【科学で攻略】忘年会・お正月太りを防ぐ!トレーナーが教える「代謝の仕組み」と賢い過ごし方
皆さん、こんにちは! パーソナルジムIGF 井上です。
12月に入り、街もすっかり年末ムードですね。 この時期、私たちトレーナーがお客様から最も多くいただく相談。それは、
「忘年会や新年会が続くのですが、どうすれば太りませんか?」
というものです。
お酒、ご馳走、深夜までの夜更かし、そして運動不足…。 ボディメイクや健康管理において、年末年始はまさに「鬼門」と言えるシーズンです。しかし、だからといって全てのイベントを断り、鶏むね肉とブロッコリーだけで年を越すのは、人生の楽しみ方として少し寂しいですよね。
そこで今回は、パーソナルトレーナーの視点から、**「最新の科学的知見に基づいた、太らないための年末年始攻略法」**を解説します。
精神論や根性論ではなく、「体の生理反応」を利用した賢いテクニックです。ぜひ最後まで読んで、この冬を乗り切りましょう!
1. そもそも、なぜ年末年始に太るのか?(研究データから見る真実)
「正月太り」というのは、単なる食べ過ぎのイメージですが、実は科学的にもその「定着しやすさ」が証明されています。
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された研究(Yanovski et al., 2000)によると、成人は感謝祭からお正月のホリデーシーズンにかけて体重が増加する傾向にあり、恐ろしいことに、その増加分は春になっても完全に元の体重に戻らないケースが多いことが示唆されています。
つまり、年末年始に増えた脂肪は「一時的なもの」ではなく、「そのままずっと居座り続ける基礎体重の一部」になりやすいのです。これを毎年繰り返せば、10年で数キロの純増になります。
しかし、怖がる必要はありません。「なぜ太るのか」のメカニズムを知れば、対策は可能です。
2. アルコールとの正しい付き合い方 ~「エンプティカロリー」の誤解~
忘年会シーズンの最大の敵は「お酒」です。 よく「お酒はエンプティカロリー(栄養がない)だから太らない」という説を耳にしますが、これは大きな間違いです。
お酒が太る最大の理由は、カロリーそのものよりも、**「代謝の優先順位」**にあります。
アルコールが体内に入ると、肝臓はアルコールを「毒」と判断し、全力で解毒(分解)しようとします。この時、本来行われるはずの「脂肪の分解」や「糖の代謝」が一時停止してしまうのです。
つまり、お酒を飲んでいる間に食べたおつまみ(唐揚げ、フライドポテト、脂の乗った肉など)は、燃焼されるチャンスを失い、そのまま体脂肪として蓄積されやすくなります。さらに、アルコールは食欲を抑制するホルモン(レプチン)の働きを鈍らせ、食欲を増進させるという研究結果もあります(Yeomans, 2010)。
【今日から使える対策】
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「とりあえず生」の後に水を飲む アルコール濃度の希釈と、脱水予防のために、お酒と同量の水を飲みましょう。肝臓の負担を減らし、代謝の回復を早めます。
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蒸留酒を選ぶ ビールや日本酒、甘いカクテルは糖質が多く含まれます。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒を選び、糖質の摂取を抑えましょう。
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おつまみは「脂質」を避ける アルコール代謝中は脂質がそのまま脂肪になりやすいため、刺身、枝豆、冷奴、焼き鳥(塩)など、高タンパク・低脂質なものを選びましょう。
3. 「食べる順番」だけで太りやすさは変わる
会食やビュッフェ、おせち料理など、どうしても食べる量が増えてしまう時。ここで意識すべきは「血糖値」と「インスリン」の関係です。
食事をして血糖値が急上昇すると、膵臓から「インスリン」というホルモンが大量に分泌されます。インスリンは血糖値を下げる働きと同時に、**「余った糖を脂肪に変えて体に溜め込む」**という働きを持っています。別名「肥満ホルモン」とも呼ばれます。
つまり、血糖値を急上昇させないことが、脂肪蓄積を防ぐ鍵となります。
ここで有効なのが「ベジファースト(野菜から食べる)」の科学版、**「カーボラスト(炭水化物は最後)」**です。
コーネル大学の研究(Shukla et al., 2015)では、パンとオレンジジュース(炭水化物)を先に摂取した場合と、野菜とタンパク質を先に摂取し、15分後に炭水化物を摂取した場合を比較しました。 その結果、野菜とタンパク質を先に食べたグループは、食後の血糖値上昇が大幅に抑えられ、インスリンの分泌量も減少したことが報告されています。
【今日から使える対策】
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食物繊維とタンパク質から箸をつける サラダや和え物(食物繊維)、お肉やお魚(タンパク質)を先に胃に入れましょう。これらは消化に時間がかかり、後から入ってくる糖質の吸収を穏やかにします。
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シメのラーメン・お茶漬けはシェアする 飲み会の最後の炭水化物は、血糖値スパイクの最大要因です。どうしても食べたい場合は、一人前を頼まず、数人でシェアして一口だけ楽しむ心の余裕を持ちましょう。
4. 睡眠不足が「デブ脳」を作る
年末年始は夜更かしをしがちですが、睡眠不足はダイエットの天敵です。
睡眠時間が短くなると、私たちの体内ではホルモンバランスの崩壊が起きます。 スタンフォード大学の研究(Taheri et al., 2004)によると、睡眠時間が短い人は、食欲を増進させるホルモン「グレリン」が増加し、逆に食欲を抑えるホルモン「レプチン」が減少することが分かっています。
つまり、寝不足の状態では、**「お腹はいっぱいなのに、もっと食べたい」という異常な食欲(デブ脳)**が引き起こされてしまうのです。
忘年会の翌日、無性にラーメンやジャンクフードが食べたくなるのは、意志が弱いからではなく、ホルモンの仕業なのです。
【今日から使える対策】
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飲み会の翌日は7時間以上寝る スケジュールを調整し、乱れたホルモンバランスをリセットしましょう。
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朝日を浴びる 体内時計をリセットし、夜の睡眠の質を高めるために、起きたらカーテンを開けて日光を浴びましょう。
5. 「オール・オア・ナッシング」の罠にハマらない
最後に、メンタル面でのアドバイスです。
真面目な方ほど、「昨日は食べ過ぎてしまった…もうダメだ」と自暴自棄になり、その後の数日間も暴飲暴食を続けてしまう傾向があります。心理学ではこれを「どうにでもなれ効果(What-the-hell effect)」と呼びます。
しかし、生理学的に見れば、食べたものがすぐに体脂肪になるわけではありません。 過剰なカロリーが体脂肪として合成・定着するには、数日間の猶予(タイムラグ)があります。
1日食べ過ぎたとしても、翌日から2〜3日かけて食事を調整(少しカロリーを減らす、野菜を増やす、水を多く飲む)すれば、脂肪としての定着は防げるのです。
「昨日は楽しんだ! 今日からまた切り替えよう」 この切り替えの早さこそが、年末年始を太らずに乗り切る最大の秘訣です。
まとめ:最高の年末年始にするために
長くなりましたが、今回のポイントをまとめます。
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お酒を飲むときは、同量の水を飲み、おつまみは低脂質を選ぶ。
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食べる順番は「食物繊維・タンパク質」が先、「炭水化物」は最後。
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睡眠不足は食欲を暴走させるため、しっかり寝る。
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1日の失敗で諦めず、翌日から調整すれば間に合う。
年末年始は、大切な人と楽しい時間を過ごすための素晴らしい期間です。 食事制限のストレスで眉間にシワを寄せるよりも、上記のポイントを少しだけ頭の片隅に置いて、心からイベントを楽しんでください。
そして、もし「ちょっと食べ過ぎたな」「一人ではリセットできないな」と感じたら、いつでも当ジムにお越しください。 年末年始の暴飲暴食をチャラにするための、効果的なトレーニングをご用意してお待ちしております!
2024年の締めくくり、そして2025年のスタートを、最高のコンディションで迎えましょう。
参考文献
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A Prospective Study of Holiday Weight Gain https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM200003233421206
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Alcohol, appetite and energy balance: is alcohol intake a risk factor for obesity?https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20096714/
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Food Order Has a Significant Impact on Postprandial Glucose and Insulin Levelshttps://diabetesjournals.org/care/article/38/7/e98/30914/Food-Order-Has-a-Significant-Impact-on
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Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Indexhttps://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.0010062
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