筋トレと有酸素運動の同時進行-骨格筋の量と機能に対する相反効果について
有酸素運動と筋力トレーニングを同時に行うことは、運動能力と健康の両方を向上させることを目的とした身体トレーニングとして最適と考えられています。
有酸素運動と筋力トレーニングの両方の実施は、これらの活動がある程度異なる適応と健康上の利益を誘発するため重要です。
例えば、有酸素運動は、有酸素運動能力の向上(すなわち、中枢性適応)とミトコンドリア密度の増加や毛細血管形成といった骨格筋の代謝的変化を促進します。
逆に、定期的な筋力トレーニングは、筋肥大と筋力およびパワーの増加をもたらしますが、骨密度も改善する可能性があります。健康維持における骨格筋の役割は、ここ10年で注目されるようになり、筋組織は、脳、脂肪組織、骨、肝臓、腸、膵臓、血管床、皮膚などの他の臓器の機能に関連する数百種類のマイオカインを放出する分泌器官として理解されています。さらに、最近、筋力の役割は、高齢者における転倒関連傷害のリスク低下と強く関連していることが強調されており、身体の健康と日常生活における自立の指標として、筋肉量と筋肉機能の両方の重要性がさらに強調されています。
したがって、筋力トレーニングと並行して、比較的高いボリューム(および/または頻度)の有酸素性トレーニングを行う事の相性を再検討することは重要です。有酸素性トレーニングは、トレーニング全体の量が多い場合、最大筋力の発達を妨害することが示されているからです 。
重要なことは、有酸素運動の同時トレーニング量が少ない場合でも、筋パワーの獲得が減少することが示されており 、これは筋パワー関連の利益の減少につながる可能性があるということです。
目的
この系統的レビューでは、筋機能(最大筋力と爆発的筋力)と筋量の適応の観点から、有酸素運動と筋力トレーニングの同時実施について、筋力トレーニングのみと比較し、互換性を評価した。トレーニングのモダリティ、トレーニングの種類、運動順序、トレーニング頻度、年齢、トレーニング状況の影響を調べるためにサブグループ分析を実施した。
方法
PRISMAガイドラインに基づき、系統的な文献検索を実施した。PubMed/MEDLINE、ISI Web of Science、Embase、CINAHL、SPORTDiscus、Scopusを系統的に検索した(2020年8月12日、2021年3月15日更新)。適格基準は以下の通りであった。
- 対象:性別・年齢を問わない健康な成人
- 介入:少なくとも4週間、有酸素運動と筋力トレーニングを監督下で同時に行う
- 比較:有酸素運動トレーニングを行わない、同一の筋力トレーニング処方
- アウトカム:最大筋力、爆発的筋力、筋肥大。
結果
合計43件の研究が含まれた。ランダム効果モデルに基づく推定標準化平均差(SMD)は、最大筋力、爆発的筋力、および筋肥大について、それぞれ-0.06(95%信頼区間[CI] – 0.20~0.09;p=0.446),-0.28(95% CI – 0.48~-0.08;p=0.007),-0.01(95% CI – 0.16~0.18;p=0.919 )であった。
爆発的筋力の減衰は、セッションを3時間以上離した場合(p>0.05)よりも、同じセッション内で同時進行のトレーニングを行った場合(p=0.043)の方が顕著であった。
他のモデレーター、すなわち、有酸素性トレーニングの種類(サイクリング対ランニング)、並行トレーニングの頻度(週5セッション以上対5セッション未満)、トレーニング状況(未トレーニング対アクティブ)、および平均年齢(40歳未満対40歳以上)については、有意な影響は認められなかった。
結論
有酸素運動と筋力トレーニングの同時進行は、筋肥大と最大筋力の発達を損なわない。しかし、爆発的な筋力向上は、特に有酸素運動と筋力トレーニングを同じセッションで行った場合、減衰する可能性がある。これらの結果は、有酸素トレーニングの種類、同時進行の頻度、トレーニングの状況、年齢とは無関係であると思われた。
このように、有酸素運動と筋力トレーニングの平行は、筋肥大と筋力発達において減衰効果は無いので、特に一般の人は安心して同時進行をすると良さそうです。
筋トレで筋力や骨密度向上、転倒リスク低減などの恩恵を受けつつ、有酸素運動で代謝の向上や心臓血管系レベルの向上で疲れにくい身体の獲得を目指しましょう。
アスリートにおいては、パワーの獲得が損なわれる可能性があるため、有酸素運動と筋力トレーニングは同じ日には組み込まない方が良いかもしれません。しかし、トレーニングスケジュールなどはチーム事情などによって変わる為、この辺りは各所で話し合った上で決める必要があります。筋トレと有酸素運動を同じセッションで行うと、“パワー獲得効果が減衰する可能性がある”という事を知っておくのが重要です。
まとめ
- 有酸素運動と筋力トレーニングの同時実施は、体力向上や健康増進のために推奨されているが、この2つの異なるトレーニングモードの相性については、依然として不明な点が多い。
- このメタ分析では、有酸素トレーニングの種類(サイクリング対ランニング)、同時トレーニングの頻度(週5セッション以上対5セッション未満)、トレーニング状況(未トレーニング対アクティブ)、平均年齢(40歳未満対40歳以上)、トレーニング様式(同一セッション対同日対別日トレーニング)にかかわらず、同時トレーニングは最大筋力および筋肥大の適応を妨げないことを報告した。
- しかし、同時進行のトレーニングは筋パワーの上昇を抑制する可能性があり、これは有酸素運動と筋力トレーニングを同じトレーニングセッション内で実施した場合に悪化する。
参考文献
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パーソナルトレーナー 井上大輔(外科代謝栄養学会/臨床栄養代謝学会/感染症学会)
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