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  • 2024.03.26

強さの最大化:筋力獲得の刺激


伝統的な筋力トレーニングを、高重量で実施することで、日常生活、仕事、スポーツ、レクレーションなど、様々なシーンでのパフォーマンスを向上させます。

しかし、例えば、自宅での運動、怪我をしている、高齢で関節状態に不安があるなどの理由で、高重量での筋トレ実施が難しい場合もあります。

筋肉に高負荷を与えた結果、自身の筋力が向上しますが、高強度での実施が難しい場合、どう対応すれば良いか分からない人も多いでしょう。

今回は、高強度でのトレーニングを実行できない時、筋力を増加または維持するための実用的な方法を提案します。

筋力を向上させる刺激

筋力が向上する理由として、高重量の負荷でトレーニングをするのはよく知られていますが、そこからもう一歩踏み込んでみましょう。

これを知ることで、トレーニングへの応用アイデアが生まれるようになります。

最大限のイメージトレーニング

筋肉を動かす信号、あるいは意志的な行動は、脳、特に運動野から発信されます。

例えば、実際の筋収縮や物理的な筋収縮がない状態で、イメージによる力強い筋収縮を行うと、時間の経過とともに筋力が効果的に向上します。

これらの向上は生理学的変化(伝達指令を増加させる中枢神経の適応)を伴っており、筋力向上が単に心理的要因や動機づけ要因の結果ではないことを示しています。

したがって、筋トレ実施に伴うイメージトレーニングの強さ・深さ自体が、筋力向上の刺激となります。

また、比較的力の弱いキン収縮の場合、トレーニング中のイメージ努力が大きいと、外力出力や筋収縮時間が同じであるにもかかわらず、時間の経過とともに筋力増加が大きくなります。

これらの知見から、イメージトレーニングは筋力向上を独立的かつ漸進的に刺激することがわかります。

最大神経活性化による力強い収縮

最大限の精神的努力がキンの最大限の神経活性化につながり、必然的に力強い筋収縮が生じます。

つまり、力強いキン収縮を要求された後に筋力が向上します。

この時、脳から筋肉への瞬間的な放電率が高くなることと、二重放電(非常に急速に連続して2回放電する単位)の発生率が高くなることに起因しています。

また、トレーニング中に繰り返し行われる収縮に適応し、力を発生させる収縮性タンパク質の数の増加など、筋サイズの増加にさらに寄与します。

これらのエビデンスを総合すると、力強い筋収縮は、独立的かつ漸進的に筋力向上を促進することがわかります。

コンセントリック-エキセントリック筋活動

外部負荷を持ち上げる”コンセントリック収縮”と、持ち上げたものを下す”エキセントリック収縮”があります。

この上げ下ろしをセットで行うことは、コンセントリック収縮だけを行うよりも筋力の向上が大きくなります。

つまりトレーニングでは、下げる局面も大事に行ったほうが良いということです。

しかし、例えば、歩行のような低強度活動もコンセントリック-エキセントリック動作を伴いますが、筋力向上を強力に刺激することはありません。

あくまでも、特に強い刺激に対して、コンセントリック-エキセントリック動作を大事にしましょうということです。

全可動域でのトレーニング

筋力向上は、トレーニング中に使用される可動域に特異的である傾向があります。

完全な可動域を使用したトレーニングは、ほとんどの状況において筋力向上を最大化します。

これも当然ではありますが、力強いキン収縮で全可動域でトレーニングした場合、筋力が効果的に向上します。

筋代謝ストレスの誘発

筋収縮は代謝反応を増加させ、繰り返し行われると代謝ストレスにつながります。

少なくとも196種類の代謝物が、急性運動後に有意に濃度を変化させます。

代謝ストレスが独立した刺激(筋収縮を伴わずに筋力増加を刺激する)なのか、

代謝ストレスが代わりに相乗効果(筋収縮を伴う場合にのみ筋力増加を刺激する)を発揮するのかを判断することは困難です。

確実に言えることは、代謝ストレスも無視できない要因であることから、1セットよりも複数セットを行うことが、筋力向上を最大化させることに役立つでしょう。

トレーニングプログラム

強度に関しては、トレーニング負荷が高いほどその後の筋力向上が大きくなるという用量反応関係があります。

1セットあたりの反復回数に関しては一般に、1セットあたり約1~5回の反復が可能な重い負荷の方が、時間の経過とともに筋力の向上が最大になります。

セット数に関しては、1エクササイズあたり2~3セットは1セットよりも大きな筋力向上を促します。

一方で、さらに4~6セットまで量を増やしても、追加的な効果はほとんどない可能性があります。

全体として、長期的な筋力向上を最大化するためのトレーニングの最適量として、比較的重い負荷と1エクササイズあたり約2~3セットを使用することを一般的に支持しています。

疲労した状態で各セットの運動を開始すると、時間の経過とともに筋力の向上が減少することを示しています。

  • 第1に、セット間の休息間隔が短い(2分以下)状態でトレーニングを行うと、休息間隔が長い(2分以上)状態に比べて、少なくとも十分なトレーニングを受けている人では、筋力向上が減少します。
  • 第2に、運動セッションの最後に運動を行うと(最初に行うのとは対照的に)、長期トレーニング後の筋力向上が減少します。
  • 第3に、筋トレの直前に持久力運動を行うと、長期的な筋力向上が減少します。

これらのエビデンスを総合すると、筋力トレーニングの各セットを比較的「フレッシュ」な状態(疲労の少ない状態)で開始することが、長期的な筋力向上を最大化するのに役立つことがわかります。

トレーニングからの回復とその後の適応が筋力を高めます。

言い換えれば、筋トレは疲労と筋損傷を引き起こし、短期的には筋力を低下させます。

しかし、十分な回復が与えられれば、適応反応として「超回復」(以前の能力を超えた段階的なパフォーマンスの向上)が生じます。

このような小さな漸進的な改善の繰り返しが、時間の経過とともに、測定可能で実際的に意味のある筋力増加に繋がります。

まとめると、筋トレはセッションの最初(フレッシュな状態)に開始し、高重量で3セット、休息時間は3分程度設ける。

トレーニング日とトレーニング日の間に、ナカ1から2日の休息期間を設ける。

これらが基本のプログラムになります。

特別なシナリオへの応用

従来の重いREが実施できない特別なシーン、例えば、自宅での運動、遠征、リハビリテーションなどにおいて、

筋力を増加または維持するための3つの重要な応用例紹介します。

(a)無負荷介入、(b)低負荷介入、(c)補助的活動、です。

(a)無負荷介入

第一に、運動イメージは筋力に対して非常に強力な効果をもたらします。

前半にイメージトレーニングについての効果を述べたとおりです。

例えば、自宅での運動では、最近のコロナウイルス流行のためにトレーニング施設にアクセスできないプロスポーツ選手において、イメージトレーニングが最長6週間まで筋力を完全に維持する(実際にはわずかに改善する)ことが初期のエビデンスによって示されています。

本当にトレーニングができない環境にいる時、怪我をしていて動かせない時、筋力トレーニングや、取り組んでいるスポーツのイメージを繰り返すことで、パフォーマンスを比較的維持させることが可能になります。

同様に、対側肢トレーニングなど、中枢の適応を利用して損傷肢の筋力を維持する方法もあります。

つまり、損傷していない側の片側トレーニングは、「交差教育」効果により損傷側の筋力も維持します。

(b)低負荷介入

器具が限られている場合、最大限の精神的努力(すなわち、低負荷だが高負荷の運動)で運動することで、適切な外部負荷の不足を部分的に補うことができます。

第一に、低負荷高反復トレーニングは筋力を増加させることができます。

これは、傷害を受けた組織にかかる高ストレスを回避することに役立ちます。

非常に軽い負荷(例えば、個人の1RM筋力の20%程度)であっても、反復回数が高い努力レベルまで進む限り、筋力を増加させることができます。

(ただし、重い負荷を高い努力レベルまで持ち上げるよりも筋力増加が小さくなることは理解しておく)

第2に、低負荷高速度トレーニングは筋力を増加させることができ、これは機能的パフォーマンスにとって重要な適応である筋パワーの発達にも役立ちます。

低負荷(1RMの約30~50%)で高速トレーニングを実施することで、アスリートや身体的制限のある地域在住の高齢者において、従来の高負荷の筋力トレーニングと同様の筋力向上が得られることが示されています。

これらの様々な低負荷介入は、無負荷介入よりも筋力の増加や維持に効果的です。

(c)補助的活動

低負荷トレーニングに血流制限(加圧)を加えることは、重負荷が実施できない特殊なシナリオ(例えば、リハビリテーション中)にも応用できます。

全体として、無負荷、低負荷、および補助的な活動は、従来の高重量トレーニングが不可能な場合に筋力を増加または維持するための選択肢となります。

まとめ

筋力向上を最大化するために、可能な限り伝統的な高重量トレーニングを実施する必要があります。(1〜5RM、3セット、最大可動域、休憩2分、中1〜2日)

一方で、出張・遠征や、自宅トレーニング、怪我など、器材が限られているまたは満足に動作ができないシーンにおいて、

イメージトレーニング、対側肢トレーニング、低負荷高反復トレーニング、低負荷高速度トレーニング、血流制限など

これらのトレーニングは筋力向上を引き出してくれます。

また、伝統的なトレーニングにマンネリを感じている人も、これらのトレーニングをたまに挟んであげることで、筋力向上を狙いつつ精神的なリフレッシュにもなります。


参考文献

Maximizing Strength: The Stimuli and Mediators of Strength Gains and Their Application to Training and Rehabilitation

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