オモリを素早く挙げるメリット

サルコペニアの予防や改善、すなわち筋力を高めるには筋力トレーニングが有効です。
多くの場合、トレーニング動作は落ち着いて・ゆっくり丁寧に行うことが推奨されています。これは特にトレーニングに慣れていない人にとって、フォームが大きく崩れないようにする上では良い指導と考えられます。
一方で、素早く行う方法が筋力向上に効果的であることが注目されています。
今回は、このアプローチの効果について解説します。
素早く挙げることの効果
具体的には、スクワットや椅子から立ち上がる時、腕立て伏せで体を持ち上げる時、懸垂で体を持ち上げる時など、オモリを持ち上げる局面がコンセントリック筋収縮に当たります。
コンセントリック局面を素早く実行する方法と通常通りのスピードで実行する方法を比較した研究がいくつか実施
されています。
この比較検討された研究24件をまとめて分析した研究によると、コンセントリック局面を素早く行うことが、意図的にゆっくり行う場合と比較して、筋力向上に有意な効果があることが確認されました。
さらにこの効果は、筋トレ経験の長さや年齢で違いはないようです。
なぜサルコペニア対策に使えるか
速い動作は筋線維の動員を高め、特に速筋線維の活性化を促進するとされています。高齢者では速筋線維が加齢により減少傾向にあるため、この点を刺激することはサルコペニア対策として理にかなっていると考えられます。
さらに、素早いコンセントリック動作が筋力だけでなく、パワーの向上にも寄与することが報告されています。
パワーは日常生活動作(例えば椅子からの立ち上がり、階段昇降、体勢を崩した時の咄嗟の踏ん張りなど)に直結し、高齢者の転倒予防や機能維持に重要な要素です。
対して、ゆっくりとした動作は筋肥大には寄与するものの、パワーや機能的パフォーマンスの向上には限定的で
あることが指摘されています。
導入の注意点
素早く行うのはオモリを持ち上げる局面だけであって、下ろす局面や最下部からの切り返しの局面を早く行って良いというわけではありません。ここを素早くこなそうとすると全体的なフォームが崩れて怪我につながる可能性
が高くなります。
下ろす、止めるは丁寧に行い、挙げる時だけ素早く動作しましょう。
また、自体重を用いた筋トレや、軽い重さのマシン・ダンベルでOKです。負荷が高いと素早く動作しようとしても早く動かせないし、高齢の人にとってはより動作制御が難しくなるからです。
軽い負荷で素早く行うだけでパワーは向上するので、安心して取り組んでいただければと思います。
アスリートもパフォーマンスを高めるために、丁寧に動作する筋トレと、素早く行う筋トレを1〜2ヶ月おきに交互に取り組んでいます。
一般の人や中高年・高齢者にも効果的なので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-024-03833-x
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人間の飢餓後の過食症と体脂肪のオーバーシュート:除脂肪組織と脂肪組織からのフィードバック信号の役割
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9062520/
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