2023.07.15

非職業的身体活動と心血管疾患、がんおよび死亡転帰のリスク

仕事以外での身体活動（＝運動）習慣があると健康的になる事は良く知られています。傾向としては所得の高い人ほど運動習慣があるように見受けられます。

エグゼクティブはたとえ忙しくても朝早起きしてトレーニングを開始するか、早朝から仕事をしてひと段落ついた午前中にトレーニングをしたりしています。彼らは健康が最大の資本であることを知っており、その投資を怠りません。

今回は、運動が慢性疾患や死亡率にどのように影響を与えるかを調べた研究を紹介します。

結論からいうと、

活動レベルが高いほど死亡率が低く、心血管疾患やがんなどのイベントの発生率が低くなる
150分/週の中等度強度での運動が最低限目指すべきライン（超えるほどより良い）
上記の運動目安を達成できたら全早期死亡の15.7％（95％CI 13.1～18.2）が回避されたであろう

文献の概要は以下の通りです。

目的：一般成人集団において、非職業的身体活動といくつかの慢性疾患および死亡アウトカムとの用量反応相関を推定すること。

デザイン：系統的レビューおよびコホートレベルの用量反応メタ解析。

データ情報源：PubMed、Scopus、Web of Scienceおよび発表された研究の参考文献リスト。

適格基準：(1)10,000人以上の成人一般集団を対象とした前向きコホート研究、(2)身体活動カテゴリーが3つ以上、(3)全死因死亡率または心血管疾患、冠動脈性心疾患、脳卒中、心不全、全がんおよび部位特異的がん（頭頸部、骨髄性白血病、骨髄腫、胃心筋、肺、肝臓、子宮内膜、結腸、乳房、膀胱、直腸、食道、前立腺、腎臓）のリスク測定とCI。

結果：

3,000万人以上が参加した94のコホートを対象とした196の論文が組み入れられた。

エビデンスが最も多かったのは、全死亡（50件；163 415 543人年、811 616イベント）、心血管疾患（37件；28 884 209人年、74 757イベント）、がん（31件；35 500 867人年、185 870イベント）であった。

一般に、活動レベルが高いほどすべての転帰のリスクが低かった。

リスクの差は、0～8.75限界代謝等価作業時間/週（mMET-hours/週）（推奨される150分/週の中等度から有酸素性身体活動に相当）の間で大きく、このレベルを超える17.5mMET-hours/週までのリスクの差はより小さく、それ以上の差は小さく不確実であった。

関連は全死因でより強かった（8.75mMET-hours/weekでの相対リスク（RR）： 0.69、95％CI 0.65～0.73）および心血管疾患（8.75mMET時間/週におけるRR：0.71、95％CI 0.66～0.77）死亡率では、がん死亡率（8.75mMET時間/週におけるRR：0.85、95％CI 0.81～0.89）よりも関連が強かった。

もしすべての運動不足の人が8.75mMET-hours/weekを達成していれば、全早期死亡の15.7％（95％CI 13.1～18.2）が回避されたであろう。

結論：逆の非線形用量反応相関は、不活発な成人における非職業的身体活動のわずかな増加によって、さまざまな慢性疾患の転帰から実質的に保護されることを示唆している。

まとめ

人は健康だとより充実した仕事を長くこなせるようになります。

運動する事によりホルモンが分泌（主にテストステロン）され、これが活力を生み出す側面があります。簡単に言うと気合が入るのです。肉体的にも精神的にも充実するため、仕事のパフォーマンス向上が期待できます。

余談ですが、サルの群れでボス猿が居なくなった後、新たにボスに就いたサルはテストステロンが猛烈に分泌され、就いた後にボスの風格になるようです。資本主義社会では、テストステロンを分泌させることは身体においても精神においても重要だと考えさせられますが、多くの人は運動をしませんし、文明が進み筋肉を使う機会が減っているので分泌の機会も少なくなっているように感じます。

最近、覇気がないなと感じている方、もっと仕事で成果を出したいと考えている方は、150分の中強度以上の運動を目指してみてはいかがでしょうか？

参考文献

Non-occupational physical activity and risk of cardiovascular disease, cancer and mortality outcomes: a dose–response meta-analysis of large prospective studies