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  • 2024.03.11

児童・青少年におけるスポーツ参加と学業成績


運動は、骨格筋の発達や運動能力だけでなく、脳細胞を増加させたり、細胞同士の繋がりを強化して記憶を引き出せる様にしたりと、脳機能にも良いということが分かっています。

一方で、子どもたちが外で遊ぶ場所が無くなってきている、ゲームばかりしているといったような記事も度々見かけますし、部活動に教員が参加することで過重労働に拍車がかかり、部活動の存在意義自体も問われています。

確かに、近所の公園や学校のグラウンドを見渡すと、設置されている遊具が少ないと感じます。

遊具の設置や部活動の顧問問題に関しては、賛否様々な理由がありますが、先ほど述べた、運動は脳の発達の機会でもあることから、その機会を奪っているのではないか?といったことを考えることがあります。

というわけで、児童・青少年における運動と学業成績について調べてみました。

身体活動と学業成績

身体活動が児童や青少年の学業成績にプラスの影響を与えるという証拠があります。

最近のシステマティックレビューでは、12件の研究のうち6件は身体活動が学業成績にプラスの影響を及ぼすと結論づけ、

他の6件はプラスの影響はないという結論が混在しています。

構造的な変化という点では、身体活動は、認知処理に重要な脳の領域である脳梁の白質を改善することができます。

また、身体活動は、実行プロセス、認知、注意、情報処理をつかさどる前頭葉にも変化をもたらします。

このような脳の変化と認知機能の向上は、身体活動によって学業成績が向上することを説明できるでしょう。

最終的な結論は出ていませんが、マイナスはなく、プラスの影響の可能性が高いですし、脳だけではなく肉体的にもポジティブな影響がありますから、

身体活動の機会は積極的に与えた方が良いといえます。

スポーツと学業成績

スポーツは身体活動の一種で、組織を通じて正式に定められた競技とルールの要素を持つものと定義され、個人またはチームとして参加することができます。

スポーツは、身体活動から得られる効果以上に、さらなる効果をもたらす可能性があります。

最近の実験的研究では、認知的関与の低い中程度から強度の身体活動(例えばランニング)と比較して、スポーツはさらなる認知的利益をもたらすことが判明しています(7,8)。

このような有益性は、スポーツ参加中、ダイナミックで変化する環境の中で、中程度から強度の身体活動や技能を行うことにより、認知的負荷が増加することによると考えられます。

また、スポーツの種類やスポーツに含まれるスキルが、認知利益に影響を与える可能性もあります。

スポーツには、オープンスキル(テニスやバスケットボールなど、ダイナミックで変化する環境で行うスキル)とクローズドスキル(水泳やサイクリングなど、予測可能な安定した環境で行うスキル)があります。

オープンスキルは認知的要求が高く、視空間能力、情報処理速度、マルチタスクの柔軟性、ワーキングメモリー、抑制性制御などの認知機能の練習になります。

オープンスキルを用いたスポーツは、クローズドスキルを用いたスポーツと比較して、認知機能の改善に効果的であると結論付けられています(10,11)。

したがって、スポーツは、より一般的な身体活動と比較して、さらなる認知的利益(学業成績など)をもたらす可能性があります(12)。

最新の研究

こちらの研究で、全体として、スポーツは学業成績にわずかながらプラスの効果をもたらしました。

就学時間中のスポーツ参加は学業成績と小から中程度の正の関連を示しましたが、就学時間外のスポーツ参加は学業成績と小程度の正の関連にとどまりました。

学校から報告された成績を用いた研究では、スポーツと学校の成績との間にわずかな正の関連が報告されました。

スポーツ参加は、理科の成績と強い正の関連を示しました。

数学の成績および全体の成績とは小さな正の関連を示しました。

英語および国語とは小さな正の関連を示しましたが有意ではありませんでした。

学校でのスポーツ参加は学業成績に最も有益でした。

学校でのスポーツは教科の授業の直前に行われる可能性が高いため、子どもの注意力や課題に取り組む時間に即効性があり、教科の学習や成績が向上する可能性があります。

学校を拠点としたスポーツ介入は、ほぼすべての児童・青少年の身体活動、ひいては学業成績に影響を与える費用対効果の高い戦略となりうることを示唆しています。

スポーツの量は、スポーツ参加と学業成績の関連に影響を与えました。

週1~2時間スポーツをした子どもは、スポーツをしなかった子どもや週3時間以上スポーツをした子どもに比べ、学業成績が高かったです。

これは、スポーツ参加と学業成績の間に逆U字型の関連が存在する可能性を示唆しています。

(すなわち、身体的疲労が認知力や学業成績の低下につながる可能性がある)

現実的には、週1~2時間スポーツをする子どもは、レクリエーション、睡眠、宿題、勉強の時間がありますが、

スポーツをする時間が長い子どもはそれらの時間がないということも考えられます。

あるいは、学力が低い、あるいは低いと感じている子どもほど、スポーツに参加する時間が長いという可能性もあります。

国語・英語の成績よりも、理数系の成績に対してより有益だったのは、

スポーツで培われた複雑な問題解決スキルは、問題解決がより一般的に使われる数学や理科に、より効果的である可能性があります。

まとめ

この研究の結果から、学校でのスポーツ参加を促進することで、学業成績が向上するだけでなく、

身体活動促進を通じて健康と幸福の結果を促進する新たな機会を提供できる可能性が示唆されました。

スポーツの強度なのか(ゴルフのような低強度スポーツか、サッカーのような高強度スポーツか)、

スポーツの種類(個人かチームか)なのか、

はたまた、スポーツ内のスキルの種類(オープンかクローズか)なのか、

どの要素がスポーツ参加と学業成績により強く関連しているのかはまだ分かっていません。

スポーツと学業についての研究は、まだ始まったばかりなので今後の研究を待ちたいと思います。

しかし、学校という環境下で、適度な量のスポーツに参加することで、学齢期の子どもの学力、特に数学と理科の成績が向上する可能性があるようです。

スポーツを含めた適度な身体活動は、子どもや青少年の脳機能・学業にとってプラスに作用するのは明白なので、

我々大人たちは出来るだけその機会を与えてあげたいですね。


参考文献

Sport Participation and Academic Performance in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-analysis

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