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  • 2025.10.28

どれくらいのランニングはやりすぎか?

ランニングは、競技、レクリエーション、社交、健康改善などさまざまな理由で人気のある運動形式です。

世界中でその手頃な価格とアクセシビリティから数百万人が走っています。

定期的なランナーの90%以上がGPSウェアラブルを使用してトレーニング負荷を監視し、パフォーマンスの向上とランニング関連傷害のリスク管理を目指しています。

それでも、ランニング関連傷害の発生率は高いままです。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8053184/

傷害はランニングプログラムを中止する主な理由です。したがって、傷害の原因を理解することは、科学的根拠に基づくアドバイス、治療、安全な運動習慣のサポートを提供する上で重要です。

今回は、どのくらい走るとやり過ぎに当たるのか?

すなわち、回復が追いつかないラインを見極めるために研究を確認したいと思います。

研究内容

成人ランナーを18か月のコホート研究に募集しました。

ガーミンデバイスで収集したデータを使用して、走行距離の相対的変化に基づいてトレーニング関連の暴露を定義しました:

  1. 後退、または最大10%の増加。
  2. 10%超から30%までの「小さい急増」。
  3. 30%超から100%までの「中程度の急増」。
  4. 100%超の「大きい急増」。

急性:慢性作業負荷比(ACWR: Acute:Chronic Workload Ratio)は、スポーツ科学やトレーニング管理で使われる指標で、短期間(1週間)と長期間(3〜4週間)のトレーニング負荷を比較して、選手の怪我リスクやトレーニングの適切さを評価するものです。

急性負荷を慢性負荷で割って求め、

1.0が急性負荷と慢性負荷がほぼ同じで、トレーニングが安定している状態。怪我リスクは低いとされます。

1.5を超えると、急激なトレーニング増加を示し、怪我のリスクが高まる可能性があります。

例えばランニングの場合、ランナーが普段のトレーニングで週30km走っていて、ある週に突然60km走ると、急性:慢性作業負荷比は2.0となり、怪我リスクが高まる可能性があります。

といった感じで評価します。

先ほどの分類で、後退、または最大10%の増加と10%超から30%までの「小さい急増」は、トレーニングレベルを高めるためには適切な・あるいはやむ負えない程度の増加です。

対して、30%超から100%までの「中程度の急増」。100%超の「大きい急増」。は、怪我のリスクを高める危険性があるラインとなります。

研究の結果

588,071セッション中に、5205人のランナー(平均年齢45.8歳、SD=10.4、女性22%)のうち1820人(35%)がランニング関連傷害を負いました。

単一セッションでの走行キロ数の急増とランニング傷害の発生との間に用量反応関係があることを確認しました。

小さい急増(10%超~30%)、中程度の急増(30%超~100%)、および大きい急増(100%超)で、それぞれ

64%、52%、128%のハザード増加が見られました。

対照的に、急性:慢性作業負荷比を使用した最大10%の増加では傷害率の有意な減少が確認されました。

単一セッションの距離の変化とランニング関連傷害の間に有意な用量反応関係があることを明らかにしました。

あたりまえではありますが、走る距離が長いほど怪我のリスクが高くなります。

特に、単一セッションの走行距離の10%以上の急増は、オーバーユース関連傷害の発生率を有意に増加させ、距離が2倍以上になるとリスクが急激に上昇します。

なんか調子がいいから、気分的に良いからという理由で、走る距離をいきなり10%以上(例:5km➡︎5.5km)増やすことはやめた方が良いと言えます。

また、別のメタ分析では、

全体的な怪我率は、女性ランナー100人あたり20.8、男性ランナー100人あたり20.4で、怪我のしやすさに男女で違いはなかったと報告されています。

女性は、骨ストレス障害の発生頻度が高いですが、男性ランナーはアキレス腱傷害のリスクが高かった。という違いがあります。

女性ランナーの骨ストレス損傷のリスクで考えられる理由の1つは、女性の月経障害、低骨密度との関連といった性別特有の生理学的反応によるものと思われます。

男性のアキレス腱傷害については、アキレス腱は血液供給が不十分であるため、腱障害などのオーバーユース損傷を起こしやすい部位です。

男性の方が、生涯走行距離や週あたりの走行距離が多い傾向にあるので、おそらくそれが原因ではないかと考えられています。

したがって、女性は筋力トレーニングも並行して、ロードワークにも耐えうる筋力を備えておく必要があるでしょう。

男性は、アキレス腱や膝周辺の腱など、回復の遅い組織に対してのケア=とくにアイシングを徹底しておくと良いでしょう。

まとめ

今回は、どのくらいのランニングはやり過ぎに当たるのかを確認しました。

先週1週間の走行距離よりも10%以上増やすとリスクが高くなり、増やせば増やすほど怪我のリスクは高まります。

トレーニングの強度を上げる際は、5から10%程度の変化に留めておくのが良いでしょう。

また、ハーフやフルマラソンなどのレースに参加した場合、急激に走行距離が増加すると考えられます。

この場合は、レース後の休養期間をしっかり取って、練習復帰後も短い距離から再開していくことで、週あたりの増加量を抑えることができます。

この傷害回避のためのマネジメントは、一般の市民ランナーにとっては非常に重要で参考にすべきデータ・研究と言えます。

一度怪我をしてしまうと、とくにオーバーユースでは治りが遅く、ランニングからの離脱も数週間から数ヶ月を要することになります。

その間、心肺機能は低下が早いので、復帰後もとのレベルに戻すにも苦労しますし、再発リスクも抱えることになります。

プロの職業ランナーでない限りは、走行距離を管理しつつ、レベルを高めたり、レースでの記録を狙う場合、試合日から逆算して、トレーニング計画を設計しておくことをおすすめします。

普段のトレーニング後は、しっかり下半身全体をアイシングして怪我の予防にも努めてくださいね。


参考文献

どれくらいのランニングはやりすぎか?

https://bjsm.bmj.com/content/59/17/1203

ランニング傷害における性別固有の違い:メタ分析とメタ回帰による系統的レビュー

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8053184/

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