睡眠障害を改善するための栄養戦略
体づくりに必要なのは、運動・栄養・休養です。
中でも休養、特に睡眠は、回復において最も重要な役割を果たし、生理学的機能、知覚機能、免疫機能に回復効果をもたらします。
睡眠の質の低下は、疲労に関連した傷害の発生率の増加、骨格キン再合成の低下、などに繋がります。
今回は、睡眠の質を高めるための栄養について紹介します。
◆炭水化物
ほとんどの研究では、高グリセミック指数(GI)および低グリセミック指数(GI)の炭水化物摂取の効果に焦点が当てられています。
健康で若いアスリート男性に、夕方のスプリントトレーニングの直後に高GI食または低GI食を与えた結果、
高GI食はTST、SE、SOL、およびWASOを大幅に改善しました。
高GI食は、夕方のトレーニングや競技の後に睡眠の質を改善する可能性があります。
ある研究では、高GI食を寝る4時間前ではなく、寝る1時間前に摂取した場合、SOLが長くなり、主観的な眠気が低くなったと報告しています。
したがって、睡眠への悪影響を避けるため、高GI食は就寝時間の少なくとも2時間前に摂取すべきです。
寝る4時間前に非常に低炭水化物の食事を摂取すると、slow-wave sleepの割合が増加しました。
これは、回復に重要な役割を果たし、エネルギーの節約と神経系の回復を助けると考えられており、特に有益です。
アスリートにとっては、炭水化物はパフォーマンスの源であるため、夕食の低炭水化物はパフォーマンスと天秤にかける必要がありますが、
一般のかたにとっては、夕食は炭水化物を抑えた方が良いかもしれません。
◆タンパク質
現在までのところ、夜間のタンパク質摂取を含む研究は、一般集団において4週間以上実施されたものは限られています。
ある研究では、就寝1時間前に20グラムのαラクトアルブミンを投与したところ、プラセボと比較して、客観的および主観的TSTと同様に増加し、客観的SEも7%増加しました。
一方で、プラセボと差がない結果が出た研究もあり、さらなる研究が待たれるところですが、
αラクトアルブミンは、乳清タンパク質に多く含まれるタンパク質なので、
普段、ホエイプロテインや牛乳・ヨーグルトを夜に摂取している人は改めてαラクトアルブミンを摂取しようとしなくても良いのかなとは思います。
◆タルトチェリージュース
タルトチェリーはアメリカンチェリーの1種です。
タルト・チェリーにはメラトニンが豊富に含まれており、単独でもメラトニンと併用しても睡眠を促進すると言われています。
タルトチェリージュースの摂取により、睡眠を改善した結果が得られた研究はいくつかあり、おそらく睡眠に対して効果があるといえそうです。
◆キウイ
キウイフルーツには、レム睡眠の調節を助ける睡眠促進ホルモンとして知られるセロトニンをはじめ、睡眠と回復を増強する可能性のあるさまざまな栄養素が含まれています。
寝る1時間前に2個のキウイフルーツを摂取した睡眠不良者において、睡眠の改善が報告されています。
この睡眠の質の改善は、キウイに含まれる高濃度の葉酸に起因する可能性があります。
葉酸の欠乏は不眠症に関連しているからです。
◆まとめ
実用的な応用
寝る前の電子機器を避け、涼しく暗い静かな部屋で睡眠をとるなどの適切な睡眠習慣を実施する以外に、栄養介入は睡眠の質と量を高める上で有用です。
これまでに発表された研究から以下の睡眠増強戦略が導き出されます。
・就寝2~4時間前に高GI炭水化物食を摂取する。
・睡眠の浅さが気になる場合は、夕食は低炭水化物食にする。
・睡眠が損なわれる可能性がある場合(出張や海外渡航など)には、濃縮タルトチェリー果汁を取り入れる(起床時に1×30mL、夕食前に1×30mL)。
・就寝2時間前に、ホエイプロテインなど、ラクトアルブミン(やトリプトファン)を豊富に含むタンパク質源を20~40g摂取する。
・寝る1時間前にキウイフルーツを摂取する。
睡眠を損なうことが知られている栄養について
睡眠前に以下の物質を避けることを推奨します。
・カフェイン
・アルコール
・過剰な水分摂取
これらは睡眠の質を低下させるため控えましょう。
具体的なルーティンの例として、
夜ご飯:寝る4時間前に白米を1膳、納豆、卵、アジやイワシなどの青魚を食べます。
その2時間後にホエイプロテインを飲みます。
お風呂を済ませて髪を乾かしたら、キウイを食べます。
一服したら歯を磨いて寝る準備に入る、といった感じでしょうか。
いきなり全部こなすのは無理でしょうから、1つずつ取り入れてみてはいかがでしょうか?
少なくともタンパク質は充分ですから、トレーニング後の栄養補給として良い内容にはなりそうです。
今回は、睡眠を改善させる栄養について紹介しました。
寝つきや睡眠の質を良くしたいと考えているかたの参考になればと思います。
参考文献
Nutritional Interventions to Improve Sleep in Team-Sport Athletes: A Narrative Review
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