ドイツ式筋肥大トレーニング:ジャーマンボリュームトレーニング

筋力トレーニングは、健康な人、慢性疾患患者、アスリートなど、人々の運動プログラムの不可欠な要素です。
筋トレには多くの体力要素および健康上の利点がありますが、多くの人が筋肉量と筋力の増加を求めて実施しています。
トレーニング効果を最大化するには、プログラム変数の適切な操作が必要です。
現在の筋肥大および筋力のガイドラインでは、1種目2〜3セット、筋群あたり週20セットが推奨されています。
過去のメタアナリシスでは、1セットと比較して2~3セットの運動が約40%大きな筋肥大と筋力の増加と関連していることがわかりました。
さらに、トレーニングボリュームが高いほど、筋肥大と筋力の増加が大きくなるという用量反応関係が見られました。
また、筋肥大と筋力の増加が1運動あたり4~6セット前後で停滞する可能性があるとも指摘しました。
一方で、きちんと設計された筋トレを2〜3年続けると、上級者の域に達する人も現れます。
3〜4年もやればほぼ全ての人が上級者と言えるほど、筋トレへの耐性が身につくでしょう。
こういった上級者は成長が徐々にプラトーに達し、伝統的な3セットの筋トレでは物足りなく感じるケースもあり、
時々、プログラムのダイナミックな変化が長期的な成長を引き出す可能性があり、さらに、長期的なトレーニング時のの気分転換として機能します。
今回は、トレーニングに慣れてきた人への提案の一つとして、ジャーマンボリュームトレーニングの方法とエビデンス、どうやって使えば良いか?を紹介したいと思います。
筋トレの選択肢の拡張に繋がるので、ぜひ参考にしていただければと思います。
ジャーマンボリュームトレーニング
ジャーマンボリュームトレーニング(GVT)は、筋肥大を促進する効果的なトレーニング方法として推奨されています。
GVTは1970年代のドイツで始まり、オフシーズンにアスリートの筋肉量を増やすためにウエイトリフティングコーチによって使用されたとされています。
以下、方法を解説します。
GVTでは、多関節種目に対して10回10セット=合計100回の反復を行い、1セッションでこの方法を2種目まで使用します。
セットは1RMの60%または20RMの負荷で行われ、、セット間の回復時間は比較的短いです(約60~90秒)。
これにより、乳酸などの代謝物の蓄積、すなわち代謝ストレスを高めるように設計されています。
代謝ストレスは、運動誘発性筋肥大の促進に関与する重要な要因と考えられており、GVTのような高ボリュームプロトコルで大きく引き出される可能性があります。
まとめると、GVTは、筋肉をパンパンにする目的で行われ、
10回10セット、インターバル60秒で実施し、これを1セッションで多関節種目2個まで組み込みます。
ちなみに私は、現役時代に3回くらいチャレンジしたことがあります。
感想としては、
- 4セット目くらいまでは、余裕やんけこんなもん時間の無駄やろ。
- 5〜6セットくらいで、あれぇ?ちょっと様子がおかしいぞ。
- 7〜8セットで、舐めてててすみませんでした。
- 9〜10セットで、まだやるんですか?もう勘弁してください(ギャン泣き)
って感じだった印象があります。
1セット目と10セット目で景色が全然違うのが面白かったです。
GVTのエビデンス
2017年のランダム化比較試験で、19人の健康な男性が、10回かける10セットまたは5セットを、週3回、6週間行う群に無作為に割り当てられました。
筋肉量と筋力が測定されました。
結果、両群とも筋肉量の測定値に有意な増加が見られましたが、胴体と腕の筋肉量の増加は5セット群の方が顕著でした。
筋力に関しては両群で有意な増加が見られ、5セット群ではベンチプレスとびラットプルダウンでより大きな増加が観察されました。
GVTプログラムは、筋肥大と筋力の増加において、5セットを行う場合と比較してそれほど効果的ではないようです。
解釈として、GVTでは10セットをこなす必要があり、1RMの60〜80%が指定されていたとはいえ、被験者が保守的に強度を見積り、5セット群と比べて10セット群は相対的に若干弱い強度設定になってしまったことが挙げられます。
特に、%RMは強度が低くなるほど=回数が多くなるほど誤差が大きくなる傾向があるので、5セットよりも10セットやる方が、強度設定が難しい可能性があります。
これを考慮すると、結果は5セット群の方が有利な傾向でしたが、実際には差がないと解釈するのがより合理的です。
一方で、10セットのボリュームは疲労がかなり蓄積するので、オーバートレーニングによる効果の減衰が懸念されます。
したがって、1セッションでは3〜4セットを行うことが推奨され、GVTはあくまでもキン肥大期の軸となるプログラムではなく、トレーニング期間中のマンネリ感を緩和するために稀に取り入れるくらいの使い方を提案します。
実際に私もやっていたとは申しましたが、年に1回やったくらいで、基本は1種目3〜4セットを複数種目やるという伝統的な手法を使っていました。
GVTはまさに気分転換くらいの使い方ですね。そのくらいがちょうどいいと思います。筋トレの遊びといった位置付けです。
まとめ
今回は、ジャーマンボリュームトレーニングについて解説しました。
まとめると、GVTは、筋肉をパンパンにする目的で行われ、
10回10セット、インターバル60秒で実施し、これを1セッションで多関節種目2個まで組み込みます。
研究では、GVTプログラムは、1セッションあたり5セットを行う場合と比較して、筋力の増加においてそれほど効果的ではないことを示唆しています。
オーバートレーニングリスクを考慮すると、筋肥大にとっても1セッションで10セット行うことは積極的に推奨することはできません。
しかし、さほど疲労の蓄積が無く、稀にGVTを取り入れる程度なら肥大の効果は5セット法と変わらないので
バリエーションの一つとして運用することは悪くないでしょう。
こういったボリュームを重ねるトレーニングは、男性ホルモンや成長ホルモンといった同化ホルモンの分泌を促しますが、ホルモンの量が増えても受容体の量は変わらないので、短時間の間ホルモンを大量に分泌させることにたいした意味はありません。
ホルモンは受容体にくっつくことで初めて効力を発揮するからです。
そういうわけで、肥大効果は5セットも10セットも変わらないというわけです。
基本的には1種目3から4セットで、筋群/週あたり20セットを活用しつつ、今後数年、十数年と筋トレに従事するなら、こういったGVTなどの引き出しを持っておくのも良いかと思います。
これとは別に、過去に25トンウエイトという方法も紹介しているので、こちらも合わせて気分転換にご活用ください。
参考文献
ドイツ式ボリュームトレーニングプログラムが筋肥大と筋力に及ぼす影響
筋肥大のためのシングルとマルチセットの抵抗運動:メタ分析
ドイツ式ボリュームトレーニング:筋肉の成長を刺激するための高ボリューム負荷トレーニングの代替方法
http://www.rodrigoallenatore.com/articoliscientificiPDF/German%20Volume%20Training.pdf
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