日常生活に短時間の高強度運動を組み込むメリット

身体活動不足とエクササイズスナックの背景
現代社会において、身体活動不足は世界的な公衆衛生上の重大な課題であり、約4人に1人の成人が推奨される身体活動レベルを満たしていません。
この動画をご覧のかたは運動を趣味としていて、比較的活動的な人が多いと思いますが、中には運動だるい、できればやりたくない、短時間でやりたいな、などを考えている人がいたり、
仕事が忙しくて・疲れて、1回60分くらいの時間を週2から3回といった安定的な時間の確保ができないといった人もいらっしゃるでしょう。
フィットネスクラブに1年通い続けられる人は4%程度ということを考えると、実は社会人の9割は運動だるい・忙しくて時間取れないといった人が占めていると思われます。
ちなみに私は体を鍛えることは手段であると考えているタイプなので、ぶっちゃけ運動だるい、できれば短時間で効率よく終わらせたいと考えている一人です。
運動不足は、心血管疾患や糖尿病、肥満、がんなどの慢性疾患リスクの増加や、ストレス・不安・うつ病といったメンタルヘルスの悪化と関連しています。
特に中高年や高齢者では、身体的・環境的制約や心理的障壁が身体活動を阻害します。
こうした背景から、短時間で高強度の運動を日常生活に組み込む「エクササイズスナック(ExSn)」が、時間的制約や努力感を軽減し、身体活動を促進する有望な方法として注目されています。
スナックとは”手軽な”といった意味があり、ここではお手軽なエクササイズという意味です。
60分のまとまった時間の筋トレではなくて、例えば1種目3セットだけといった隙間時間にお手軽に行うエクササイズです。
エクササイズスナックは、1〜2分(場合によっては10分まで)の短い運動を1日複数回行うもので、個人のフィットネスレベルに合わせて調整可能です。
このアプローチは、特に座位時間の長いオフィスワーカーや身体活動不足の人にとって、実現可能で効果的な健康改善策として期待されています。
私は仕事の日、クライアントのパーソナルトレーニングの合間の時間にこれを実施しています。
1日4から5セッションあるとしたら、その間の隙間時間にそれぞれ1種目(2〜3分)ずつ行うのです。
すると1日で3〜4種目は行えるので、ほぼ全身を鍛えられます。
こうした方法、エクササイズスナックは効果があるのか?これを研究した2025年8月の最新の文献を紹介します。
◆研究の方法
本研究は、エクササイズスナックが成人の心代謝健康(最大酸素摂取量、ピークパワー出力、脂質プロファイル)と体組成(体重、体脂肪率)に与える影響を、身体活動的および非活動的な成人を対象に系統的レビューとメタ分析を通じて評価することを目的としました。
2025年5月22日までを対象に6つのデータベースを検索し、14の研究を分析に含めました。
◆研究結果とその意義
メタ分析の結果、エクササイズスナックは心肺フィットネスと脂質プロファイル(総コレステロール、LDLコレステロール)を有意に改善しました。
特に、非活動的な成人でこれらの効果が顕著であり、2分を超えるセッションがパワーの向上に効果的でした。
一方、体重や体脂肪率、HDLコレステロール、中性脂肪には有意な影響が見られませんでした。
これらの結果は、エクササイズスナックが特に身体活動不足の人にとって、心代謝の健康を向上させる時間効率の良い方法であることを示唆しています。
エクササイズスナックの短時間かつ高強度の性質は、体重の減少にはつながらないものの、
パワーの向上や、インスリン感受性の向上、脂質代謝の促進を通じて健康改善に寄与し、座位時間の多い生活を送る人々に実践的な解決策を提供します。
◆実践的意義
本研究は、エクササイズが心代謝健康の向上に有効であり、特に身体非活動的な成人にとって実用的であることを明らかにしました。
このアプローチは、時間的制約のある人々が健康を維持・向上させるための新たな公衆衛生戦略として有望です。
こうした短時間のスポットトレーニングは最近注目されてきている手法であるため、エクササイズスナックの定義や最適な実施方法(持続時間、頻度、運動種類)の標準化、長期的な効果の検証は今後の研究で明らかにされていくことでしょう。
それでもエクササイズスナックは、伝統的な運動ガイドラインを満たせない多くの人々の補完的な戦略として、健康行動の促進と代謝的利点の提供に貢献する可能性があります。
平日は隙間時間でのトレーニング、休日に1時間前後のウォーキングやジョギングを組み込んであげると、ダイエットや血中脂質のさらなる改善にも効果的になると考えられます。
私はそんな感じで日々の生活にフィットネスを組み込んでいます。
◆忙しい人への提案
最後に具体的にどんなことをすれば良いのか?これが気になるところだと思います。
以下の提案は、文献に基づき、忙しい一般社会人が日常生活にエクササイズスナックを組み込む方法を示します。
階段登りを取り入れる
文献では、階段登りがエクササイズスナックとして有効であることが示されています。
オフィスや自宅で、1から2分の階段登りを1日数回行う。
例えば、昼休みにビルの階段を速く登ることで、心肺フィットネス(VO2max)や脂質プロファイル(TC、LDL-C)を改善できます。
1段飛ばしで登っていくのも効果的です。
短時間のスプリントサイクル
スプリントサイクルはピークパワー向上に効果的です。
オフィス近くのジムや自宅にエアロバイクがある場合、1~2分の全力サイクリングを数回行う。
2分を超えるセッションは特に効果的です。
座位中断の習慣化
長時間座っているオフィスワーカーには、1時間ごとに1~2分の高強度運動を組み込む。
例えば、その場で連続垂直跳びや、ジジュウのフルスクワットなどです。
文献では、座位の中断が血糖コントロールやインスリン感受性を改善することが示されています。
通勤時の速歩
通勤中に速歩きを1~2分間取り入れます。実施時間が長いほど良いです。
これは日常生活に簡単に組み入れやすいのでお勧めです。
電車通勤の人は速く歩くことを意識してみましょう。
筋トレのミニセッション
文献では筋力トレーニングもエクササイズスナックとして有効です。
オフィスや自宅で、10から20レップのの腕立て伏せやスクワットを数セット行う。
最小限のスペースと時間で実施可能です。
これらの行動は、短時間・高強度の特性を活用し、忙しいスケジュールにフィットする健康改善策です。
特に運動不足な人はこれだけでも心代謝健康の向上に有効であり、長期的な健康習慣の形成に役立ちます。
マッチョにとってエクササイズスナックだけでは、完全な筋肉量の維持は難しいですが、その減少量スピードをなだらかにすることができるため、繁忙期などでジムに通えない時にはこれが使えます。
マッチョでない人にとっては、生活や趣味に必要な体力レベルを維持するにはエクササイズスナックだけでも案外充分です。
運動が趣味という人は、1セッション1時間程度を週に数セッション作ることは楽しい体験だと思いますが、運動は手段と考えている人は、できるだけ短時間で済ませたい、余暇の時間を他のことに使いたいと思うでしょう。
そういった方は、今回紹介したエクササイズスナックという方法も選択肢の一つです。
ご自身のフィットネス改善と好きな余暇時間の使い方をうまくバランスとりながら、幸福度を最大化させて頂ければと思います。
参考文献
日常生活に短時間の高強度運動を組み込む影響
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.70114
WHO Physical activity 2024
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/physical-activity
血糖、インスリン、トリアシルグリセロールの測定に対する身体活動の休憩による長時間の座り込みの中断の影響:系統的レビューとメタ分析
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