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  • 2025.12.08

クラスターセットと伝統的なセットの比較

筋肉を肥大させることは、将来的なQOLを維持向上させるうえで非常に重要です。

一方で、できればジムに行く回数や滞在時間を少なくして、ほかのこと(家事や趣味)に時間を充てたいという人が多いと思います。

「筋トレが好きだからやるではなく、筋トレが将来のQOL維持のために必要な手段だから渋々やる」という場合、とくに深いことは考えずに取り組みたい、それでいて効果がちゃんと出ればOKと考える人も一定数いるというのはよく理解できます。

少なくとも私のジムに通う人のほとんどはこうした考えを持っています。

そうした方々に、基礎学問や過去の知見を使って効率よくサポートするのが我々の仕事なわけです。

今回は、今年発表された研究で、筋肉をつけるにはこうやっておけば大丈夫だよ。というものを3つ紹介します。

結構実用的・簡単に使える研究なので、皆さんのトレーニングにもすぐに導入できると思います。

クラスターセット=伝統的なセット

伝統的な筋トレは、例えば普通に10回連続で挙上します。

クラスターセットとは、1セットの中で短い休憩を挟みながら行う筋力トレーニングのテクニックです。

10回挙上する場合、例えば「3回挙上→20秒休憩→3回挙上→20秒休憩→4回挙上」といった形で、途中に短い休憩を入れながら10回を完了する。といった感じです。

クラスターセットのメリット

  • 短い休憩を挟むことで、筋肉の疲労を抑え、より重い重量で多くの回数をこなすことができる。
  • 1回ごとのパフォーマンス低下を抑えられるため、パワーを最大限に発揮しやすくなる。
  • 高重量を扱うことで、筋肥大に効果的な速筋線維をより多く、効率的に刺激することができる。
  • 疲労がたまりにくいため、質の高いフォームを最後まで維持できる。

といったことが挙げられます。

クラスターセットと通常のセットを比較した研究では、トレーニング経験者の若年者を対象に、週2回、8週間、レッグプレスとレッグエクステンションをそれぞれ12回5セット実施しました。

片方の脚は通常のプロトコル、もう一方の脚は4回×3、セット内休憩20秒のクラスタープロトコルで行いました。

その結果、筋肉の厚みと除脂肪組織の増加量は、通常条件とクラスター条件で同程度でした。

強度と量を揃えた場合、どちらの方法を用いても効果は同じなので、好きな方を選べば良いということになります。

例えば、いつもは10回連続でやるけど、たまにモチベーションが上がらない時や、疲れを感じてパフォーマンスが上手く出しにくいと感じる時、あるいはこの種目は嫌いなんだよな…などがありますよね。

そういった時はクラスターセット法を用いて、4回3回3回と区切ってこなしても全く問題ないわけです。

研究では、20秒のレストを小刻みに入れていますが、10秒でも15秒でもいいです。1種目にかかる時間がちょっと延びるのがデメリットではありますが、それでも1種目2から3分延びる程度です。

気分が乗らない時は、こういった方法を使うのもおすすめです。

動作速度のメタ分析

この研究は、2025年12月号のジャーナルに掲載されたもので本当に最新の知見です。

トレーニングの「1回あたりの動作速度(テンポ)」が筋肥大にどれだけ影響するかを14件の研究で検証・メタアナリシスしたものです。

遅いテンポ(1回あたり約1.7~4.5秒)と速いテンポ(1回あたり約0.3~2秒)を比較した結果、どちらもほぼ同じくらい筋肉が成長し、速いテンポがほんの少しだけ有利という程度で、統計的には有意な差はありませんでした。

結論として、反復の速さは筋肥大に対してほとんど影響せず、他の要素(負荷・回数・セット数・休息時間など)のほうがずっと重要だと言えます。

特定の状況で小さな差が出る可能性はありますが、基本的には「テンポにこだわりすぎる必要はない」という結果です。

オモリを下ろす時のエキセントリック動作は、ごく小さい・わずかに効果があるようなので、丁寧にゆっくり下ろす必要はないですが、完全重力に任せて下ろすよりは気持ちブレーキをかけて下ろせていればOKなようです。

エキセントリックは2秒くらいかけるつもりでコントロールした方が良い(客観的に見れば1秒程度だが)とうっすら考えていたので、このあたりは私も考えをアップデートしたいと思っています。

著者は「好きなテンポでトレーニングしてください」と仰っています。

タンパク質の質の比較

この研究は、高齢の男性32名に、以下のタンパク質ブレンドを摂取させました。

  1. :カゼイン51%/大豆49% 
  2. :ホエイ35%/カゼイン25%/大豆20%/エンドウ20% 
  3. :カゼイン80%/ホエイ20%

その結果、タンパク質ブレンド間で消化率に有意差は認められませんでした。

摂取2.5時間後の筋タンパク合成率も有意差は認められませんでした。

血中アミノ酸濃度は全ブレンド共通で摂取40分後にはベースラインから有意に上昇しましたが、時間帯ごとのブレンド間差は認められませんでした。

結論として、筋タンパク合成を駆動する最も重要な因子は、タンパク質の「質(動物性/植物性の比率)」ではなく、「摂取量」であることが示唆されました。

この研究の結果は高齢男性を対象としたため、女性や若年者、サルコペニア・腎機能低下などの脆弱集団、トレーニングをする人などへ完全に適用できるものではありませんが、

タンパク質の質、特にホエイだから、カゼインだから、吸収速度が〜など考えることはあまり意味がないと言えます。

過去に動画化しましたが、ホエイとソイでは筋肉の成長に対する効果の差はありません。

過去の研究と照らし合わせると、今回のタンパク質ブレンドの研究結果も感覚的にマッチするものであります。

高齢になるほど、動物性タンパク質の摂取がしんどくなる(主に脂によって)傾向があるので、植物性タンパク質、とくに大豆を活用しながら充分な量のタンパク質を摂るように心がけると筋肉の維持増加がしやすくなるでしょう。

まとめ

今回は、今年発表された研究を3つ紹介しました。

  • クラスターセットは通常セットと比べて、特別優れているわけでも劣るわけでもない。したがって、気分次第で自由に組み込んで良い。
  • 動作速度による差はないので、完全に重力に任せなければ好きなテンポでトレーニングしてOK。
  • タンパク質は質よりも量が大事。

これらの知見は、コストがかからず皆さんもすぐに意識したり取り入れたりできるものなので、ぜひ今後の体づくりに役立てていただければと思います。


参考文献

クラスターセットと伝統的なセットは、同様の筋肉肥大を引き起こす:トレーニングを受けた個人における体積と労力の一致研究

https://link.springer.com/article/10.1007/s00421-025-05712-6

筋肥大にテンポは重要ではない。エキセントリックコントロールでOK。

The Journal of Strength & Conditioning Research

タンパク質の質より量が大事

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12609865/

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