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  • 2024.09.29

糖尿病を改善する6つの食事方法|最も効果的なのは?

2型糖尿病は、インスリンと呼ばれるホルモンが適切に働かないために、血糖値が慢性的に高くなる状態です。

血糖値が高い状態が長く続くと、心筋梗塞や脳卒中、目や腎臓の病気、足の病気など、他の健康障害を引き起こす可能性があります。

血糖値の改善には、食事と運動が必須です。

食事についてはさまざまな方法が提案されており、特定の食物・食材を食べると効果があるよ!というのも含めると、情報が多すぎて振り回される人も少なくありません。

今回は、血糖コントロールにはどの食事方法が効果的なのかを、研究で充分に成果を挙げ、誰がやってもある程度の効果が期待できますよ。

というものを6つを紹介し、特にその中でどれが効果が高いのかを紹介したいと思います。

◆6つの食事方法

ここでは、6つの食事方法を簡潔に紹介していきます。

1.エネルギー制限食

エネルギー制限食は、1日の消費カロリーを算出して、1日の摂取カロリーをそれ以下に設定する一般的なダイエットです。

要は単純に食事量を減らすやり方で、BMI25以上および2型糖尿病を持つ4503人の米国成人を対象とした研究では、継続出来れば1年間で8%程度の体重減少が期待でき、参加者の11.5%が1年後に2型糖尿病の寛解を達成したという研究があります。

特筆すべきは、10年後に減少した体重がすべて戻ったときでも、血糖コントロールが優れたままであったという結果です。

体重は時を経ると戻るかもしれませんが、血糖コントロールに対しては無駄にはならないと言えます。

エネルギー制限食は難しい知識は必要ない、現在の食事量を1から3割程度減らすというシンプルな考えでも実践できますので、ぜひ取り組んでみてほしいと思います。

2.低カロリー食

低カロリー食は、先ほどのエネルギー制限食をさらに加速させたようなものです。

タンパク質、炭水化物、必須ビタミン・ミネラルの十分な摂取を維持しながらエネルギー摂取量を大幅に減らすことで、体重を急速に相当量減らすことができるという考えです。

12週間の毎週の行動サポートと3か月間の毎月のサポートで構成されており、最初の8週間は1日810kcalの食品を提供し、その後、食品の再導入が行われます。

一般の人が1日800kcal程度で栄養バランスの取れたメニューで過ごすことは難しいかもしれませんが、1000〜1200kcalなら、栄養に興味のあるかた、やる気が高いかたなら充分に達成可能な目標になるでしょう。

食事改善を始めようと思った熱量が高い初期の段階でしっかり取り組んで、大きな成果を出していくのがポイントです。

3.低炭水化物食

日本で一時期トレンドになった糖質制限です。

高血糖は糖が入ってくるから起こるのであって、じゃあ最初から糖を入れなければ良いよね、という考え方です。

私のクライアントでも、このやり方で糖尿病を寛解した方が何名もいらっしゃいます。

ごはん、パン、麺類、砂糖などの糖質を抜いた食事をするため、ルールとしてはわかりやすいです。

カロリー計算は大抵不要です。ただ、必然的に高タンパク食になるため、腎機能がすでに低下しているかたは、主治医との相談やタンパク質コントロールも必要になります。

腎機能が健康なかたは、大食漢でない限り(毎食300g以上の肉を食べるとか)タンパク質摂取量については大丈夫だと考えられています。

明確に血糖値に対してはかなりの効果があるので、なんとしてでも血糖値を下げる確実な成果を得たい!という人や、

炭水化物にあまり執着しない、どちらかというと肉や魚を食べる方が好きという人は、糖質制限が成功しやすいです。

糖が無いが故に、長期的には糖代謝が低下する可能性があるので、2〜3ヶ月くらいにとどめて、糖代謝が低下しないように運動も並行して行うようにしましょう。

4.植物ベースの食事

ベジタリアンダイエット(主に植物性)は、ほとんどの動物性食品を除いたものであり、ヴィーガンダイエット(完全に植物性)は、すべての動物由来食品(肉、魚、および動物由来の食品、例えば動物由来の牛乳、卵、およびチーズ、ヨーグルトなどのそれらに由来する製品)を除いたものです。

植物ベース食は、普通の食事よりも体重が減少し、血糖コントロールが改善し、心代謝リスク因子がより改善したことが示されています。

一方で、多くの必須栄養素が不足する可能性も高く、長期的な実施による健康への影響には疑問が残っています。

体重が減ることは確実なので、たまに植物ベース食で過ごす日を設けたりするくらいの導入で良いと思います。

5.地中海食

地中海食や地中海食パターンとは何かについては、まだコンセンサスが得られていませんが、一般的には、地中海沿岸地域に住む人々の食事パターンに基づいています。

いくつかの試験で、地中海食またはそのパターンに従うことが心血管疾患と死亡に及ぼす影響が調査されており、血糖コントロール、HbA1cの有意な低下にも良い影響が認められています。

地中海食の摂取は血糖コントロールと心血管の健康の両方に有益であることを示唆するエビデンスがあり、さらに、この食事療法は、より集中的な食事療法が困難な人にとって、より実施しやすい内容となっています。

糖質制限や低カロリー食がなかなか続かないというかたは、地中海食を検討されると良いでしょう。

6.時間制限食

時間制限食はプチ断食のようなものであり、栄養素や食品群の処方を提供するものではなく、決められた時間内に食事をするものです。

メタボリックシンドローム患者における最近の系統的レビューでは、間欠的絶食は空腹時血糖・HbA1cの改善、血清インスリン濃度の低下、体重の減少が報告されています。

他にもいくつかの研究で良好な結果が得られており、時間制限を取り入れた食事戦略は、エネルギー制限や体重減少の効果だけでなく、インスリン産生やインスリン感受性にも影響を与えることで、血糖値に対して二重の改善効果をもたらす可能性があります。

これもルールとしては非常に簡単で、栄養学の知識もさほど必要なく、誰でも取り組めるものなので、血糖コントロールやそのための体重管理が必要なかたは積極的に取り入れいると良いです。

◆最も効果的な食事法

2024年8月の研究で、2型糖尿病寛解の達成に対する食品ベースの食事戦略の影響が調査されました。

低カロリー食、地中海食、植物ベース食、主要栄養素の割合を変える食事(低糖質や低脂質など)を対象に分析されました。

これらの食事法の中で最も効果が期待できるのは、地中海食でした。特に、炭水化物を抑えた低炭水化物地中海食が、低脂肪食群と比べて3倍以上の寛解率を誇っていました。

3年から長くて5年後でも寛解を維持している人が最も多かったです。

一般的な地中海食は、有意な体重減少が得られた場合にのみ寛解をもたらしています。

やはり2型糖尿病に対して、インパクトのある効果を得ようと考えた時に、糖質の摂取量をある程度制限する必要が出てくるものと思われます。

カロリーを落とした食事と運動でコントロールしても効果は得られますが、寛解に至るまでの時間を要するため、それまでにモチベーションが低下して寛解まで行かずに脱落してしまったり、歳をとっていくのでその分代謝が落ちて、後半ほど改善ペースが緩やかになり、これもモチベーションの低下につながります。

したがって、糖質を抑えた低炭水化物地中海食で、1〜2年程度で一気に血糖コントロールを進めていく、

ある程度寛解レベルに達したら、普通の地中海食や時間制限食などを活用して、食事制限へのストレスを緩和しながら維持を図る、というのが良い進め方なのではと思います。

地中海食は糖尿病寛解に効果的なのが分かったので、最後に地中海食とはどんな構成か?について触れてこの動画を締めたいと思います。

◆地中海食事とは?-内容-

地中海食の特徴を簡単にまとめると以下の通りとなります。

  • 果物や野菜を豊富に使用する。
  • 乳製品や肉よりも魚を多く使う。
  • オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う。
  • 食事と一緒に適量の赤ワインを飲む

血糖コントロールにおいてお酒は不要ですが、それ以外は健康になるイメージが湧きやすい食材です。

図は、ハーバード大学とWHOが作成した、地中海式ピラミッドです。

各食材を、下段にいくほど多めに、上段ほど少なくしましょうというものです。

野菜・果物・穀物をしっかり食べて、タンパク質は魚介類を多めに食べましょう、スイーツやお酒、脂質を多く含むものは少なくしましょうということです。

飲み物は基本的に水を推奨しています。

オリーブオイルは適当にドバドバかけて良いわけでは無いですが、ドレッシングやソースを使うくらいならオリーブオイルを使うと良いです。

ここで、伝統的な和食を見てみましょう。米一膳と味噌汁、納豆、焼き魚、漬物、卵焼き、おひたし、海苔。

こういったよく旅館で見るような和食は地中海食と同様に、植物由来の食材を多く、タンパク質は魚がメイン、脂質の多いものは少ない、といった構成になっています。

一般的には精製された白米を食べる機会が多いと思いますが、これが玄米になるとすでに良い栄養バランスが更に良くなります。

欧米食やファストフードが進んでいる日本において、伝統的な和食を食べる機会が減ってきたかもしれません。

健康寿命が世界一の日本は和食を食べているから、というのも一因であると言えます。

こういった研究は欧米が中心となって行っているので、和食にフォーカスされることが少ないです。

しかし、和食も地中海食と同等かそれ以上に体重・血糖コントロールに対して良い影響を与えてくれると考えられます。これは食材を見れば明らかです。

1週間のうち、和食と地中海食の比率を多めに(できるだけ多く)するように食事を構成されると良いでしょう。

◆まとめ

今回は、糖尿病を改善する6つの食事方法と、最も効果的な食事方法について解説しました。

プラスアルファで和食についても触れました。

野菜や果物を多くすると必然的に摂取カロリーが減りやすくなります。

内臓脂肪を減らすことで、血糖コントロールが効きやすい体になるので、摂取カロリーの調整は多くの高血糖の人にとって必要です。

肉や乳製品を増やせば、それだけ脂質を摂ることになり内臓脂肪は蓄積しやすくなります。

糖質の摂取量が多いほど血糖値は上がり、少ないほど血糖コントロールしやすいので、炭水化物や砂糖の摂取量は抑えましょう。

いきなり3食糖質を無くすのは厳しいと思います。朝昼で米一膳くらい、夜は炭水化物を抜くようにすると最初は取り組みやすいかもしれません。

とにかく、現在高血糖の人は、今よりも全体的に20から30%くらい糖質を減らす意識で、減らした分は野菜を摂る。

このように考えて食事を構築してみてください。あとは、それを半年や1年続けてみることです。継続すれば何かしらのプラスの変化は得られるはずです。

今回の動画が、糖尿病と予備軍の改善に役に立つと幸いです。


参考文献

2型糖尿病を発症するリスクのある人の血糖コントロールを改善するための介入

https://dom-pubs.pericles-prod.literatumonline.com/doi/10.1111/dom.15855

2型糖尿病寛解の達成に対する食品ベースの食事戦略の影響:系統的レビュー

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1871402124001577?via%3Dihub

糖尿病診療の現状

https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001005975.pdf

過体重の人々の低エネルギー総食事代替治療への医師の紹介(DROPLET):実用的なランダム化比較試験

https://www.bmj.com/content/362/bmj.k3760

英国における減量維持の継続的な支援の無作為化糖尿病寛解臨床試験(DiRECT)の5年間のフォローアップ:拡張研究

https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(23)00385-6/fulltext

インスリン抵抗性:2型糖尿病における心血管疾患の病因における追加の危険因子

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26542377/

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