2型糖尿病に効果的なのは筋トレか有酸素運動か
2型糖尿病の治療法として、レジスタンス運動(≒筋トレ)と有酸素運動の両方が推奨されています。しかし、時間の限られた人(特に現役世代)にとって、仕事や家事をしながら筋トレと有酸素運動を両方実施するというのは、現場を指導している身としてはなかなか難しい問題なのでは無いかと感じています。
有酸素運動は週5回、筋トレは週2〜3回というのが推奨事項とされていることが多いです。しかし、そもそもこれだけの量の運動ができる人は割と運動好きな部類に入るので、2型糖尿病になっていないと思われます。ほとんどの人は週末のうち1回か頑張って平日1〜2回を含めた、週2〜3回の運動の機会になることが多いでしょう。
また、臨床的な意思決定や個人に合わせた運動処方を促進するための2型糖尿病患者に対する最適な運動の種類は、あまり知られていません。
そこで、本記事で2型糖尿病の人は有酸素運動と筋トレ、どちらの運動を行うのが有効かをみていきたと思います。
目的:我々の目的は、2型糖尿病患者において、レジスタンス運動が有酸素運動と有効性と安全性の点で同等であるかどうかを調査することであった。
データソース:PubMed、EMBASE、CENTRAL、CINAHL、SPORTdiscusを2013年3月まで体系的に検索した。また、適格な研究の参考文献リストと関連するレビューも確認した。
研究の選択:レビューに含める研究を以下の基準で選択した。(i) ランダム化比較試験であること,(ii) 参加者は18歳以上の2型糖尿病患者であること,(iii) 少なくとも8週間にわたり,あらかじめ頻度,強度,期間を定めたレジスタンス運動と有酸素運動とを比較した試験,および (iv) 糖質制限,血中脂質,身体測定値,血圧,体力,健康状態,有害事象の少なくとも一つについて関連データを提供する試験,という基準である。
結果:12の試験(n = 626)が含まれた。運動介入後、レジスタンス運動よりも有酸素運動の方がHbA1Cの減少が大きかった(差0.18%(1.97mmol/mol)、95%信頼区間(CI)0.01、0.36)。この差は感度分析で有意でなくなった(p=0.14)。ベースラインからの変化の差は、肥満度(差0.22、95%CI 0.06, 0.39)、ピーク酸素消費量(差 -1.84 mL/kg/min、95%CI -3.07, -0.62)、最大心拍数(差 3.44 beats/min、95%CI 2.49, 4.39)においても統計的に有意であった。有害事象(すべて)および重篤な有害事象の相対リスクは、それぞれ1.17(95%CI 0.77, 1.79)および0.89(95%CI 0.18, 4.39)であった。
制限事項:ほとんどの臨床試験は短期間(8週間から6カ月)であり、7試験は方法論的に重要な限界があった。また、一部の副次的結果に関するメタアナリシスでは、参加者数が少ないか、統計的異質性が大きくなっていた。
結論:レジスタンス運動群と有酸素運動群の間で、いくつかの糖尿病コントロールと体力測定に統計的有意差が認められたが、それらが臨床的に重要であるというエビデンスはない。また、レジスタンス運動は有酸素運動と異なり、心血管リスクマーカーへの影響や安全性についてもエビデンスはない。2型糖尿病に対して、どちらか一方のタイプの運動を行うことは、何らかの身体活動を行うことよりも重要でない可能性がある。今後、患者に関連するアウトカムに焦点を当てた長期的な研究が必要である。
2014年に行われた研究では、筋トレと有酸素運動には明確な差は無かったとし、どちらも2型糖尿病を改善するので好きな方に取り組めば良いのではないかという結果でした。
もう一つ紹介します。次は2017年の研究です。
目的:2型糖尿病患者において、インスリン療法を行わない有酸素運動と比較し、レジスタンス運動の代謝および臨床転帰に対する効果を評価すること。
方法:MEDLINE/PubMed、CINAHL、SPORTDiscus、LILACS、SCIELOの各データベースで、言語や出版年の制限なしに論文を検索した。インスリン療法を行っていない成人の2型糖尿病患者を対象に、レジスタンス運動と有酸素運動を比較した臨床試験を対象とした。エビデンスの質はGRADEシステムで,バイアスのリスクはCochrane Risk of Biasツールでそれぞれ評価した。また、可能な限りメタ分析も用いた。2名の査読者が独立してデータを抽出した。8つの適格論文が本研究に含まれ、合計336人が参加し、平均年齢は48~58歳であった。有酸素運動とレジスタンス運動のプロトコルは、8週間から22週間、30~60分/日、3~5回/週と様々であった。
結果:全体として、利用可能なエビデンスの質は非常に低く、レジスタンス運動では最大酸素消費量の増加(平均差:-2.86、95%CI:-3.90~-1.81、ランダム効果)が認められ、HbA1C、BMI、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、総コレステロールには差が見られなかった。
結論:12週間以上のプロトコルで最大酸素消費量の増加を促すにはレジスタンス運動がより効果的であり、血糖値および脂質レベルのコントロールには2種類の運動間で差がないようである。
こちらの研究でも筋トレと有酸素運動で血糖値や血中脂質に対する効果は差がなかったとしています。
まとめ
これらのことから、有酸素運動と筋トレは「どちらでも良い」ということになっています。そもそも身体活動を行うことが2型糖尿病にとって効果的ということです。
私見ですが、どちらかというと【筋トレ】を推奨します。
- 筋トレは有酸素運動よりも傷害発生率が低い(怪我しにくい)
- 筋力の向上、筋肉量の増加が見込める
- 骨密度の向上も見込める
- 実施が天候に左右されない
以上の事が有酸素運動よりも優れているからです。
特に、怪我をしにくい点と、天候に左右されない点が優秀です。夏や冬・梅雨・花粉の時期など、外的要因が運動を億劫にさせると、継続性に影響を及ぼします。運動は定期的に長く継続するから意味があるので、まずはそれを達成できるように環境を整えた方が良いです。そう考えると室内で実施できる筋トレが取り組みやすいかと考えられます。
室内でバイクやトレッドミルをやるのも良いですが、景色も変わらないので退屈になるんですよね。今の時期くらい気候が良ければ外を走る、外に出るのが辛い季節や雨の日などは室内で筋トレをするといった感じで使い分けるのが良いかもしれませんね。
とはいえ、2型糖尿病の人は、まずは好きな運動を週2回から、長く続けてみるようにしてください。
参考文献
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パーソナルトレーナー 井上大輔
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