肥満のためのの運動を考える
肥満の人は筋肉量が多い傾向にあります。これは、身体が重いので、日常的にそれを支えるためだと考えられています。
そこで、こんな疑問が浮かんできます。
「肥満の有酸素運動は本当に筋肉量が増える効果がありますか?」
仮に有酸素運動だけで増えるとしたら、体重が大きい人は筋トレはいらないということになります。
有酸素運動は筋肉が増えるか?
2024年5月、肥満男女成人の筋肉量に対する有酸素運動の影響が調査されました。
4つのランダム化比較試験を集め(対照n = 63:介入n = 175)分析したものになります。
参加者は、監視下のもとでトレッドミルウォーキングやジョギングを行いました。
強度は最大酸素摂取量の60%から75%、30分間、週5回実施されました。
食事は栄養士によるアドバイスを受け、約50%の炭水化物、約20%のタンパク質、約30%の脂肪で調整され、毎日の食品日記を提出する形で管理されました。
筋肉量の測定は、介入前と後でMRIにて計測されました。
結果
すべての脂肪組織が減少し、有酸素運動により心肺フィットネスが対照群と比較して増加しました。
有酸素運動はコントロールと比較して全身および上半身の筋肉量のわずかな減少と関連していました。
下肢筋肉量の変化については群間差は観察されませんでした。
筋肉量対脂肪組織比は体重減少と正の相関を示しました。
筋肉量の変化は食事からの蛋白質摂取とは関連していませんでした。
結論
体重減少の有無にかかわらず、肥満成人において、中強度の有酸素運動は、筋肉量を維持しますが増加はしません。
筋肉量の維持は、有酸素運動の対象となる筋肉に限定され、動員されていない筋肉(トレッドミルの場合、上半身の筋肉量)は、維持されない可能性があります。
次に、肥満の人はどんな運動をしたら良いかを考えてみます。
血圧が高い場合どんな運動が良いか?NGか?
肥満や過体重の人は血圧が高い傾向にある人が多いです。したがって、エクササイズの選択も慎重に行う必要があります。筋トレの種目によっては、血圧を瞬間的にかなり高めてしまうからです。
トレーニング中、負荷を適切に設定した場合、最後の1から2回程度は努力が要求され、場合によっては息を止めて挙げるシチュエーションになることがあります。
息を止めて腹腔内圧を高め、体幹を安定させ、伝達能力を高めることで大きな力を発揮し、挙上することが可能になります。こうした現象は本能・無意識で発生し、日常生活でも起こり得ます。
この息を止めて挙げるテクニックを、バルサルバ法と呼び、腹腔内圧が高まると同時に血圧も高まります。
筋トレの中でも、特に推奨されるのは、スクワット、レッグプレス、デッドリフト、シーテッドローイング、ベンチプレスなどの多関節種目です。
多関節種目は筋肉をたくさん使うので、効率よく全身を鍛えることができるからです。
2019年12月、バルサルバ法により、どの運動が最高または最低の内圧値を誘発するかが調査されました。
16件の研究を対象に、各エクササイズが評価されました。
結果
参加者のトレーニングレベルにかかわらず、腹腔内圧はスクワットで最も高く、次いでデッドリフト、シーテッドロー、レッグプレスで測定され、腹腔内圧が最も低かったのはベンチプレスでした。
胸腔内圧値が最も高かったのは、レッグプレス、デッドリフト、ボックスリフトで、ベンチプレスとシーテッドローよりも高かったようです。
したがって、ベンチプレスとシーテッドローは、初心者や高血圧患者に有用な運動として推奨できます。
トレーニング初心者や血圧が高い人は、重いスクワット、デッドリフト、ボックスリフト、クリーンなどのエクササイズを行うべきではないと言えます。
まとめ
以上の、有酸素運動の研究と血圧の研究から肥満や高血圧の人向けのメニューを作るなら、
- 筋トレは週2回、それぞれ10回3セット
- ベンチプレス、シーテッドロウを軸として、他、インクラインダンベルプレス、ラットプルダウン、アップライトロウを行うのが良い
- 12から15RMで10回程度なら、レッグプレスを入れるのもアリ
- 有酸素運動は週5回を目標に、速歩きで30分間行うのが良い。走る必要はありません。
- トレッドミルで行う場合は、傾斜を2%程度つけると良い。
このようなプログラムになります。
筋肉量を落とさないように、タンパク質は1日80から100g程度を摂れればOKです。
BMIが25以上の人は、今回の動画を参考に運動計画を立ててみてください。まずは有酸素運動だけでもOKです。
余裕があれば筋トレも並行して行いましょう。
参考文献
有酸素運動は、女性と男性の肥満成人の骨格筋量を増加させますか?
高強度抵抗運動中にバルサルバ操作によって開始された腹腔内および腹腔内圧の体系的なレビュー
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6945051/
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