスタンストレーニング演習:タスクの特異性の時間経過
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27671996/
安定性の要件が異なる胸当てエクササイズは、トレーニングを受けた男性で同様の筋肉損傷回復をもたらす
異なる安定性要件を持つ3つの胸当てエクササイズの筋肉活動と1RM強度の比較
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21225489/
自由度が増す3つの胸エクササイズの領域
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22158100/
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