2023.05.13

腱鞘炎（腱炎）管理のためのレジスタンス運動

腱鞘炎は、手の使い過ぎにより指や手首の関節に痛みが生じる疾患です。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。腱炎とは、腱の炎症です。ともに腱が痛み、特に動かすと痛みを伴い、ときには腫れることがあります。

このテーマについて、すでに知られていることは

腱炎は、アキレス腱、回旋腱板、肘関節外側、膝蓋骨、股関節などの腱によく見られる症状で、スポーツ選手と非スポーツ選手の双方に広く見られる。
運動療法は腱症の保存的治療の主要な手段であり、患者の転帰を改善するのに有効であることが示されているレジスタンス運動に重点を置いている。
強度、量、頻度など、さまざまなレジスタンス運動の用量構成要素が患者の改善に及ぼす影響については、ほとんど知られていない。
腱炎における運動量を調査しようとしたこれまでのシステマティックレビューやメタアナリシスでは、少数の研究にとどまっています。

これら腱の炎症をコントロールするのにレジスタンストレーニング（≒筋トレ）が有効かどうかを調査した研究を紹介します。

結論からいうと、

外的負荷を加えたより強度の高いレジスタンス運動を含む介入は、体重のみの運動と比較して、より高い有効性を示しました。
1日1回以上の高頻度な介入と比較して、十分な回復が期待できる低頻度の介入でより高い効果が見られました。（毎日未満）

目的：一般的な腱鞘炎の管理における、強度、量、頻度を含むレジスタンス運動の用量構成要素の潜在的な調節効果を調査すること。

デザイン：メタアナリシスおよびメタ回帰を含むシステマティックレビュー。

データソース：以下を含むが、これらに限定されない　MEDLINE, CINAHL, SPORTDiscus, ClinicalTrials.gov および ISRCTN Registry。

研究選択基準：抵抗運動を主要な治療クラスとして調査したランダム化および非ランダム化対照試験で、運動量の2つ以上の要素について十分な情報を報告している。

結果：合計110の研究がメタ解析に含まれ（148の治療群（TA）、3953人）、5つの腱鞘炎部位（腱板：48TA、アキレス：43TA、肘外側：29TA、膝蓋骨：24TA、大腿骨：4TA）について報告した。メタ回帰では、外的抵抗を追加した高強度の治療法では、ボディマスだけの治療法と比較して、プールされた平均効果量が大きいという一貫したエビデンスが得られた（大きな効果量領域：βBodyMass： βBodyMass：External＝0.50（95％信頼区間（CrI）：0.15～0.84、p＝0.998）、小さな効果サイズの領域（βBodyMass：腱鞘炎の部位で組み合わせても、個別に分析しても、効果サイズが小さい領域（βBodyMass: External = 0.04 (95% CrI: -0.21 to 0.31; p=0.619)）がある。また、プールされた平均効果量は、中頻度（毎日）、高頻度（1日1回以上）と比較して、最も低い頻度（毎日未満）の方が、効果量の両領域において、組み合わせた場合、または個別に分析した場合に、より大きいことが確認された（p≧0.976）。トレーニング量とプールされた平均効果量との関連性に関するエビデンスは、最小限であり、一貫性がなかった。

まとめ/結論：抵抗運動の用量は、腱鞘炎の管理に関する文献ではあまり報告されていない。しかし、この大規模なメタ分析では、より強い刺激を作り出し、十分な回復を促す可能性のある、より高い強度(追加の負荷を含む)と低い頻度を処方する治療法の平均でより高い効果を示すいくつかの一貫したパターンが確認されました。

まとめ

レジスタンス運動を行う事で、腱の炎症をコントロールできる可能性があります。トレーニングの高強度化（外部負荷の追加による）とセッション間の十分な回復期間を設けて、レジスタンス運動を効果的に使えると良いですね。

参考文献

Effect of resistance exercise dose components for tendinopathy management: a systematic review with meta-analysis