椎間板ヘルニアと陸上・水中での体幹トレーニング
椎間板ヘルニアの有病率は人口の1%程度と言われています。日本の人口は1億2000万人ですから、単純計算で120万人くらいは居るのでは無いかと思われます。
椎間板ヘルニアの患者さんの年齢は50歳代にピークがあり、男性は女性の約2倍の頻度でみられるとされています。
腰椎椎間板ヘルニアの約80-85%は自然経過で軽快するとされ、いわゆる保存的療法と呼ばれる治療法を行うことを原則とします。保存的療法としては、安静・腰椎コルセットの装着・腰椎牽引療法・腰部のマッサージなどの理学的療法などがあります。保存的療法を2-3ヶ月行っても効果のない場合や、痛みの発作が繰り返す場合、痛みが激烈な場合、下肢の運動麻痺が著名な場合などには、手術的治療法が行われます。
今回は保存療法のひとつ、体幹トレーニングの効果を確認したいと思います。
腰椎ヘルニアの陸上・水中での体幹トレーニング研究
腰椎椎間板ヘルニア患者における水中と陸上での体幹安定化エクササイズの比較:パイロットスタディ
目的:腰椎椎間板ヘルニア(LDH)患者において、2つの異なる環境で行われる体幹トレーニングプログラムの効果を判定し、比較すること。
方法:LDHと診断され、少なくとも3ヶ月間痛みや機能障害を感じている患者31名を、陸上での運動と水中での特異的療法としてランダムに2群に分けた。また、年齢・性別をマッチさせた健常者15名を健常対照者として募集した。両群とも8週間(3回/週)の体幹安定化運動プログラムを実施した。主要アウトカムは,疼痛,体幹筋静的持久力,知覚障害レベルであった.副次的アウトカムは、健康関連QOLであった。
結果:ベースライン時の体幹筋の静的持久力のレベルは、対照群に比べ患者群で低いことがわかった(p<0.05)。両治療群とも8週間の介入後、すべてのアウトカムにおいて有意な改善を示した(p < 0.05)。2つの治療群を比較した場合、介入後の変化量に差は認められなかった(p>0.05)。治療後、LDH患者の体幹筋の静的持久力は、対照群と同程度となった(p > 0.05)。
結論:これらの結果から、陸上または水中での体幹トレーニングは、LDH患者に有効であり、環境による差はないことがわかった。
水中または陸上で行う8週間の体幹トレーニングプログラムは、LDH患者の疼痛レベルを低下させ、機能状態を改善させる。どちらのプログラムも健康関連のQOLと体幹筋の静的持久力の向上に有益であると思われます。
体幹エクササイズは水中でも実施可能であり、陸上でも水中でも差は見出せず、どちらも腰椎椎間板ヘルニアに対して効果的であることがわかりました。
体幹トレーニングは、プランクやサイドプランクなどの種目が該当します。
水中でエクササイズを行うメリットは、陸上で腰の痛みが激しい場合、水中では浮力により陸上よりは痛みが感じにくくなる可能性がある点です。
デメリットは水着に着替えて実施という手間がかかる点です。基本は陸上でのトレーニングを行い、痛みの程度に応じて水中でと使い分けると良いのではないかと思います。
まとめ
腰椎ヘルニアは比較的身近な疾患です。
体幹の筋群をトレーニングして「天然のコルセット」を作っていくことが予防や痛みの改善につながります。
現在、腰に問題の無い人は、普段から定期的に良い姿勢でのトレーニングを行って予防に努めましょう。
参考文献
関連
- 脊椎すべり症/分離症のための体幹トレーニング
- 高齢者も有酸素運動より筋トレを優先すべき理由
- 筋肉と体力が少ない高齢者に対する筋トレの効果
- 筋トレの効果:中高年~高齢女性の体組成、筋力、機能性に対して(45~80歳)
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パーソナルトレーナー 井上大輔
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